閑話142・『嘘つきグロリア、嘘つきキョウちゃん』
「絵本読んでェ」
幼く無垢になる半身を見て自分の罪深さに気付く……この世界にエルフなんていなかったら良いのにと毒づく、そうすればエルフライダーなんてふざけた種も生まれなかった。
きっとそれは過ち、ベッドの上でカラフルな装飾をされた絵本を持って微笑むキョウを見てそう思う、私は仕方が無いなぁと微笑んで手招きする、現実の世界ではグロリアに甘えてここでは私。
後キクタかな?キョウの特別は本当にわかりやすい、この汚れきった世界でこの子一人で生きていく事は不可能、認めたくないがグロリアがいてくれて良かった、あのままエルフライダーになって村に戻っていればどうなっていたか。
想像するだけで怖い、ベッドの上にキョウが飛び込んで来る、やんちゃだなぁと笑う、この世界で得た知識や情報は現実世界でも共有出来る、私の知識や知恵をキョウに与えるには都合の良い空間だよねェ。
「どんな絵本なのォ?」
「お、お姫様が王子様に恋をする本」
「………キョウには早くない?」
「は、早く無い、17歳だぞ」
言動と行動が17歳のモノとは思えないけどねェ、しかも村を出て既に季節は一周している、18歳だよね?そんな事もわからない色々と未発達なキョウ、それが私には愛しくて可愛くて仕方が無い。
太ももを叩いてやるとすぐに寄って来て頭を置く、小さな頭、とても軽い頭、なるほどぉ、頭が悪いわけだよねェと邪笑する、別に見下しているわけでもバカにしているわけでも無い、頭が悪くて性格の悪い奴の方が大嫌いだ。
グロリアのようにキクタのように呵々蚊のように、少し懐かしい名前を思い出して苦笑する、どいつもこいつも頭だけが良くて自分の欲望を満たすために私のキョウを利用する、私だけがキョウの為にキョウの笑顔の為にキョウの幸せの為に。
「キョウはお姫様が好きだねェ、んふふ、グロリアが冗談でそう呼ぶ時も喜んでいるものねェ」
「うぇ」
「どうしたァ?」
「あ、あれ、冗談なのか………あ、あはは、勿論知ってたぜ」
「んー、もしかしてグロリアが冗談では無く本気でお姫様だと思ってると勘違いしてたァ?そんな恥ずかしい間違いするわけ無いよねェ」
「うう」
項垂れるように太ももに顔を寄せて表情を隠すキョウ、んふふ、グロリアは本気でキョウの事をお姫様だと思ってるよォ、初めて出来た彼女に対してグロリアは溺愛しつつ崇拝しつつ頭の中がお花畑に突入している。
だけどそれをキョウに教える事はしなーい、あいつの好感度を稼ぐ道具に成り下がるつもりは無いが同じ道具でもあいつの好感度を下げる為の道具に成り上がるつもりはあるよォ、癖ッ毛の髪を優しく撫でてやりながら教育する。
「農民生まれのキョウがお姫様なわけ無いよねェ」
「う、うん、わ、わかるよォ」
「本当にわかっている?他の人に聞かれたら恥ずかしいんだからねェ」
「………ん」
猫のように丸まって私の言葉を聞き入れるキョウ、こうやって教育して上げる、んふふふ、ごめんね、大好きだから愛してるから傷付けたい時もある、特にグロリアの色に染まったキョウを私の色に戻したくなる。
だって俺は私で私は俺、二人の色は本来なら同じはずなのにグロリアのせいでそこに差異が出る、だったら強制的にキョウを私の色に戻してあげる、だってそれが本来の色なのだから、今の色が間違えなのだから、んふふ。
「グロリアはそうやってからかってキョウで遊んでいるだけどよ?」
「そーゆー所あるなぁ」
「教えて上げるねェ、グロリアが嘘つきな時は全部私が教えて上げる」
「グロリアは嘘つきなの?」
「ええ、嘘つきだよォ」
「ふーん、嘘つきのグロリアも好き」
キャキャと言いながら笑うキョウの言葉に何も言えずに絵本を取り出す、愛され上手め、そうやって何人の女を魅了した?キョウは無垢で純粋なのだからもっと、もっと大事にしなさいよ。
「もし、私が嘘つきだったらァ?」
「大好き」
絵本を読んで上げる。
ありがとう。
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