閑話162・『でもキョロちゃんって結局は呼んじゃう』

キョウがグロリアに近付いている事実が認められない、だけどすぐにキョウに戻る、あれがキョウの理想なのだろうか?


馬乗りになったまま口内に血液を流し込まれる、咽る、キャキャ、キョウが無邪気に笑う姿が視界に入る、瘴気と悪意を撒き散らしながら私の半身は笑う。


とても邪悪でとても無邪気、キョウの血液の味は何とも言えない、血の味、しかしほんのり甘いような気がする、手の甲に深々と突き刺さったナイフが動く度に新たな血が流し込まれる。


「いたたっ、あれ、何してたんだっけ?」


「キョウ」


「おう、どうしてキョウに馬乗りになってんだ?…………してる途中か!アレを!」


「アレをしてる途中では無いねェ、残念ながら……お話しようよ」


「え?」


グロリアのような人格に変貌した事を正直に話す、うんうんと頷くキョウ、それはキョウの中に生まれようとしている新たな人格、私と同じように切り替わるキョウだと思う。


グロリアのようなキョウ……キョウがグロリアに憧れるばかりに意識の中に生まれた?私がキョウを護る為に生まれたように?だとしたら私の敵だ、キョウのキョウは私だけで良い。


「へえ、新しい俺か、何かキモいな、どんだけグロリアの事が好きなんだ俺」


「そうだねキモイ」


「も、もう少しオブラートに包んでくれ!」


「グロリアオタクのキョウが生み出した架空のグロリアは何処からどう見てもキモイと思うよォ」


正直に口にするとキョウは項垂れる、勿論そんな単純な理由であれが生まれたわけでは無い事は承知している、グロリアがキョウを神に仕立て上げる為に様々な教育と試練を与えた結果がアレだ。


何時かグロリアに捨てられるかも?何時かグロリアに裏切られるかも?大切な人を何時も失って来たキョウには避けては通れない悩みだ、その心の悩みとストレスが限界を迎えてアレを生んだ、キョウを裏切らないグロリア。


グロリアを失いたくないと願う心がキョウの中に新しい人格を誕生させた、私と同じようにキョウを害する事は無いと思うけど目的も思考も読み取れない、私はキョウの人格の一つだがグロリアに寄ったキョウの人格とはかなり遠い。


図にすると真ん中にキョウがいて左右に私とグロリア寄りのキョウがいる形かな?グロリアの血を採取した事も原因の一つかも知れないがエルフライダーの出鱈目さを考えたら十分にあり得るかな?


「私と同じようにここに呼べる?キスしてくれたお礼にぶん殴るから」


「や、やめろよォ、うーん、切り替われないし呼べ無いゾ」


「まだ幼体なのかもねェ、私もキョウの中から表に出れるまでかなり時間を必要としたしねェ、んー、外側の敵でも一杯なのに内側にも、か」


「ん?俺なんだから味方だろう、キョウと同じようにな、へへ」


おバカさん、しかしキョウの言葉に黙って頷いて肯定したふりをする、グロリアの精神と口調を模造したキョウ、近い関係で言えばクロリアがいる、後で色々と聞いて見るとするかねェ、んふふ、私にとっては敵なんだよキョウ。


キョウのキョウは私だけで良いのに大嫌いなグロリア似のキョウだなんて認めるわけ無いでしょうに、既にどうやって始末するか様々な策を考えている、一番確実なのは以前に私が心の奥底に封印されたアレ、存在はするが干渉は出来無い。


湖畔の街の地底に沈めてしまうやり方、その為にはキョウにはグロリア似のキョウを嫌って貰わないとね、私を封印した時はグロリアがキョウを洗脳して誘導させたよね?思い出すだけで腹立たしいけどグロリアに似た存在にやり返せると思うと気分が良い。


「グロリアの精神と口調を模造したキョウか、グロリア似のキョウ、んー、呼び難いなァ、どうするキョウ?」


「俺的に名案がある」


「言いなよ」


「グロキョウ」


「決定」


「マジかっ!?キョロリア、略してキョロちゃんってパターンも考えていたのに!」


そんな可愛いのは駄目、グロキョウ、良いじゃない。


見っとも無くてね、んふふ。

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