第241話・『転ぶライダー、助けてライダー』

待ち合わせ場所を伝えると彼女は集落を後にしたらしい。


集落を愛しのお姉さまが全壊させる様を見詰めながら顔を蒼褪めさせながらも自分の意思で後にした。


約束は明日だ、それまでこの深い森の中で息を殺して身を潜めているのだろう、自分の意思で故郷を後にしたか、俺と同じぃ。


んふふふ、二人の関係は拗れている、そうだよぉ、お前は外の世界に憧れたわけでは無く俺の箱庭に憧れたんだ、お姉さまはもう戻らないよぉ。


俺の遺伝子がお姉さまを素敵生命体に進化させたから何時までも素敵で無敵、悲鳴も聞こえるな、そう、お前がエルフを捕食してお前が俺に食われたら良いんだよぉお。


これってとっても頭の良い事、おれ、あたまいいもんな、いいもーん、バカにする奴はころす、ころーす、ねえちゃんをすこしいじめてからからだのなかにもどしたよ!ほうこく!


じじっ、じじじじじっ、視界が乱れる、あふん、あー、おんにゃのこだきたい、やわらかいはだにつつまれたい、じじっ、んふ、おとこのこにだかれたい、たくましいうでにつよくだかれてにおいをかぎたい。


おれ、俺は月夜の森の中を歩きながらソレを探す、キクタが過去に俺を取り戻そうとしたついでに生み出した実験用エルフ……不老不死だからどれだけ食べても大丈夫!俺専用の食い放題スペース!そいつが集落を構築して長になってるとはな。


キクタの話では成功例は二人しかいないらしい、そりゃ良かった、味の違いがある二つの食い放題、とてもとてもとても素晴らしいのです、満足です、月の光に導かれて歩く、帰って来たグロリアにけーかくを教えると良く考えましたと頭を撫でられた。


えへへへ、どぉだ、おれってぐろりあとおなじだもん、かおもからだもいでんしもおなじ、だからだいすきなぐろりあとおなじようにあたまいいんだぞ!そうやって浮かれていると木の根に足を引っかけて転んでしまう、ごん、頭に岩がぶつかる、いたひ。


「うぅうう」


もう少しで餌の所にいけるのにもう少しで餌の所にいけるのにもう少しで美味しいエルフが美味しいのに美味しいから美味しいのにどうして意地悪をしゅるの、リーンリーン、森の虫の鳴き声を聞きながら暫くウトウトする、静かな世界は好きだ。


遠くの方で絶叫音、あいつのお姉ちゃん、森に逃げたエルフも狩っているなああ、ふふ、俺を監禁したバカは今ではエルフハンターだ、俺の為に沢山食べて沢山太れ、ウトウト、エルフの絶叫は大好物、声を張り上げて俺に忠誠を仕え、んふふ、どぉしよう、ねむい。


行かないと駄目なのに眠い、それはきっとお腹がきゅーきゅー言っているせいだ、土を舐める、食べれる?じゃりじゃり、美味しく無い、ぺっぺっ、このまま寝ちゃおうか、ねちゃう、けーかくなんでどうでもいいもん、おなかすいてるけどねむいもん。


「じゃりじゃり、まじゅい、まじゅい、ぺっぺっ」


くるるるるるるるる、エルフの声がするせいでお腹が減るんだもん、最初はそうじゃなかったもん、鳴くな鳴くな鳴くな、鳴くと体が反応して勝手に食べちゃうぞってなるからぁ、もぉ、もぉ、地面を叩いて両足をばたばたさせる。


『キョウさん、女の子なんですから………品性を失っては駄目ですよ』……大好きなグロリアの言葉が脳裏を過ぎる、あ!パンツ見えちゃうかも、炎水が興奮しちゃう、手足のばたばたを止める、か、かしこい、おれ、しゅごい、ぐろりあのことばおもいだせた。


しゅごい、おそろしくなる、おれってあたまいい、しゅごい、だれかにほめてほしくてしゅういをゆっくりみまわす、ほめて、ほめて、ほめてよお、ちゃんとだいすきなひとのことばをわすれないんだよ、だからほめて、ほ、ほめられるとうれしいの。


うれしいの。


「あうぅ」


ほめて。


「あうう」


ほめてほめて。


「あううううう」


ほめてほめてほめて。


「にゃう」


ぐろりあぁ。


誰も助けてくれない、転んだのに誰も助けてくれない、お腹が空いているのに誰も餌を与えてくれない、土は美味しく無い、土は一部に出来無い、俺にしてあげれない。


ポロポロと涙を流しながら月の光に包まれる、眠くなる、なにをしに外に、ああ、えさがあるんだ、みっつもあるんだ、だからはやくたべてあげないとぉ、しまいはなかたがいさせる。


あのしまいはなかたがいさせるんだ、仲たがい、仲違い、くふふ、姉の方はもう駄目だ、尻尾の支配下にある、尻尾から伸びた神経が脳味噌に突き刺さっているので二度と戻れない、妹はどうだ?


俺の一部の美しさを存分に見せつけて特別扱いしてあげた、自分でも理解出来無い程に些細な劣等感、お姉さまの一番は長老で長老の一番は俺ェ、んくぅう、お前はずっと誰の一番でも無かった、だからあの集落に興味が無かった。


そんな俺がお前を一番にしてあげると誘惑しているのだ、卑しく股を開いて、くふふふ、お姉さまが一番になりたいと俺に媚びているのにそれを無視して妹のお前が欲しいと口にしているのだ、微かに透明な触手が突き刺さる。


些細な変化、だけど妹の中に徐々に俺の存在が芽吹く、畏怖した長老も愛したお姉さまも俺の一番になりたいと狂って俺の一部になりたいと叫んでいるのにな、おれは、きみだけがほしいという、いうう。


「にゃう、堕ちるかな、ふふふ、俺の事を化け物として最初は対処したあの姉妹が仲違いをして喧嘩をする、ひひ」


でもうごけない、からだがおもい。


「ひぅ、だれかー」


だれか。


たすけて。


「え、エルフライダーさまっ!」


「ひっ、おおきいこえしないで!こわい!」


だれかがかけよってくる。


うごけないよぉ。


ひぃ。

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