閑話164・『おへそが一番エロい器官つー噂』

キョロちゃんの件をキョウに話したら本気で心配された、キョウの目を掻い潜って湖畔の街に出現したのは驚くべき事らしい。


性格、言動、所作を伝える……俺とキョウとグロリアを掛け合わせたかのような性格、毒々しい振る舞い、ぶっちゃけ逃げました、俺の体を渡すかよ!


それでいて絡み付くように俺を見詰めていた、そう、そこに確かに愛情はあった、粘着的で毒々しくて吐き気を催すような愛情、それは桃色では無く真っ黒だ。


真っ黒の愛情って愛情って言って良いのだろうか?キョウに優しく叱られる、俺が怯えているのがわかっているのか穏やかな口調だ、自分やキクタ以外の呼び掛けに反応したらダメだよと言われる。


そうだな、俺があまりに不用心だった、今も俺の心の奥に潜んでいるのだろう、この会話も聞いているのかな?キョウ曰く支配率で言えば俺やキョウに全く及ばないらしい、そうか、強制的に奪いに来ないもんな。


「キョロこわ」


「んふふ、不用心だよ、大丈夫、キョウは私が護るからねェ、つんつん」


「どうして意味も無く頬を突く」


「可愛いモノに触れたいと思うのは普通の事でしょう?」


「抱き締めるのは良いけど暑苦しいぜ」


「元々は一つだったんだもん、これが本来の姿なんだよキョウ」


「うぅ」


反論しても軽く流される、キョロの事を話してからずっとコレだ、まるでお人形のように扱われて少し疲れが出始めた、俺のお腹を擦りながら縁側で笑うキョウ、心の底から幸せって感じで強制的に引き離す事は出来無い。


欠伸を噛み殺しながら穏やかな時間を過ごす、お腹を何度も何度も擦られて出産を促されているような奇妙な感覚になる、その手つきは何処までも優しく卑しさの欠片も無い、卑しさの欠片も無い事が逆に卑しい。


俺とキョウが作り上げたこの世界は永遠の夏に染まっている、流れゆく入道雲、何処までも広がる青空、儚い命では無くなった蝉の声、そしてキョウのこの手つき、何度も何度も何度も執拗に擦るので流石に疑問が生じる。


「な、何なんだぜェ」


「んふふ、お腹を温めておいた方が良いでしょう?夜は楽しむんだから」


「お腹をポカポカにすると良い事でもあるのか?」


「私の子供を妊娠しやすくなるでしょう?んふふ」


「見ろ、あの雲の形、うんちに似てね?」


「そうだね、赤ちゃん欲しいね」


流せない、いやいや、捻り出すなら赤ちゃんもうんちも同じか?キョウは自分の体を欲するようになってから俺との関係をさらに進めようとしている、モテる男は辛いぜ……こんな風に抱っこされてお腹を撫でられている時点で男かどうか疑うけどな。


あ、赤ちゃん、この世界で起こった事は現実世界に反映される、って事は赤ちゃんも出来るのか?俺とキョウの赤ちゃんって遺伝子的に俺のクローンしか産まれないだろうに、それはそれで可愛い気がするけどさ、お腹を撫でられていると何だか眠くなる。


「ここで作るんだよ」


さらに下の方を擦られて奇妙な疼きを感じる、決して不快なわけでは無いがキョウの顔と一緒にグロリアの顔が浮かぶ、罪悪感で意識が潰されそうになる、さらに臍を抉るように指でグリグリされる、これではまるで玩具だ。


俺は私でキョウはキョウなのに些か一方的過ぎる、お臍をグリグリされて顔を赤らめる俺を肩に顎を置いて幸せそうに見詰めている、涙しながら睨みつけても指の動きが激しくなるだけで何の意味も無い、実に困った、実に恥ずかしい。


「や、やめてよ」


「キョウがキョロに襲われないようにこうやって護っているのに酷いなァ、んふふ、もう少ししたらズブッて指が刺さりそう」


「痛いって」


「男の子ってこーゆー気持ちなのかなァ、んふふ、答えてよ」


同じ姿をした二人が互いに絡み合いながら何なんだろう、蛞蝓の交尾を連想しながら少しだけ瞼を下げる。


「わ、わからないよ」


「ふふっ、女の子だもんねェ、あーあ、私にももっと大きな『指』があれば良いのに」


「ッ」


「キョウはどう思う?」


「…………お腹痛いから擦ってよ、大事な所なんだろ?」


「あ、うん」


「き、キョウの赤ちゃんなら産んでも良いぜ……でも、こんな風に乱暴にするならダメ」


「…………」


「バーカ」


「そ、そぉだね、あははは」


キョウが焦って乾いた笑いをする所なんて初めて見た。


ばーか。

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