閑話147・『うちの飼い犬はバカ犬って言う人は躾が出来無い私がバカです理論を知らねぇ』
魔物を魔物が支配する事は良くある事だ、高位の魔物が下位の魔物を支配する、結局は魔王か勇魔がピラミッドの頂点にいてその下に上下関係が構築される。
人型の高位の魔物の多くは自分に無いものを羨んでか巨体な魔物を使役する場合が多い、見た目だけで言えば両者の力関係は逆のように思えるが人間の形をした魔物が高位な事は一般的にも知られている。
最初から人間の姿をした魔物と人間に変化出来る魔物の壁は大きい、前者は魔王の幹部として生み出される場合が多くその一族はエリートと言っても良い、後者は一般的な魔物と人型の魔物の中間に位置する存在だ。
俺は情報を読み取りながらアクの尻を叩く、くぅんと犬が甘えたような鳴き声をする、腕は四本になり肩から二本の腕が生えている、可愛い可愛い妹をこいつの体に溶かしてやった、妹は人懐っこい性格だったのかこいつと一つにすると扱いやすくなった。
「いけー、アクー、殺せー、人間に化けれる程度の魔物が使役する犬の化け物をぶち殺せ」
「殺しテ、殺しテ、村に帰ル」
「村を自分で滅ぼしたのに面白い事を言うな、ふふ、吠えろ、吠えろ、盛りの時期の猫のように」
「にぁぁぁあああああああああ」
乗り心地を確かめるべく魔物と戦闘中、アクは面白い程に吠える、面白い程に跳ねる、犬の形をした魔物の数は30近いのだが誰もアクを捉える事は出来無い、景色が素早く移り変わる様を見詰めながら高らかに笑う。
人間に害を成した魔物は殺さないといけない、こいつ等は近隣の村を何度も襲っている、だから俺に殺されても文句は言えないし俺が死んじゃっても誰も文句は言わない、結局は力のみで解決するのが一番で失敗しても後腐れが無い。
アク、クアクはちゃんと調教された乗り物だ、俺が長い時間を使って乗り物としての純度を高めた、少し反抗的な面もあったので妹の死体を溶かしてやったら面白い程に忠誠心が向上した、腹の中に残りカスがあって良かった良かった。
敵の魔物の親玉は人間に化けれる魔物のようだ、狡賢く執着心が凄まじい、村から奪うものが無くなると人攫いを始めた、俺にとって都合が良いのは相手が悪人である程に俺も悪人になれるって事、んふふ、ころせ、ころせ、はやくころせ。
「あく、あく、ころせ、ころしたらおなかをなでてやる」
「くぅん」
「ど、どうしてだっ、高位の魔物がどうして人間の乗り物になってやがるっ、魔物としてのプライドはどうしたっ」
使役した犬っコロに戦いを任せて崖の上で偉そうに叫ぶ魔物、折角人間に化けれるのにどうして中年の姿になるんだろう?疑問は尽きないがアクの耳を軽く捻ると目を白黒させて口から火炎を吐き出す、空気が焦げる、犬っコロが一瞬で消し炭になる、
溶けた地面がガラスのように光沢のあるものへと変化する、アクは火と風の属性を扱える優秀な魔物だ…………田舎でちょい悪として生活していたら俺に出会ってしまった、犬と人間の出会いって運命だよな、会った瞬間に俺の飼い犬にしようって決めたもん。
「同族を殺して何が目的だっ!」
「こいつに意思は無いよ、こいつは俺の下半身で地面を駆けるか糞尿を垂れ流して俺のお腹をすっきりさせる以外の役割は無いんだな」
「帰ル、お家に帰ル、ああ、帰り道がわからなイ、だ、誰か教えテ」
「わからなくて良いんだよ、もう一生帰れないんだから、後で用を足そうなぁ」
「うぅぅううううううううううう」
下半身をこいつの背中に溶かし込んで完全に支配下に置いている、髪を掴んで位置を調整するか、ずずず、白い髪は腰まで伸ばしていて一本の紐で無造作に括っている、白髪だが光沢があり動物の毛並みのように鮮やかに輝いている。
着込むのは樹皮衣で簡易的で実用的だ、あの集落から奪ったものだろう、オヒョウやシナノキの内皮繊維で織られた衣服だ、魔物が着込んでも違和感が無い、しかし下半身なのに妙に抵抗する、だけど甘やかすとすぐに何もかも忘れる。
その程度の知性だ。
「良い子、良い子」
「あ、そ、そレ」
「良い子良い子、良い乗り物、下痢もしないし便秘もしない、健康的な女の子、実用的な乗り物、拾って良かった」
「ひゃああああ、嬉しイ、嬉しイ、き、キョウさま、キョウさま」
嬉ションしても良いんだぜ?俺もすっきりしたいからな、背後から飛び込んで来た魔物をファルシオンで切り落とす、魔物の血はファルシオンの成長を促進させる、自分から餌になりに来てくれるだなんて俺の飼い犬より頭が良いんじゃね?
黄金色の水をまき散らしながら絶叫するアクに周囲の魔物は怯えたような視線を向ける、自分たちよりも遥かに高位の魔物が自分たちより劣る存在として使役されて乗り物扱いされているのだ、んふふ、でもでも、俺はお前達はいらなーい。
同じわんわんでもこいつの方が可愛いもんなぁ。
「キョウさま、キョウさまもいっしょにお家に帰ル、一緒に暮らス」
「んふ、何で俺がお前のゴミのような仲間と暮らさないと駄目なんだ、ダメだぞぉ、調子に乗ったら」
「ひぃいいいいい」
耳を捻って変化を促す、さあ、お前もエルフライダーの乗り物としてちゃんとちゃんとだよ?
ふふ。
『ガ―――――――――エル』
帰れないんだよ。
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