第265話・『ロリ魔物お母さんと寝る』
天幕の中で転がりながら欠伸を噛み殺す、立て掛けたファルシオンは何も反応しない、しかし俺の方を見ているような奇妙な視線を感じる。
ファルシオン?俺の事が気になるのか?……俺だって色んな生物を吸収して大きくなった、ファルシオンだって色んな異端の血を吸収して成長した。
しかも二人ともグロリアに買われた身、全てが同じで全てが一緒でもう一人の俺のような存在、ファルシオン、大丈夫かな?心配になる、血と油で塗れた刀身が怪しく光る。
まるで俺を魅了しているようだ、触れたくなる、だけど今夜はもう寝ないとなァ、しかし夜中に襲って来ない魔物って何だか違和感があるなあ、ついつい笑ってしまうぜ、体に触れる温かいモノを抱き締める。
「悩み所だな」
「そうデスね、夜は冷えますからもっと肌を重ねたいと駄目デス」
「おっ、こんな所に可愛い魔物がいるじゃん、ちゃんと襲来してたんじゃねーか、襲っちゃうぞ」
「望む所デス、ふんすふんす」
「鼻息が荒い、冗談だぜ……こうやって抱き締めて眠ってるだけで満足だ」
「お乳デス」
「い、いらんわ」
レクルタン、お母さんを抱き締めながら苦笑する、取り敢えず夜の護衛はお母さんに決めた、能力も強力だし俺を必ず護ってくれる、全てを包み込むような強い母性を感じてついつい甘えてしまう。
この人の子宮で俺は育ったのだ、どうして今はこの人の子宮の中にいないんだろうか?何だか不思議だ、そこに戻りたいと強請るように肌を重ねる、子供の体温、お母さんは温かい、まるで懐炉のようだ。
微睡みを楽しんでウトウトする、魔剣の魔物も彼女の気配に圧倒されているのか微動だにしない、周囲の気配を探る、しかしそんな俺の緊張をほぐすように優しく背中を叩かれる、何処までも母として俺に振る舞う。
しかし何処かで物音がすると体を大きく震わせる俺、カシャカシャ、魔剣の魔物の足音のように感じてしまう、グロリアと一緒にいる夜はどのような死地でも怖く無いのに、俺は何時からこんな臆病者になった?
「レクルタンの可愛い赤ちゃん、何を怯えているのデス」
「いや、魔剣の魔物……結構強かったなって」
「そうデスか、しかしアレは魔物としておかしいデス、魔剣はある意味では既に魔物と化した存在、そこからさらに変化となると」
「なると?」
「魔剣をさらに魔物に変化させる魔物なんて聞いた事が無いデス、でも確かなのでしょう?」
「お、おう、この古都には元々魔剣が沢山あったんだ、見付かった当初はそのままだったのに暫くしたらこの様だ」
「そうデスか、魔剣を魔物に変える目的があるのかそのような生態の魔物なのか興味深いデス」
「生態?」
「レクルタンの可愛い赤ちゃんがエルフライダーとしてエルフを捕食したり他者を惑わせたりするようにデス、それは本人ではどうしようも出来無い生態なのデス、生理的なモノなのデス」
「そう、かな」
「寝るな、食べるな、エッチするなと言われても人間はするようにそれは許されるべき行為デス、だから落ち込まないで」
「う、ん」
「赤ちゃんが他者を貶めて一部にして捕食するのは―――人間の三大欲求と同じで誰も否定出来無いのデス」
「うれし、おれを、こうていしてくれて」
「当たり前デス、貴方のお母さんデスから」
僅かな黄色が溶け込んだ白色の髪、卯の花色のソレは清廉で清潔で清純だ、人々に愛される色、手を伸ばして触れるときめ細かい感触に心が弾む、何度撫でても飽きる事は無い、俺もこんな髪が欲しかった。
空木(うつぎ)の木に小さく咲く初夏を告げる可愛らしい花の名を冠した色、卯の花は雪見草とも呼ばれているのだ、小さな花が健気に咲き誇る様が雪のように美しいからだ、しかし空木とはまた笑える、枝の内部が空洞である事からその名を与えられた。
「こらこら、あまりお母さんの髪で遊ぶんじゃないデス」
「いや?」
「そうでは無くて、疲れているのでしょう?早く寝るのデス、大丈夫、赤ちゃんが眠るまで、赤ちゃんが起きるまでレクルタンが護ってあげるのデス」
「……やさしい」
「はいはい、さっさと寝るのデス」
「………う、ん、おやすみ」
瞼を閉じる、だけど怖く無い、不思議。
温もりがあるだけで何も怖くない。
不思議。
「沢山寝て大きくおなり」
既にお母さんより大きいよ?
胸もね。
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