第261話・『魔剣の古都で君とお食事の約束』
エルフを大量補給したので精神も落ち着いていて体が軽い、グロリアに何か良いクエストは無いのかと強請ったら予想外の場所に案内された。
砂岩とラテライトで築かれた古都の景観に圧倒される、ここに入るまでに幾つもの書類に何度もサインをした……グロリアは一人で頑張って来て下さいと割と酷かった。
そう、一部の能力は一つだけしか使っていはいけない条件、最初に選んだ一部の能力でこの古都の中心に住まう魔物を打倒しなければいけない、与えられた条件が厳しいのかそうで無いのか判断出来ない。
つい最近になって発見された謎の古都、魔剣がさらに変化した魔物が多く住まう不思議な古都、多くの冒険者がここで惨殺されたらしい、まあ、魔物を倒せば魔剣に戻るわけだからそりゃ足を運ぶよなぁ。
回廊は精密で精緻な薄浮き彫りで埋め尽くされていて何だか薄気味悪い、何時の時代もモノなのかわからないらしい、魔物が異様に凶暴で凶悪な点と入り組んだ構造から冒険者ギルドも既にお手上げ状態だとか。
しかしここに入るまでの警備や設備は中々のもので感心した、サインをすると若いお兄さんに『危なくなったらコレを使いな』と空間転移の効果を付加された宝石を渡されて驚いた、高価な代物だろうに、素直に感謝を述べる。
魔剣の魔物?とやらを外に出さない為に周辺の国々と冒険者ギルドが協力した事でこのような大規模な施設になったらしい、しかしその周辺の施設をさらに圧倒する大規模な古都、グロリアの出した条件を何度も思い浮かべる。
一つ一つの能力をちゃんと極めさせる為にこの条件を与えたのか?違うな、一番凡庸性が高い能力を理解しろって事だろう、それを見極めるまでは能力無しで頑張るしか無い、どうしようも無い時は麒麟を選べば万事解決だろう。
色々と俺を鍛えるような事を言っていたがグロリアは報酬に弱い、報酬さえ渡せばきっと黙る、ふふふふん、グロリアの試練は攻略したいのだが命あっての事だ、死に掛けたらすぐに俺は麒麟を選ぶぜっ!
「シスターでもこの古都は危険だと思うよ」
「死☆スターになるやもしれんと?」
警備のお兄ちゃんが心配そうに俺を見詰めるので冗談で返したら不思議そうな顔で見詰められた、何か恥ずかしい、手を振りながら古都の中へと足を進める、確認されている入口はあそこだけか、帰り道は気を付けないとな。
濠で囲まれた外周には奇妙な魔法が組み込まれていてこちらの魔法を打ち消す仕組みのようだ、これを破壊して外に出ても何処に出るのかわからないしさっきの道具が役に立つな、使徒の空間転移もあるが一度使えばそれだけでクエスト失敗だ。
グロリアの条件きついぜ、今頃は近くの街で久しぶりのバカンスを楽しんでいる頃だ、バカンスは貴族やブルジョワのモノだろうにっ、いや、グロリアは大金持ちだし条件に当て嵌まるか?浮気してなきゃ良いけど、ぷんぷん、割とマジで。
砂岩のブロックが丁寧に敷かれた土手道を利用して環濠を渡って進む、砂岩がびっしりと敷かれた陸橋から顔を出す、川が流れている、流れが激しく水しぶきが目に入る、人避けの結界と姿隠しの結界を併用した特殊な結界で今まで見付から無かったらしい。
だとしたら川の流れも不自然に消えて見えていたのだろうか?魔法って胡散臭いよな、俺は魔法はあまり得意では無い、一部の才能と技術で幾らか扱えるが魔物のように属性を付与した魔力を直接放つ方が自分に向いていると思っている。
「お嬢ちゃーーーーーん、魔剣の魔物を倒したらちゃんと回収するんだよーーーー!高く売れるからねーーーーー!」
「わかったーーーーー」
「お嬢ちゃーーーーーん、彼氏いるのーーーーーー?」
「え、なーーーーーーーーーーに??」
「彼氏いるのーーーーーーーーーーーーーーー??」
警備のお兄ちゃん、さわやかに見送ってくれたかと思ったら意外としつこい、元々は世界中の遺跡を渡り歩いた冒険者らしく今は故郷で警備の仕事をして生活しているらしい、昔取った何とやらだな。
彼氏ー???彼氏はいないな、彼女はいるけど、グロリアは彼氏っぽいけど彼女だしな、あの肉食系な感じは男っぽいけど時折乙女になるし、しかしどうして今から地獄のような場所に旅立つ冒険者に彼氏の有無を?
ざざざっ、瞼の裏で何だか火花が散るが無視をする、そう、そうだ、俺は男だぜ?同性愛者では無い。
「いないよーーーーーーーーーーーーーー!」
「ひゅうううううううううううううう!!生きて帰ったらご飯奢ってあげるーーーーーーーーー!」
「ただめしっ」
やった、しかし見ず知らずの若者にタダ飯とはあのお兄ちゃんは太っ腹だな、橋の中程に立って伸びをする、石段の船津が備えられているのが見える……しかし何を奢って貰おうか?グロリアのいる街も近いので二人一緒にどうだろう?
振り向くとまだ必死に手を振っている、しかしグロリアの説明が面倒だな、暫く腕を組んで考える、ああ、同じ容姿なのだから双子の姉って事にしとこうか。
「双子の姉ちゃんも一緒にご馳走になっても良いかぁあああああああああああああ?!」
「生きてて良かったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「え、い、生きてて」
「良かったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「お、おう、両親に感謝しないとな」
いきなり生きる事への感謝を口にした警備のお兄ちゃんに首を傾げる。
「両手に華だぁああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「お、おう………行ってきます」
「死なないでねえええええええええええええええええええええええ」
励ましてくれているのに全然嬉しく無いのは何故だろう?
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