閑話161・『グロリアキョウ、略してグロキョウ、つかグロいキョウ』

湖畔の街は今日も静かだ、しかし不満もある、最近のキョウは誰でも彼でもここに誘い過ぎじゃないかな?キクタまでは何とか我慢するけどねェ。


不満を心の中で呟きながらキョウに説教をする、んふふ、グロリアグロリアと後ろを歩いているだけじゃダメだぞ、指を立てて説教するけど既に眠そうだ、んふふ。


「ふぁ、キョウ、眠い」


「素直過ぎだよねェ、んふふ、あっちの世界で沢山食べたんだからこっちの世界で沢山運動しないと駄目だよォ」


「やだ」


「キョウ、グロリアより強くなりたいんでしょう?」


「う、それはそうだけど、可愛い女の子と遊びたいしカッコいい男の子をからかいたい!」


「ふふ………欲望だだ漏れだよゥ!」


「いてっ!?美少女の頭を叩くなんて酷過ぎる」


「私と同じ顔だからねェ、抵抗感は無いよォ」


「痛いっ!酷いっ!撫でてよ!」


泣き顔になりながらキョウが強請る、大きく溜息を吐き出しながら癖ッ毛を撫でてやるとすぐに笑顔になる、単細胞、長期的にものを考えられないんだよねェ、前はそうでも無かったけど今は酷く動物的になった。


頭が悪いわけでも学習能力が無いわけでも無い、全ての行動が衝動的なのだ、人間社会で生活するにはあまりにも欠落したものが多過ぎる、それでいて身体能力は高く様々な技能を保有している、危なっかしいよねェ。


グロリアがもう少しキョウに厳しくなってくれたら良いんだけど、最近はもう駄目だ、あそこまでポンコツだとは思わなかったよォ、二人して手の甲に穴あけてバカじゃないの?私にもあるけど。


「キョウも俺と同じ穴がある」


「へ、ああ、手の甲にね………キョウがあけたんでしょうに、勘弁してよね」


「違うよ、キョウの考えている事と全然違う、だってこれはグロリアと俺だけの穴じゃないもん、俺とキョウの穴でもある」


甘い香りがした、顔を寄せて微笑む様はまるで小悪魔のようだ、底知れない瞳に吸い込まれそうになる、私と同じ色合いなのにまるで違うように感じてしまう、口説かれていると自覚するにはあまりにも二人の関係か近すぎる。


他人を口説く事はあっても私達は一心同体、そこに違和感を感じるのは当然だし、グロリアと同じだから怒らないでと言われているようで微かに不快になる、別にその穴に興味は無い、グロリアに母乳を与える為の穴。


母親を知らない孤高の人工生物の為の哺乳瓶、べ、別に嫉妬なんかしてないよねェ、なのに嫉妬して当たり前と言われても納得しないよ?


「キョウにも飲ませたげる」


「い、いらないよォ」


「飲め」


「ッ、や、やだって言ってるでしょう、今日のキョウおかしいよ!」


「そんなわけない、おかしくない、グロリアは喜んでくれた、キョウも喜んでくれるもん」


「グロリアと私は違うっ、い、一緒にするなっ!」


「んふふ、だぁめ」


私の口調を奪ったキョウは無理矢理にキスをする、口内を蹂躙されながらも必死に逃げようとする、キョウはお母様に近付きつつある、暴走と修正を繰り返して無駄な部分を削ぎ落として神に近付こうとしている。


涙目になって嫌がる、グロリアなんかと比べ無いで、私は唯一無二、キョウにとって唯一無二の存在なのにあんな偶然に運命に巻き込まれた女なんかと、しかしキョウの舌は止まらない、遊ぶように私を蹂躙する。


決して目を逸らさないで私を見ている。


「そうですね、さあ、血を与えましょうか」


「ぷはっ、き、キョウ」


「どうしました、キョウさん?」


「――――っ」


声も口調も何もかもが一致する、髪と瞳の色を除けばあの女だっ。


これではまるで。


「愛してますよ、キョウさん」


「そ、んなのじゃ、悲しいよ」


キョウ、キョウはキョウなんだからね。


血を飲みながら思う、やはり原因を―――――消す?

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