第267話・『ロリ魔物お母さんに学べ』
黒焦げになったり折れたりしている魔剣の山を見て溜息を吐き出す、妖精の力の残滓、確かに睡眠時には一部を具現化させても良いとグロリアは言っていた。
だけど俺が起床するまでの間に魔剣を狩れとは命令してねぇぜ?少しでも俺への危険を減らす為にお母さんが勝手にやった事だ、しかし相変わらずとんでもない力だな。
邪悪な妖精を使役して操る能力、それによってこれだけの魔剣の魔物を滅ぼした、その能力に恐怖しつつお母さんを見る、どうしようもねぇぜ、グロリアの条件を破ってはいない。
護衛用に出した一部が勝手に魔物を倒しまくっただけ、大丈夫大丈夫、自分を落ち着かせるように深呼吸する、グロリアに説教されるのは嫌いでは無い、だけど怒られるのは苦手だ。
「かなりの数を倒したな、でも今日の夜は駄目だぜ?」
「ふんすふんす」
「戦いで興奮したのはわかるけど鼻息が荒い、興奮し過ぎだぜ、ありがとな、かなり楽になるぜ」
「ふんすふんすふんす」
「さ、殺意が溢れているから落ち着いて欲しいぜ」
移動する支度をしながら苦笑する、山になった魔剣は生命を失っているが魔力はそこにある、適当に選んだソレを振るって見ると桜の花びらが舞い散る、これに何の効果があるのかはわからないが確かに魔剣だ。
ファルシオンが能力を全て奪ったのとは違う、やはり普通に倒せば魔剣の効果は失われないのだ、だとしたら魔剣の能力を消し去るのがファルシオンの魔剣としての能力?何だか納得出来無い、違和感しか無いな。
この魔剣の山は全てが終わったら一部を大量に具現化させて持たされるとしよう、しかし凄いなお母さん、俺があれだけ手こずった魔物を僅かな時間でこれだけ倒すなんて、尊敬する、そして少しだけ嫉妬する。
俺だってお母さんの息子だからこれぐらい出来るもん、口には出さずにモゴモゴと唇を動かす、お母さんは凄いなぁと素直に口にすれば良いだけなのにどうしてかそれが出来無い、自分の器の小ささに呆れてしまう。
「ふんすふんすふんす」
「お、お母さんは――――――――」
「?!」
「ね、寝相が良い」
「!?」
「お、お母さんは――――――――」
「?!?」
「ね、寝顔が可愛い」
「!?!?!」
「さあ、行こうかっ!お母さんは俺の中に戻って」
「ちょっと待つデス、愛しい赤ちゃん」
「ちょっと待たないのが貴方の愛しい赤ちゃんだから」
「ふんすっ!」
「イテェ!?」
胸を下から突き上げるように揉まれて痛みで悶える、身長差っ、お母さんの卯の花色の髪の上には同じ色合いのウサギの耳が生えている、それが俺の顎を擦るようにピクピクと震える。
叱られているわけでは無い、怒られているわけでも無い、純粋に心配されている事がわかるからこそ何も言えない、ど、どうやってこんなに魔物を倒したの?こ、コツを知りたい癖にっ。
人間で言えば10歳未満の幼い容姿、しかしそこには母性があって事実としてこの人の中で育った過去がある、だから何も言えない、からかうようにウサギの耳が揺れて挑発するかのように俺の鼻をくすぐる。
涙目になってお母さんを見詰める、銀朱(ぎんしゅ)の瞳は全てを見透かすように穏やかだ、しかし耳は俺を挑発している。
「う、あ」
「聞いといた方が良い事があるんじゃ無いデスか?」
肌の色はそれこそウサギの毛並みのように純白なお母さん、ニマニマしている口元が草を食べるウサギのようでもある。
なのにライオンを連想するのは何故だろうか?
「ま、魔剣の魔物の倒し方を教えてくだせぇ」
「な、涙目なのはどうしてデス?」
お母さんがライオンだからだよ。
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