第262話・『キョウはキングギ○ラなので』

周囲を見回しながら欠伸をする、ここまで来たらもう気楽に行こう、嘘だ、凄く緊張している。


妖精の感知を使えないのでかなり怖い、もしかして周りにもう魔物がいるんじゃないかとビクビクする。


周囲は堀と城壁に囲まれていて広大なのに圧迫感を感じる、古都の中心には楼閣があって周りを見下ろす事が出来るようだ。


魔剣を魔物に変える魔剣の魔物が今回の駆除対象だ、や、ややこしいぜ、この古都では魔剣の研究でもやっていたのだろうか?どのような文明があったのかわからない。


橋を渡り切る、水の中から魔物が現れないかビクビクしていたが問題ねーぜ、ビクビクするしワクワクもする、一人っきりの冒険は好きだ、自分の力が試されているようで心が弾む。


橋には奇妙な化け物の欄干で縁取られている、目を瞬かせる、大きな剣に蜘蛛の足のようなモノが生えていて中々にキモイ、キモイので視界から消す、さて、古都に入るとするか。


「大きい、大きい!」


『田舎者丸出しだよキョウ』


『キョウ、警戒を怠らないようにしなさいね』


『キョウさん、少しでも動くモノがいれば先制攻撃です』


キョウ、キクタ、キョロ、三人が同時に話すので頭が痛くなる、一部の能力は使っていない、俺自身である二人で一人のキョウとキョロ、そして一部だが能力を使っていないキクタ。


怒られはしないだろうけど過保護過ぎるっ、一人っきりの冒険が一気に別のモノへと変わる、でももしかしたら一部では無く俺自身であるキョウとキョロを使ってここを攻略すれば良いのか?


グロリアの考えている事はわからない、俺自身である二人は仲が悪い、急に不安になる、き、キクタぁ。


「け、喧嘩はしないでみんなで頑張ろうぜ」


『そうだね、キョウと私と役立たずのキクタで頑張ろう』


『そうですね、私とキョウさんがいれば全ては上手く行きますよ』


『あ、アタシは………やっぱり少し寝ようかな』


「キクタが一番頼りになるなぁ!」


『『へえ』』


『ひっ』


よし、これでキクタは逃げられ無いゾ、やったぜ、古都の中は生い茂った植物に支配されている、建物は全て身を隠されるように蔦に包まれている、自然が人工物を支配する様子は倒錯的で素晴らしい。


中央に聳え立つ楼閣が怪しいぜ、しかしエルフを補充した事で体が軽い、ぴょんぴょん地面を跳ねる、身体能力は様々な一部の力で強化されているが既に俺の細胞に刻まれたものだ、仕方が無い、許せグロリア。


「き、キクタ頼むぜぇえ」


『それは何を頼むって事かしらキョウ………一緒にこの古都を攻略するって意味なら協力するけど』


『キョウは私よりキクタを頼りにしているようだから頑張ってねェ、んふふふ、流石は一部の筆頭だねェ』


『それは凄いですね、私も是非とも見習ってキョウさんの肉体を奪えるぐらいにまでなりたいです』


『………キョウ、アタシ、今楽しく無いわ』


「おう、奇遇だな、俺もだぜ」


キョウとキョロの瘴気が溢れ出ていて気分が悪くなる、キクタが泣きそうになっているがわかる、うう、他の一部なら邪険に出来るのだろうがキョウもキョロも俺だからな。


邪険に出来るはずも無い、しかしこの二人を一人っきりで制御しろと言われても無理な話だ、俺は溜息を吐きながら植物に支配された古都を歩く、脳内でぎゃぎゃー聞こえるが無視。


「な、なんかごめん」


『…………』


ここまで黙るキクタも珍しい、あれだろ、三人のキョウの中では一番俺がまともだろ?


『それもどうかな』


え。

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