第220話・『エルフの敵では無いよ、エルフの味方です、ほんとうのほんとう』
体に突き刺さった矢がズブズブと音を鳴らしながら抜ける、あは、まるで放屁のような音、恥ずかしいよォ、飛び掛かりながら苦笑する、
混乱した瞳、俺を殺そうとした素敵なエルフ、おいししょうでしゅ、チカチカ、瞼の裏で光が弾けて全ての光景が鮮やかになる、しゅてきぃ、しゅてき、むてき、しゅてき、こいつはすてーき?ごちそう?
うふ、狼狽えるぐらいなら攻撃しなければ良いのに、狼狽えるぐらいなら大人しく餌になれば良いのに、本当におバカさんだなー、耳ばかり発達して脳味噌が小さくなっちゃった?大丈夫、脳味噌コネコネして直してあげる。
「っ、化け物がっ」
「お姉さまっ、ここは皆でっ」
「お前は皆と集落に戻ってこの事を伝えろ!結界のレベルを上げるように伝えるんだ」
腰に差した独特の形状をした剣を抜きながら女が叫ぶ、細身で異様な程に先端の鋭く尖った刺突用の片手剣、レイピアか?風を纏ったソレは魔剣である事の証明、いや、聖なる力に溢れているから聖剣か?
ファルシオンを抜きながら肉薄する、魔剣に成り掛けのファルシオンと聖剣、互いの刀身がお互いを否定するように火花を散らす、全力で叩き込んだのに纏った風がファルシオンの重量による一撃を受け流している。
憎らしいので素直に舌打ちをする、グロリアがいると品が無いですよと叱られるから普段はしない、躾けは行き届いているよ?刀身を滑らせるようにしてファルシオンを地面に流す。力のままに沈むファルシオン、受け流しが上手。
横腹を蹴られるがファルシオンを握ったままなので吹き飛ばされる事は無い、血を吐きながら耐える、全ての攻撃に魔力を使用している、しかも武術の心得があるのか動作の一つ一つに無駄が無いよぉ、足の踵を当てるソレはコンパクトながら威力が大きい。
「うぇ」
「早く行けっ、化け物の相手は私だけで十分だっ」
餌が散る、何処へ行くの?寂しいよ、体を折り曲げた俺の顔面を再度蹴りが襲う、生かして捕まえたいのか?それとも姿勢的に二度目の蹴りを出しやすかった?足裏全体を使用した蹴りは先程の部位破壊のモノとは明らかに異なる。
踵を当てるソレとは違って使用部位の面積が広い、足刀や踵蹴りと違って加撃部への直接的な破壊力は見込めない、しかし敵を大きく蹴り離す際や姿勢を崩す場合には使い勝手が良い、しかも魔力を内包した蹴り、ファルシオンと一緒に吹っ飛ぶ。
「行ったか、これで何かあっても犠牲は私一人だけだ」
「いたぁい、くすん」
「ふっ、可愛い事を言う、エルフの天敵が――――エルフを捕食する化け物」
「鼻血出ちゃった、ハンカチハンカチ」
『右のポケットにあるわよ、グロリアが入れてくれたでしょう?』
キクタの声は母親のように優しい、言われた場所を探すとハンカチを発見。
「は、ハンカチは女の子の常識」
『そうね、グロリアの教育も悪い事ばかりでは無いようね』
鼻血を拭いながら立ち上がる、マントを脱ぎ捨ててエルフの女は漢臭い笑みを浮かべる、見た目は美少女なのに気質がそうなのか?年齢的には俺やグロリアと同じように見える、17歳ぐらいかな、でもエルフのソレは信用出来無いし。
ふんわりと結んだポニーテールが印象的な少女だ、手櫛で調整したようなラフ感のあるポニテが実に可愛い、そのせいで少し幼く見える、けどロリじゃない、俺の一部は全てロリ、こいつ良いなァ、こいつ良いなァ、検品をしよう。良いエルフかなあ。
琥珀色(こはくいろ)の髪が木々の間から差し込む太陽の光を受けてキラキラと輝く、古代の樹脂類が土中で石化する事で発現する命の色、同時に死の色でもある、とても美しい髪だ、とてもとても美しいので喉が鳴る、仲間を逃がしたのも評価が高いゾ。
肌の色は透けるような白色、初雪を思わせる白い肌、一切の無駄の無い肉体は機能美に満ちている、良い太もも、手足は長く顔は小さい、睫毛は長く眉毛はちゃんと綺麗に整っている、しかしその視線は険しい、どうして?お友達になりたいの、貴方とお友達になりたいの。
瑪瑙と一緒で貴石と名高い琥珀色の髪を見詰めながら首を傾げる、竜胆色(りんどういろ)の瞳は敵意では無く打破する者として俺を見ている、憎しみや恐れでは無く義務感による排除、真面目だねェ、竜胆の花のように儚く薄い青紫色のソレをどうしても夢中にさせたい。
竜胆の由来は根の部分が極めて苦い事から竜の胆のようだと言われるようになり、そこから竜胆と名称された、こいつの瞳も苦いのかな?くり抜いてくり抜いて食べないと、だけどね、んふふ、何処は眼球の根になるんだろう?そこがわかんない。
「立て、今の攻防で大体わかった、力の出し惜しみをする程に私は弱いか?」
「お名前、お名前教えて、おれ、おれはキョウです」
「―――魔除けの意味合いもあって名乗りたくは無いな」
「うぇ」
「そもそも殺し合いをする仲ではないか」
「怒った、お前の前でお前の仲間を殺す」
「貴様」
「逃がした奴らはみんな俺の虜にして寝取ってやる、そ、れ、と、もぉ、お前を寝取るか、そうだ、集落への案内はお前がしろ」
音を立てずに素早く森の中を移動する為だろう、鎧は革製などの非金属の物で構成されている、しかし太ももは見えている、そこは護ろうぜ、んふふふふ、エルフの耳が目の前にある、あるあるあるある、そこにあるあるあるあるあるあるあれぇ。
レイピアを納めて背中の矢筒から矢を取り出す、その動作があまりに美しかったので見惚れていると目の前に迫った鉄製の鏃の姿、木の矢に先端だけ被せてあるのか?これだと修復しやすいな、瞳に突き刺さる、ぷちゅ、何かが弾ける、奥の方♪
「この世から去れ、長老が言っていた、貴様はエルフの天敵だとっ」
「あばば、ぷひひ、あはははははははは、ちゃーう、ちゃうちゃうーーー、おれが、おれはあああああああああエルフに愛されし者だもんんんんんんんん」
「なっ」
「お前に愛される資格があるんだもん♪」
何か潰れたけどどうでも良い、視界も狭くて獲物しか入らない、やったね。
「くひぃ」
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