閑話144・『女の嫉妬は怖い、レズの嫉妬は死ぬレベル』
「キクタに聞いたらやっぱり俺はお姫様だって言ってたぞ!」
「バレたかァ、んふふ」
物凄い勢いで部屋に入って来たキョウを見てクスクスと笑う、どうやって効率的にキョウに餌を与えるか思案していたら本人が飛び込んで来たので少し驚いた。
あれだけ念入りに洗脳して上げたのにキクタの奴め余計な事をするねェ、あいつは私と違ってキョウがグロリアを好きになろうが構わないらしい、だからそんな事が言える。
グロリアを嘘吐きにして信用を無くそうとしたのに無駄な労力だった、キクタ、あいつはやっぱりいらないねェ、そろそろ本腰を入れて始末したいが状況がそれを許さない。
キクタを倒してはい終わり♪本当はそんな物語だったはずなのにお母様が出て来たからねェ、エルフライダーの能力を持つキクタ、勇者の能力を持つキクタ、絶対にキョウを裏切らないキクタ、今は切れないねェ、残念。
「キョウの嘘つきぃ、俺が可愛いから嫉妬したんだろ!」
「え、そ、そっちなのかァ、んふふ」
「ふんだ、キクタのお姫様は俺なんだってさ、へへ、羨ましい?」
「キクタ自体どうでも良いから何とも思わないねェ」
口調が冷めてしまうのも鋭利な言葉を吐き出してしまうのも私にとっては当たり前の事なのにキョウは頬を引きつらせながら『そ、そうなんだ』と戸惑いの表情で頷く、何だか釈然としないなぁ、キクタ如きの事でキョウにこんな表情をさせるだなんて。
昔からあいつは物事を大袈裟に言う癖がある、それで期待してどれだけ裏切られた事か、最終的にはあの結末だ、キョウは忘れちゃってるからあんなに普通にキクタと話せるんだよ?私は無理だね、話したくも無いし視界に入れたくも無いよォ。
大好きな私と大好きなキクタが仲良く無いと理解したのか顔を蒼褪めさせて戸惑っているキョウ、はぁ、そんな事もわからないんだ、ダメな子、キョウが大好きな人がみんな仲良いわけ無いじゃん、夢見がちで愚かなもう一人の私、くすくす。
「な、仲良くしようよ」
「どぉして」
両手をグーにして力説するキョウが可愛くてついつい頷きそうになる、危ない危ない、キョウは私のその言葉に何も言えずに視線をさ迷わせる、理由を探しても見つからないよォ、だってキョウは私そのものなんだもんねェ、この心が変化しない事に気付いている。
キョウは流動的に変化するしなやかさがある、でも私は無い、だからこそ記憶を失わないし何も変わらない、それが私の役割なんだよォ?キョウは外の世界で色んな事を知って成長したよね、でも私は何一つ変わらない、キョウが大好きなもう一人の私、二人は対になっている。
男と女、俺と私、変わるモノと変わらないモノ、変化と停止、好きと嫌い、だからこそキョウの大好きな人達の事が大嫌い、憎いとすら思っている、レイ、キクタ、グロリア、それこそ死んじゃって一部になっちゃった奴らはどうでも良いよ?だってもうキョウの道具だもん。
「んふふ、お姫様って言われて少しキクタを意識し過ぎだよ、恥ずかしい」
「は、恥ずかしく無いもん、キョウはキクタに言って貰えないから嫉妬しているんだ」
「へえ」
「ひ」
睨むとすぐにオドオドした態度で部屋の隅に移動する、あいつに嫉妬しているよ?キョウにここまで想われて愛されてエルフライダーの能力まで与えられて嫉妬しないわけ無いよねェ、キョウの勘違いが許せなくて嬲るように睨む、全身を舐め回すように。
「嫉妬か、キョウはお猿さんだね」
「お、お猿」
「可愛くて少し足りないって事、どうして私がキクタに嫉妬しないと駄目なの?嫌だなぁ、気持ちが悪い」
「あ」
「それを私に言うキョウも気持ちが悪い」
「やぁ」
涙目になって怖がるキョウ、キクタめ、誰の女を口説いているのかわかっているのかなァ、んふふ、どうしようも無い程の嫉妬心がキョウを傷付ける言葉を吐き出させる、でも大丈夫、その傷口に塩をたっぷりと、ふふ。
どうせ最後に優しくしたら何時もの様に私を許してくれるもの。
「お猿さん、キクタが大好きなお猿さん、んふふ」
「ど、どおして虐めるの?」
フルフル震えるキョウの呟きがどうしようも無いものだったので頬を抓りながら笑う。
爪先を立てて、ふふ。
「それこそ嫉妬」
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