閑話146・『壊れ方』
「ダメ」
「ダメじゃ無いもん」
私が一言で切り捨てるとキョウは涙目になって抵抗する、グロリアがお仕事で外に出ている、この街の治安は悪く夜に一人で出歩く事は避けた方が良い。
グロリアにも出歩かないように注意されたしね、現実世界では麒麟が抱き枕になってキョウを守護している、神に仕える聖獣だ、何かの間違いで部屋に男達が侵入しても消し炭にしてくれる。
現実世界での守護は完璧、後は本人を一日宿屋で拘束しないとねェ、興味本位で外に出ようとするキョウを強制的に湖畔の街へと呼び寄せた、本人は不服そうに小さな鼻を鳴らしているが仕方無い。
麒麟と一緒なら大丈夫だろうが人目がある、幼い女の子を連れて夜の街を出歩くのはお勧め出来ない、それが人間を一瞬で消し炭にする化け物だろうがねェ、私に強制的に閉じ込められたキョウは不満を訴える。
ダメダメ、クロリアも私に賛成しているし、新しく取り込んだ下半身の一部の情報を処理出来ていないでしょう?今日はゆっくり休む事が重要、道草程度だと思っていたアレも中々に優秀な魔物のようだ、火と風の属性は使えるねェ。
「ダメ、絶対にダメ」
「どうして?俺強いもん」
「いやいや、キョウは頭がゆるゆるだし精神が安定していないでしょう?一夜限りの関係なんて見てられないよ」
「???麒麟となら良いのか?」
「良いよ、キョウの一部じゃん、私ねェ、男は嫌いなの、臭いし油塗れだしいやらしい目で見て来るでしょ?」
「むぅ」
「大好きなグロリアが戻って来るまで私が相手してあげるからねェ」
「やだやだやだやだやだ」
駄々っ子ここに極まる、しかしここまで退行しているのは珍しい、キョウの精神状態を分析する、ああ、あの取り込んだばかりのアクの代用品、あいつは見た目そのままの精神年齢だったのかァ、キョウに強く影響を与えている。
一部にしなかったがその妹も捕食して細胞を取り込んだ、姉妹揃って優秀だねェ、名のある魔物の子孫なのかな?アクの代用品であるお姉ちゃんを改造するのに妹の死骸を使用するだなんてキョウったら大胆で底なしに残酷で天井知らずの優しさ♪
矛盾を孕んだ言葉を飲み込みつつキョウを説得する。
「外に出てイケメンとお食事したいっ!」
「あ、絶対にダメな奴だね、コレ」
抱き付いて来るキョウを抱き締めながら虚空を見詰める、予想以上の返事に頭が痛くなる、美少女大好きだもんねェ、女性になればそりゃそうなるかァ、んふふ、絶対に出さない、しかしグロリアがいないと本当にポンコツ化が酷いよねェ。
「うぅうう、キョウだって奢られてちやほやされたいでしょ!」
「いや、別に」
「うぅううう、ここに閉じ込めてどうする気だ!」
「閉じ込めるだけだよォ、朝まで」
「ひっ、よ、夜遊び出来無いじゃん」
「出来無いねェ、その為に閉じ込めてるんだからァ」
「あれ、何で閉じ込められてるんだっけ」
「キョウが私といたいからでしょう?」
「う、うん、そうだった、わかってたぞ、えへへ、キョウ、キョウ」
言葉遊びで思考を誘導するとすぐに過去の事を忘れる、可哀想な生き物、早くエルフを食べさせないと。
キョウが死んじゃう。
「えへ、えへへ、キョウと一晩中一緒だ」
「うん、うん、嬉しいね、キョウ」
悲しいね、キョウ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます