第244話・『捕食ライダー、餌は餌であるからして餌』

くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う、くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う。


くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う、くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う。


くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う、くうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくうくう、食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う食う喰う。


くうん、最後に子犬の鳴き声がする、白い肌が月の光に照らされて青白く輝く、もぞもぞと体を捩らせて困り顔だ、美しい、お腹の音はお前を食べると余に告げている、くうと鳴る、食うと変わり喰うになる、困り顔はやがて泣き顔になり、甘えるように鳴く。


獣の叫び、幼獣の叫び、抱き上げる、か、軽い、軽過ぎる、餌が足りていない、エルフライダーさまの体力が今も失われている、くうううううううう、月と炎の光の世界でお腹が鳴る音だけが静かに響く、空腹を訴えている、餌である余を前にして空腹を!


「おにゃかすいたの」


舌足らずの声、こちらの姿が確認出来無いのか動きが何処かぎこちない、瞳からは光が失われている、なのに甘えるべき存在を見付けたようにニコニコと天使のような笑みを浮かべている、いや、これは天使などでは無い、天使などこのお方には及ばない。


愛しさと動揺で意識が混乱する、エルフライダーさまの捕食用の器官である透明な触手が力無く地面に横たわっている、雨の日の次の日に地面で干乾びているミミズのような姿、これを視認する為にキクタさまから未来を見る夢見の力を頂いた、子孫には上手に遺伝されなかった。


あの子を除いて!夢見の力はそれの付属品でしか無い、だらりと地面に垂れ下がった腕を見て体が震える、エルフを捕食していない?い、今の、このお方の飼い主は誰だ?エルフライダーさまには必ず保護者が同行するはず、なのにエルフを与えていないのか?


何て、何て飼い主、責任も果たせないのかっ。


「んんー、おなかぁ、しゅいたぁ」


食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる。


食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる。


食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる、食るるるるるるるるる、狂るるるるるるるるるる。


生物としてのエルフライダーの特性としてその空腹を告げる音はエルフの脳に強く干渉して餌である事実を思い出させる、エルフの耳はエルフライダーの空腹を告げる音を必ず拾う為に発達している、故にそれが人工で生み出された個体とはいえ強く干渉する、よ、余にっ。


母性が芽生え愛情が芽生え忠誠心が芽生えて全ての蕾がやがて花開く、何も映さない瞳が余に告げている、よこせ、故に『ご賞味あれ』と自然に呟いていた、しかし触手は少しだけ震えるだけ、捕食器官も扱えない程に弱っている、お可哀想に。


「余が………お世話をさせて頂きますね」


「?………きくただ」


「はい、そのお方に製造されました、計画は潰え、同胞は死に、余も―――しかし最後の最後で貴方様にお会い出来た」


「たべさせて、ね?」


「はぁい、存分に………この身を貪り尽して下さい」


触手を掴む、ご眷属様の攻撃で全身に素敵な傷口がある、そうか、全てはこの為の穴だったのか。


傷口に触手を刺し込みながら余は笑う、産まれて来た意味を完遂出来たから、空腹のこのお方に出会えたから。


お腹の音が止むまで余は子守唄を歌い続けた、エルフライダーさまは眠りながら余を捕食する、元気が一番です。


どうか健やかに。

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