第183話・『グロリアは照れると逃げる動物』
十字架の集団の手掛かりを得る為に街を探索しようとしたらグロリアに止められる、それなら一緒に例の魔法武器専門店に行こうと誘われたので頷く。
グロリアが何時もの修道服に着替えたので俺もそうしようとしたら止められた、おへそ丸出しの格好は中々にキツイぜ、説得しようと試みたが口先で丸め込まれた。
仕方なくグロリアの買ってくれた服で外に出る事になった、宿を出るとお日様が張り切っていて中々に蒸し暑い、おへそ丸出しもたまには良いものかと自分を無理矢理納得させる。
「意外に近くだったんだな、キョウもグロリアも地理を把握するの早過ぎ」
「そうですか?一度見れば大体覚えるものですよ」
「へ、へえ、そ、そうなんだ、ま、まあ、お、俺もそうだけどォ、当たり前だけど」
「ですね、流石キョウさん」
「う、うん」
この街の地図は何度も見たしグロリアより外出しているはずだけどまったく覚えて無いぜ!ま、まあ、エルフライダーの能力を暴走させて一度記憶がリセットされたからなっ!覚えていないのは仕方の無い事なんだぜ?
目の前にあるモノが武器屋だとは素直に思えない、身廊のヴォールトの高さは遥か見上げる程で豪華絢爛な装飾がされている、さ、流石は冒険者ギルドと提携しているだけあって有り余る予算を感じさせてくれる。
ゴシック建築で構成された建物は一般人が何気無しに入るにはやや難易度が高い、しかしグロリアが堂々と風を切って入ってゆく様を見て俺も覚悟を決める、べ、別にここで買い物をするわけでは無いし!大丈夫だし!
一般的な内部空間の立面を上中下と正しく区切る分節は止めて装飾に対する嗜好性が高まったようなデザイン、二人のシスターの来訪を店員も客も唖然と見守っている、客の多くの冒険者は身なりが良くかなりの手練れだと一目でわかる。
想像の中のゴシック建築のモノより細部に対する技巧的な洗練さが数倍も上だ、しかし今回は建物を見に来たわけでは無い、グロリアの後ろを続いて歩く、好奇の視線に晒されながらもグロリアと一緒なら怖く無い。
「うわぁ、シスターだよ」
「シスターってチートな武器がルークルットから支給されんだろ?何も苦労しないでそんな剣を貰って本当にお得だよな」
「でもさ、もう一人の子が持っている剣って普通の量産品じゃん」
「きっと出来損ないのシスターには剣が支給されないんだよ、可哀想に」
「前を歩いているシスターの方が毅然としているしな、後ろの娘は何処か天然っぽいし、無茶苦茶可愛いけど」
余計なお世話だぜ、グロリアの腰に差した聖剣はかつて魔王を倒した勇者の聖剣を極限まで分析して簡易量産したもので、世界各地に存在する『伝説の武器』に次ぐ強力な代物だ。
皆が憧れるようにグロリアの剣を見詰めている、美しい剣だ、貴金属を散りばめられていて天使の細工が印象的だ、鞘の先、鐺(こじり)は何で出来ているかわからない、不思議な材質だ。
見ていると引き込まれそうな怪しい光沢を帯びている、それに引き換え俺のファルシオンは鈍い刀身が血と錆で塗れている、でも俺にはこいつがお似合いだ、だ、大好きなグロリアが買ってくれたんだから。
「キョウさん、欲しい武器があれば買って上げますよ?ファルシオンもそろそろ―――――――」
「や、やぁ」
「あ、そ、そんなに涙目にならなくても……ファルシオンも羽化が近いですね」
「ん、グロリアこの子捨てようとした、もう知らない」
「き、キョウさん」
「グロリアが初めて買ってくれた大事な子だもんっ、捨て無いもん!……ぐ、グロリア?」
「い、いいえ、な、何でも無いです」
両手で顔を覆い隠してプルプルと震えるグロリア、何だか顔が赤いような気がするけどどうしたんだろ?ファルシオンが喜ぶように震える、カタカタ、そうそう、お前はこれからも俺の傍で俺の邪魔をする奴をぶっ殺すんだぞ?
柄の部分を撫でてやると歓喜で震える、例え量産品だとしても例え日用品として草刈り等で使われていようと俺にとってはこいつが一番だ、いやいや、お前と色んな敵をぶっ殺したよなぁ、色んなロリをぶった斬ったよなぁ、うふふ。
履き口に折り返しのある個性的なキャバリエブーツを鳴らしながら足早になるグロリア、おーい。
「グロリア、どーしたー?」
「な、何でも無いったら何でも無いので」
「顔が赤いぞ、赤くて可愛い、見せてー」
「だ、ダメです、ダメダメダメです、キャラじゃ無いんでっ!」
この武器屋が無駄に広くて良かった、全力疾走するグロリアの速度に周囲の人間が唖然とする、その恐ろしいまでの脚力、魅惑の太もも、だけど俺にもシスターや魔物や神の眷属の細胞がある、そして魅惑の太もももある。
全力疾走望む所っ。
「キョウさんっ、赤面した私の顔を見ようだなんて趣味の悪いっ」
「世界一可愛い女の子の赤面した顔を見たくない奴が何処にいるよっ!」
「世界一可愛いのはキョウさんですっ!」
「だ、だったら俺の赤面した顔をグロリアは見たいのかっ!?そんな馬鹿なっ!」
「キョウさん良く照れるからからかうと見放題ですっ!」
「んなぁ!?」
全力疾走しながら走る俺の肩を誰かが叩いたような気がする、き、気のせいだよな?足を止める、グロリアも即座に停止する、ん?
「にゅふふ、お嬢ちゃん達、珍しい剣を持ってるナー」
ガキの声、何故だろう、少し懐かしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます