第250話・『抱き枕妹は森の中で眠るお姉ちゃんをころーす』

明日殺し合いをさせるかな♪姉妹の殺し合いってどんなのか楽しみだ♪エルフライダー様の声を聞きながらエルフライダー様の体内から排出される、お体の中にいる時の感覚は素晴らしい。


全ての一部と意識を共有しているような状態、だけど慧十十だけ少し違うと皆が言う、一部の先輩、多くの異端、彼女たちは『お前は精神を崩されていない、汚染されていない』と言う。


エルフライダー様は能力を使わずに慧十十を夢中にさせると言った、そのせいか?しかし精神の共有は正常だし自分がエルフライダー様の一部だと自覚出来る、問題は無い、特別な慧十十。


エルフライダー様の特別である事に誇りを感じる、美しい彼女の一部であることが慧十十の全てだ、故に明日、姉を殺す、どうして殺すのか移植した尾はどうするのか、それも聞かない、理由は簡単。


「ここが今泊まっている宿だ、グロリアはまた仕事か」


「あ、はい」


「俺の体液で汚いからこれで体を拭きな」


「だ、大丈夫、エルフライダー様に汚い所なんて無いよ」


「いや、乾燥してパリパリしたら面倒だから拭いてくれ、ふあ、どうして外に出したのかわかるか?」


「わ、わかりません」


エルフライダー様、エルフライダー様、エルフライダー様、目の前の主に忠誠を誓う、何度でも何度でも忠誠を誓う、そして恋をする、慧十十にはもう何も残っていない、お姉さまは殺す、長老は同じ一部になった、集落の皆は死んだ。


そしてそれを全て成したのはエルフライダー様だ、慧十十の大切なモノを根こそぎ奪ってくれた、そして慧十十の一番大切な人になった、故郷は無くなった、しかし帰るべき場所が与えられた、この人の中だ、この人の中が慧十十のお家。


あのような下らない集落では無い、全てが黄金に満ちた素晴らしい世界がこのお方の中にある、エルフが本来いるべき場所は森では無い、このお方の中にこそ本来の居場所がある、まあ、それは選ばれたエルフのみだけどね。


慧十十は選ばれた、有象無象のゴミエルフとは違う。


「んふふ、お前が可愛いから出したんだよ、抱き枕を選んでいたんだけど、慧十十、お前が良い」


「こ、光栄です」


「ササや炎水を抱いて困らせても良かったんだが、お前の方が面白そう、それにあいつ等は小さいからさ、お前の方が抱き心地が――どうした?」


ベッドの上で指を立てて説明してくれるエルフライダー様、しかしそのお姿に夢中になってしまう、全てが小さく、全てが繊細で、全てが白い………エルフの美貌が何だ、このお方の美しさに比べたらゴミクズ同然だ。


金糸と銀糸に塗れた美しい髪、窓の外から差し込む月の光を鮮やかに反射する二重色……黄金と白銀が夜空の星のように煌めいている、豪華絢爛な着飾る必要も無い程に整った容姿、神の造形、全てが完璧で全てに遊びが無い。


瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、様々な色合いが混じり合っているのに違和感が無い、完璧だ。


胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白でエルフライダー様の白い肌に似合っている、白と白、このお方に穢れは無い。


「き、綺麗」


「そぉ?そ、そんなジロジロ見ないでよ、恥ずかしいから」


「は、はい、目が焼けちゃいますものね」


「目が焼ける?俺の体からは何か危ないモノでも出てるのか?」


「美しさが出ていますっ!凄い………失明しちゃうかも」


「俺は何なんだよ、おいで」


エルフライダー様はまるで玩具のように慧十十を優しく抱いてくれる、お姉さまは今は一人っきりであの森の中で眠っている、そんなお姉さまが心の底から望んでいるエルフライダー様に抱かれて慧十十は眠っている。


ゆ、優越感?


「お前が俺を裏切ってお姉さまを助けないように、最後の最後にこうやってサービスしてやってるんだよ」


「そ、そのような事……本来ならば不要です、慧十十はちゃんと出来ます」


「俺は姉妹が殺し合って、お前が勝つのが見たいんだよ、んふふ、お前は俺に純粋に恋をしたから、大事だから」


抱き締める力が強くなる。


「ちゃんと殺してね?あいつには俺の尾があるよ、それでも出来る?」


「大丈夫です」


「どうして言い切れる?」


「あの人の恋はまやかしで、慧十十の恋は真実ですから―――可哀想なお姉さま」


「可哀想なのはお前だよ、こんな化け物に恋して」


くすくすくす、笑う、エルフライダーさま。


貴方に恋をして幸せですよ?だって―――――お姉さまを殺せるのだから。

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