第181話・『お母さんの説教はちゃんと聞くように』
苔人間にしたら情報を聞き出せないのは当たり前だよな、だって脳味噌に苔が生えたんだもの、ツツミノクサカの能力は尋常では無く、苔が枯れて消えるのを見詰めている。
勿論人間も消える、人型だった苔人間も同様に消える、強すぎる能力も考えものだな、これでは情報を引き出せない、落ちている十字架を拾って太陽の光に当てる、キラキラ輝いていてとても綺麗。
「ツツミノクサカが全員殺したせいで手掛かりがコレしか無い」
「ちょっと、それよりもお礼が先でしょう?礼儀はちゃんとする、人間関係を円滑にする為に必要な事よ」
「ありがとう」
「そう、ちゃんとお礼を言える子の方が好きだわ、流石はアタシの最高傑作」
「これだけで最高傑作扱いされるのは納得出来ねぇ」
「きっと作り手が良いのね」
「結局は自分の手柄かよ、このロリ臭い創造主めェ」
「童貞臭い貴方よりマシよ」
「―――――――――――――匂いでわかるものなのか?」
「はぁ、おバカ」
少し不安になって問い掛けたら大きく溜息を吐き出して何故か頭を抱えるツツミノクサカ、ええい、ちゃんと答えないと食べちゃうぞ、じゅるり、しかしこいつは何時見ても美味しそうだぜ、何時見ても解体したい、創造主を解体して肉の繊維を確かめたい。
まだ風化していない苔人間の頭部を蹴りながら俺は笑う、卑しい視線を感じたのがギロリと俺を睨むツツミノクサカ、薄い桜の花の色を連想させる色合いの瞳が鋭利な視線で俺を突き刺す、えっと、何か悪い事したっけ?近寄って首を傾げる、可愛いだろ?
「近くに来なさい」
「はーい」
「このおバカ!」
頭を叩かれる、これ以上おバカになったら誰が責任をっ!?思った以上の痛みに膝を折ってぷるぷる震える、お、俺が具現化してやったのにどうしてこんな目に合わないと駄目なんだ?あまりの理不尽さにツツミノクサカを睨む、やって良い事と悪い事があるぞっ!
「貴方、一人で危ない事をし過ぎよ、危険があるとわかっているならあのシスターと協力しなさい」
「お前の最高傑作を信じろ、わはは、負けんぞー!」
「別にそこは関係無いからね、そんな事よりも誰かに頼らない事が当たり前になる事の方が恐ろしいのよ、力の有無は関係無く、わかる?」
「う」
「貴方は確かに強いわよ、アタシが生みの親の一人であるのだから当然、でも作品としてでは無く親としての忠告」
「うぅううう」
「わかる?」
「は、はいぃいい」
服を掴まれて顔を寄せられる、怒っている、いや、叱っている、こんな事なら他の一部を具現化すれば良かったぜ、灰色狐を召喚しても良かった!俺を甘やかしまくる灰色狐ならこんな事にはならなかったぜ!
同じ母親でもこうも違うのか?い、犬の癖に、に、鶏の癖に、は、母親の癖にぃ、睨まれると抵抗出来無くなる、叱られるとその言葉を黙って受け入れたくなる、こ、これはヤバい、きっとこいつが創造主だからだ。
「し、叱られるのは嫌いだぁ」
「そうね、あのシスターも一部の皆も基本的には貴方を叱らないものね」
「お、おれが、本体だしぃ」
「それで?」
「つ、ツツミノクサカは一部だし」
「へえ、そうやって権力を振りかざして女の子を口止めするのがキョウの理想の男の子なんだ」
「うぐぅ」
「どうなの?」
拾った十字架を手でグルグルと回しながら項垂れる俺、母親として創造主として製作者として愛のある説教、邪険に出来無いのはわかっている。
本体である俺にここまで堂々と振舞えるとはっ!しかし言っている事は確かに正論だ、グロリアが仕事で忙しい事を理由にして頼る事をしなかった、俺が最も頼るべき人物に相談しなかった。
グロリアの情報網は半端じゃ無い、本人の頭脳もずば抜けている、状況を伝えたらすぐに良い回答を出してくれる、それが自分の成長を阻害するように感じる事もあるが状況が状況だ、お、襲われたしなァ。
「ぐ、グロリアに相談する、それで良いか?」
「その前に言う事があるでしょう」
「ご、ごめんなさいぃ」
「よろしい、まったく、あまり自分の力を過信するんじゃないわよ?」
今度は頭を撫でられた、叩かれたり撫でられたり何だか忙しないぜ。
でも悪い気はしなかった。
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