第231話・『足裏は汚く無いけど心は汚い』
戻った墓の氷からの返事はとても良いものだったので俺は大きく伸びをする、望んだ返事が貰えるのはとても嬉しい事だ。
エルフってどいつもこいつも素晴らしく純粋なのな、笑みは何処までも深くなる、グロリアは一度戻ってさっさと外に出るし暇だ。
賢者も妖精も戻した、ふふん、三人で寝ていたらグロリアが帰って来たのだが完全に一人と一匹は無視されていた、そして一人と一匹はそんな事を気にするタイプでも無い。
虫を見るような目でグロリアが対応したのでオイオイ影不意ちゃんにその視線は止めろと注意した、影不意ちゃんはバレてたけどさ、ユルラゥは今までバレて無かったよな?あらら、見られちゃった。
キョウに叱られるかも?でもグロリアが俺を裏切るってもう無いだろうに…………つーか、もし裏切られても俺はずっと一緒にいるだけだしなっ!墓の氷を戻しながらニヤニヤと笑みを浮かべる。
大分回復したのでそろそろ外に出たい、マッサージの感触に酔い痴れながら欠伸を噛み殺す、アレハンドラ・ラクタルを統べていた少女が一心に太ももを揉んでくれる、あー、気持ちいい。
「お加減はどうですか?」
「良い、もっと痛くても良いぜ」
「キョウ様、あまり無理をされては」
「うるせぇ、グロリアが帰って来たらお前がいると不機嫌になるだろ?今しか出来ないんだ、しっかり揉んでくれ」
「は、はひ」
「ちゃんと言え」
「はい」
下僕に命令すると忠実に実行する……グロリアや俺と同じシスターの容姿をした存在、しかし年齢は10歳ぐらいに見える、一般的なシスターよりやや垂れ目がちで目尻が優しい、肌は透けるように白い。
ふふ、しかし俺の飼い主として振る舞っていたバカエルフ、少しは自分の置かれた状況が理解出来たのか調子が良いじゃねぇーか、明日には済ませて置く算段らしいがどうかな、二つの餌を早く食べたいぜ。
一部にしてやるかどうかは忠誠心を見て決めよう、だって一部にしちゃったら他者として認識出来無いから使える奴だろうが使えない奴だろうが肯定的に受け止めてしまう、今しか選択出来ない、今しか厳選出来無い。
長老、バカエルフ、バカエルフの妹、この三人の中で突出した能力を持つ者を一部にする、ふふん、紅葉のような小さな掌で太ももを揉まれるのはくすぐったいけど気持ちいい、もっとやれ、もっとしろ、忠誠心を示せ。
「し、シスター・グロリアは何をしているのですか?」
「蒔いた種がどう芽吹くか少しな、今度食べる一部もお前のように忠実なら良いのだけど、なあ、炎水」
「私程にキョウ様に忠実な駒は中々出来ないと思いますよ」
「へえ、普段はオドオドしている癖にそこははっきりと言うんだな、流石は炎水、躾けの出来た犬だ」
「遺伝子の段階でキョウ様の母親役として調整されましたから、有象無象の一部とは違うと自負しています」
「自信があるのは良い事だ」
「エルフは誇り高い種族ですからね、キョウ様の躾が行き届きさえすれば中々に使えると思います、すいません……じゅび、鼻血を拭いてもよろしいですか?」
「駄目、エロい俺の太ももに興奮したまま奉仕しろ」
「ぎ、御意」
胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服はグロリアや他のシスターの物と同じ、しかし生地の色は黒羽色、普通の黒色よりも光沢があり艶のある色合いで見ただけで高級なモノだと理解出来る、その高級色を見事に着こなしている。
足で脱がしてやろうとすると軽く手で制される、俺の体調を心配しての事だろうけど何だか面白く無い、エルフを食うのは久しぶりなのでダラダラと涎が溢れる、体調を万全にして望みたい、こうやって下僕に奉仕させているのもその為だ。
影不意ちゃんに添い寝して貰ってユルラゥに耳掃除して貰って炎水にマッサージして貰って、ふふ、何処ぞの貴族か俺はっ!しかし現状に満足している、やるべき事をしてさらにやるべき事に備える、幼女の掌はプニプニしていて最高だ、んふふ。
「今回魅了したエルフの女もお前みたいにすぐに魅了されるバカだったぜ」
「じゅび、キョウ様はお美しいですから当然です」
「仕込みをした事を炎水はどう思う?残酷だと思うか?」
「残忍ですね、一部を大量に具現化して集落を襲う方がまだ些か優しさがあると思いますよ、仲間外れにされている孤独なエルフを虜にして大事な家族を生贄に要求するのですから」
「このやり方は嫌いか」
「そう、ですね………だけどキョウ様がされる事です、それはもうきっと仕方の無い事です」
足を上げて足裏で髪に触れる、髪の色は深藍(ふかあい)だ、藍染(あいぞめ)で黒色に近い程に濃く染める事でその色合いが完成される、濃く深く暗い青色、シスターの髪の色は派手な色合いのモノが多いような気がする、神の威光を伝える為にそのようにしているのだろう。
しかし炎水は違う、地味な色合いの深藍の髪、藍染めをする際に藍を搗かつのだが搗とは丁寧に染めた布を地面の上に広げて何度も叩く作業の事を指す、俺も親戚の手伝いで何度もした事があるが大変な重労働で非常に疲れた記憶がある。
その事から褐色(かちいろ)とも呼ばれるこの色は質素だが美しい、質実剛健を好んだ古代では多くの騎士がこの色を好んだと聞く、俺の母親であるように調整されたとはいえ本来はシスターの模範となるべきモデルだ、その精神は誇り高い、俺の計画を卑怯だと言えるぐらいはな。
「いいよ、そうやって素直に言ってくれた方が嬉しい、汚い足裏で撫でてやる」
「キョウ様に汚い場所などありません」
「でも炎水に糾弾されるくらいには心が汚れているよ」
「も、申し訳……」
「いいって」
「あ、キョウ様」
足裏で器用に頭を撫でてやる、髪型も特徴的で太めに編んだ髪を編み目に下から上に手櫛を入れたような仕上がり、柔らかそうなフワフワの三つ編みをしている、何度も丁寧にほぐしたのか三つ編みなのにルーズな雰囲気が漂っている、それを左肩に流していて年齢を感じさせない色っぽさがある。
指を絡めて引っ張ってやると容易に鳴く。
「あぁぁ、い、痛いです」
「ちゃんと揉め……ふん、どうせ俺なんか薄汚いエルフライダーだもん」
「キョウ様っ、ぁぁ、お許しをお許しを」
「ふん」
ちゃんと慰めてよね。
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