第217話・『お尻踏み踏み天国』
キョウさんの歌が耳に残っている………あれはそもそも人間の歌では無いのでしょうね、グラスを傾けながら天井を見詰める。
何だか隣の部屋が騒がしい、キョウさんは疲れて寝ているはずのなのに様子がおかしい、その寝顔を見たいが為に理由を探す。
疲れているはずだから体を求めてはいけない、自分に自制するように促す、しかしそんな私の思惑を無視するようにドアが開かれる。
「キョウさん、起きたんですか、ソレは?」
「ああ、俺の一部だ、んふふふふ、躾けてる途中なんだけど無駄に長生きしている個体だからな、プライドが邪魔だから砕いてるんだ」
「わ、我が君」
「へえ、体格差があり過ぎて跨るには少しアレですね、変化しないんですか?」
「俺が望んでいないからなあ」
キョウさんの歌に感動した貴族が用意してくれた部屋は豪華絢爛なモノ、眩い装飾品と品のある佇まい、私の別荘と良い勝負ですねと心の中で呟きながらキョウさんの乗り物を鑑賞する。
ちゃんと取り込めたようで良かったです、だけど体格差があり過ぎて体を引きずる様にして部屋から出て来る、背中にはキョウさんが乗っている……別にエルフライダーの能力に酔っているわけでは無さそうだ。
髪を掴んで顔を上げさせる、幼いけど中々に整った顔をしている、エルフは美形しかいませんし当然ですか、キョウさんの一部になれるなんて幸せ者ですね、もっと感謝しないと駄目ですよ?私の彼女ですから。
「ほら、俺のグロリアだ、挨拶しろ」
「わ、我が君の一部の藍帆傷です………」
「可愛いじゃないですか、当たりですよキョウさん」
「?当たりも糞もこいつは産まれた時から俺の一部だもん、何飲んでるの?」
「ライ・ウイスキーですよ、商人が戸棚の奥に隠していましたが金貨を積めば黙りました、これもまた当たりです」
「俺も飲むー」
「はいはい」
キョウさんが私と同じモノを好んで味わおうとする、背伸びしている子供のような表情が可愛くて秘蔵のお酒も軽々と差し出してしまう、ライ麦を主原料としたウイスキーだが何より物が良い。
ライ麦パンと同じようにライ麦由来のほんの僅かな苦みがあるのだがそれが実に味わい深い、100パーセントライ麦を使っている証拠だ、ある時期からこの風味が嫌われるようになって生産者も減った。
確かに飲みやすさは無いように思えるが元々お酒なんてものはそんなものだろうと心の中で呟く、ライ麦由来のスパイシーさを嫌う人間が多いがキョウさんはどうだろう?ちびちび飲んでいるのだが椅子であるソレが小刻みに震えるせいで僅かに零れる。
「美味しいっ、ライ麦だコレ」
「ああ、説明してなかったですね、それと椅子の彼女、大丈夫ですか?」
「わ、我が君、すいません」
「いいぞ、別に、お前が限界で震えようが何しようが俺には関係無いもん」
「そ、その通りです」
「………お、お酒でキョウさんを長居させるのも失敗でしたかね」
とても苦しそうにしている一部を見てそう呟く、だけど頬が桃色に染まっていて幸せそうだ、お酒のせいなのか一部で遊んでいて興奮しているのか。
私と一緒にいて嬉しいのか、ふふ、わかっている癖にグロリア。
「いいよ、こいつ、俺の可愛いお尻でふみふみされるの好きなんだ、マゾだから」
「っ」
「長生きしていてプライドの高い個体なのでは?キョウさんが自分で言ったんですよ?」
「そうだっけ?でもそうだよな藍帆傷、俺の可愛いお尻で踏まれて幸せだろ?」
グラスを傾けてキョウさんが笑う、花咲く笑顔、小さなお尻がぴょんぴょん跳ねて下の幼女を蹂躙する。
「ほ、ホッホッ、無論ですとも――――学も誇りも無い、椅子として使ってください」
そして彼女もまた花咲く笑顔。
二輪花ですか。
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