第251話・『えるふらいだーだんごむしねこ』
子守唄はお姉さまを殺せ、そのような歌詞だった。
まるで赤子の頃に戻ったようにそれを聞きながら幸せな夢を見る、お姉さまの臓物はどのような色かな?あんなに大好きだったお姉さまの中身が知りたい。
エルフライダー様に教育される、何度も何度も耳元で俺の為に愛を見せてよと囁かれる、一番大切だったお姉さまを殺す事で愛の証明が出来る、それだけで愛の証明が出来るのだ。
なんて便利なお姉さま、もしかしてこの時の為だけに出会いがあったのだろうか?お姉さまとの出会いを思い出す、初恋、そしてその初恋が初恋では無いと自覚した今、シーツの波が器用に広がる。
エルフライダー様は薄く微笑みながら眠っている、幸せな夢を見ているのか『ぶかこ、あく』と囁いている、嫉妬はしない、その言葉が何を意味するのか知らない、しかしこのお方が幸せであるのなら何でも良い。
抱き枕にされながら幸せだなと再確認する、今までの生活は何と下らないものだったのだろう、そんな下らない生活を強いる集落もこのお方がちゃんと滅ぼしてくれた、自分から大事なモノを全て根こそぎ奪ってくれた。
ここ数日で何度も味わった柔らかい体。親しみのある体温………それを感じながら思う、この人をお姉さまは一人で独占していた、集落の近くにある山小屋に監禁して世話をしていた、それに対しては殺意しか覚えない。
「きょう、きくたぁ、きょろ……れい、おかあさま」
その言葉にどのような意味があるのかやはりわからない、しかし幸せそうに眠るエルフライダー様を見ているとこちらまで幸せな気持ちになる、あああああ、こんなにも自由で美しいお方を監禁するだ何てあまりにも酷過ぎる。
お姉さま、大好きだったお姉さま、愛していたお姉さま、だけど今はどのようにして殺すのかそれだけしか考えられない、お姉さまを殺す事で愛の証明が出来る、初恋の証明が出来る、貴方がお姉さまで良かった……殺す事で初めて良かったと思える。
自分の耳が震えるのがわかる、このお方の声を拾う為だ、どのような些細な声でも拾って見せる、この耳はその為にあるのだから………そして噛まれて丸くなる為にある、二つの用途、エルフライダー様にエルフは便利だなぁと感じて頂けたら幸いだ。
寝顔は童女のように無垢で穢れ一つない……今日初めて気付いたのだがエルフライダー様は眠る時に体を縮めて猫のように眠る、丸まるとでも言えば良いのか?まるで外敵から身を護るような体勢に疑問を覚える、ああ、このお方を護ってあげないと。
一部としての自覚、お姉さまはこのお方を手に入れようとしている、愚かな、エルフライダー様から頂いた力で何を勘違いしているのだろうか?このお方はこのお方のモノだ、故にこのお方を奪おうとするゴミは一部が対処する、それが自分だ。
「んにゃ」
「……寝言も猫みたいだ」
「んー、にぁ」
「やっぱりそうだ」
自由奔放な姿は確かに猫のようだが周囲の状況を無視して無邪気に振る舞う姿は子猫のソレだ、このお方が生きるにはこの世界はあまりに汚れている、穢れている、濁っている、そんなものをこのお方の愛らしい瞳で見て貰いたくない。
だからそれを排除しないと、ミルクのような甘い匂い、体臭、エルフライダー様は良い匂いがする、エルフを惑わしエルフを狂わせエルフに忠誠を誓わせる、そしてエルフは餌だと思い出させる、エルフはそこで初めて気付く、純然たる事実に。
餌でしか無いエルフがエルフライダー様を手に入れる?お姉さまは脳味噌まで筋肉になってしまったのだろうか?既に一部になった自分にはその考えがあまりにバカらしく、あまりに愚かな事だとわかる。でもお姉さまは気付いていないんだね、きっと。
愚かで哀れでおバカなお姉さま、エルフライダーさまに触れようとしたら殺す、話し掛けようとしたら殺す、同じ空間にいたら殺す、ころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころす。
呪怨、体を震わせながら思う、お姉さま、貴方は許されない、エルフライダー様を欲するエルフだなんて、エルフライダー様が欲するのがエルフなのだ、エルフはそれまで我慢して下らない人生を謳歌するだけで良い、そしていつか食われる、それが王道だ。
エルフの王道、エルフの正義、食べられるのが正義、そのような事も忘れて何て愚かしい、エルフライダー様がくしゃみをしたので自分の体を使って温める、そう、使うのだ、この体は道具だから使うのが正解、あああああ、なんて柔らかい、なんて良い匂い。
「ころせ」
猫の寝言は一瞬で切り替わり冷酷な一言が零れた、人を嘲るような声、エルフを侮蔑する為の声、このお方に侮蔑される為だけにエルフの耳はあるのだから当然のモノとして受け入れる。
「あねをころせ」
天使のような笑みで重ねるように言葉を吐き出す。
「ころしてくれないの?」
「殺しますよ、貴方の為に」
ごめんなさいお姉さま、貴方よりこのお方を愛しているの、愛してしまったの、愛するように変えられたの。
だから、死んで。
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