第213話・『ヒロインの為に穴が必要なんだ、穴人公か主人穴にならないと』

エルフモドキを取り込んだ事で精神が安定したばかりが水や砂に触れただけで周囲の生物の情報を読み取る力まで得た。


感知では妖精のソレに劣るが細かい情報を読み取るならこっちの方が良い、中々に使える一部じゃないかと満足する、憮然とした麒麟はちゃんと命令を守っていた。


やや蒼褪めた顔をしているグロリアを背中で抱えると狼狽えていた、そんな雑用は自分がしますと言ったので睨んだ、グロリアに触れる権利があるのは俺だけだ、殺されたいの?


既に姿は本来の俺に戻している、グロリアが褒めてくれる可愛い俺の姿、それが俺が俺の姿を忘れない理由、背中に背負うとあまりの軽さに動揺する、お肉、もっとお肉食べようなグロリア。


エルフのお肉はどうだ??麒麟を戻しながらそんな事を思う、もっと栄養のあるものって何だろう?グロリアは俺の為に右手の甲にナイフをブッ刺してグリグリして赤いジュースを与えてくれた、美味しいよォ。


うふふ、あの味は忘れない、何時だって与えてくれると約束してくれた、あの赤いジュースは飲み放題なのだ、でも飲み放題であるが故にこうしてグロリアの体力が奪われる、可哀想、痛そう、美味しそう、赤いジュース。


「あ、れ」


赤いジュースは美味しい、でもそれを要求し過ぎるとグロリアが可哀想、だめだめだ、だめだめだめだめだめだ、背中に感じるグロリアの温もり、それを失う様な事は絶対にあってはならない。


洞窟を抜けて浜辺を歩きながら混濁してゆく精神に戸惑いと歓喜を覚える、砂浜に足が深々と沈む、俺一人だったら転んでも大丈夫、でも背中にはグロリアがいるので転ぶわけには行かない、グロリアは俺の大切な人。


何時も冷静で冷酷で冷血で腹黒くて自分の欲求の為に他人を平気で巻き込んで使い古して使い捨てて新しい傀儡を探すような最低の女、それでいて寂しがり屋で優しくて他人との触れ合いになれてなくて臆病で繊細な最高の女の子。


矛盾したグロリア、どっちのグロリアも心の底から愛している、ああああああああああああ、か、可愛いよグロリア、俺のグロリア、俺が一生護ってあげる、グロリアの命令なら何でも聞くよ、ちゃんと良い子に出来るよ、グロリアの望む俺になるよ。


足裏で何かが潰れる、イソガニが潰れてしまって浜辺の砂と同化するように粉々に砕けている、何だか不思議な光景、じっと見詰める、生きていたモノが死んで最初から命の無いモノと一つになっている、なんて素晴らしい光景なのだろう。


先天的に命の無い砂、後天的に命を失って物体になったイソガニ、最初からマイナスなものと後からマイナスになったもの、掛け合わせてもマイナスなまま、不思議だ、じりりりりりり、耳の奥で何かが響いているが気にしない、それ所では無い。


何かが閃いた、こうやってイソガニが潰れて体液を砂に浸透させるように、クスクスクス、声が聞こえる、誰だろう?………ふと水面を覗き込むと笑っているのは俺だった、俺が笑っているんだ、嬉しい事があったのかな?何が嬉しいのだろう、不思議だなァ。


「ぐろ、りあ、俺に出来る事が見付かったよ、少し待ってな」


浜辺に横たわるグロリアはまるで人魚姫のようだ、ふふっ、あんな半身が魚臭い生き物と比較したらグロリアに失礼かな?太陽の光を受けて海面がキラキラと輝いている、この銀波もグロリアの銀色の髪に劣る、ああ、俺が恋をしているからか。


睫毛長いな、眉毛整ってるな、顔綺麗だな、顔小さいな、色白だな、総合的に判断すると俺のグロリアは最高なわけで自然すらこの美しさには及ばない、大人しく負けを認めろ、だけど今は悲しい事に眠り姫、血を失い過ぎている、だから考えた。


グロリアの胸元を弄る、別に事をしようとしてるわけでは無い、ここでは村が近すぎてグロリアの裸体を見られる事になるかも、そうしたら目を抉らないと駄目だからな、人の良い村人だったから殺さないよ、でも目は抉らないと駄目だから、目は抉らないと。


だから事はしないよ、グロリアのナイフを取り出す、ナイフを手で遊ばせながらグロリアの右手に視線を集中させる、二人は仲良し、二人は恋人、だったら御揃いが良いよな?グロリアの頬を撫でてやると薄っすらと微笑むのがわかる、俺だよ、俺だよグロリア。


「いたぁい、んふふ」


グロリアの掌を貫通させたナイフが俺の掌を貫通している、性的な快楽と倒錯的な悦楽を感じて体が自然と弓なりになる、ぺたん、砂浜にお尻を沈めてグリグリとナイフで掌を抉る、開拓する、開拓する、開拓してグロリアの為の哺乳瓶を作る。


俺の右手の掌はグロリアの哺乳瓶、あああああ、こんなにも綺麗で可愛くて完璧なグロリアに俺が母乳をあげれるだなんて、いや、母血か、ふふふ、素敵な造語、今だけは俺がグロリアのママだよ、だってグロリアは人工生物、お母さんいないものね。


血がナイフに沿って滴り落ちるのでグロリアの唇に近付ける、小生意気で愛らしい言葉を吐き出すその唇に血を流し込む、そうだよグロリア、何でわからなかったんだ!こうすれば良かった、与えて与えられて二人で生きていこう、あはぁ。


「ぐろりあぁ、すきぃ」


「けほっ、あっ」


「えるふらいだーの、おれの、おれのち、のんでのんでのんでのんでのんで、のみほうだいだよぉおお、すてきなことだよね、のみほうだいって」


「き、キョウさ、ん」


「起きた?おきた、おきた、呼び捨てにしてェ、そうしないとシスター・グロリアって呼んじゃうぞ?関係を戻しちゃうぞ」


青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる美しい瞳を大きく見開いて動揺している、俺の行為を否定しないで、俺の好意を否定しないで、だってグロリアだってしてくれたでしょう?


俺の血液がグロリアの体を構成する一部になるんだ、それは何て素敵な事なんだろうか、ベールの下から覗く艶やかな銀髪が太陽の光を受けて鮮やかに輝く、ああ、俺はこっちの海の方が好きだな。


「や、やぁ」


「だろう、だったら呼び捨てにして、俺がグロリアのモノだってわかるから」


「き、キョウ、どうして、こんな――――美味しい」


「そう、飲んでグロリア、飲んでるグロリアが見たい」


「ん、美味しい、痛そうです」


「グロリアの為に穴を空けたんだ、女の子が捧げられる穴って限られてるから―――こうするしかないだろ」


「キョウ、もっと」


舌をプルプル震わせてグロリアが蕩けるような表情で催促する、いいよ、その為にこの穴があるんだ。


「御揃いだね、御揃いの穴が出来て嬉しいよグロリア」


「もっとォ」


沢山飲んで元気になってね、深く抉れば肉片も―――美味しく食べて。

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