閑話132・『性キョウ育』
椅子に座ったキョウが欠伸を噛み殺しているのを見てこめかみを押さえる、青空の下で授業、ぴーひょろろ、何とも言えない声で鳥が鳴きながら回っている。
まさかキョウに勉強を教える事になろうとはねっ!本人はべたーと机に上半身を預けて非常に眠そうだ、こ、この子ったら何たる態度っ、私の気持ちも知らないでっ!
「性教育です、んふふ、そろそろちゃんと教育しとかないと酷い事になりそうだからねェ」
「キョウの口からエロワードが大量に飛び出るのかっ、ふぁ、楽しみはそんだけか」
「えい」
「イテェっ!?教科書で頭を叩くなんて教育者としてどうなんだぜ?俺の素敵な脳味噌に支障があったらどうする」
「寝たきりになっても一生面倒見るよォ」
「お、思ったより愛情が大きくて狼狽えるぜ」
キョウは純粋だ、エルフライダーとして様々な人間性を欠落させて来たが根の根の部分は純朴な少年、向けられる好意には素直に喜ぶし向けられる敵意には素直に敵意で返す。
だからこそグロリアのような人間を下位の存在として捉えている少女に愛されたのだ、出会いは必然だったと言っても良い、だけどそのせいで大きく歪んでしまっているものがある。
向けられる愛情や好意には喜びで行動する、つまりはどのような事をされても笑って受け入れてしまう、この人は自分の事が好きなんだから少々の事は別に良いやと流してしまうのだ。
欲望や悪意に敏感なのが唯一の救いだがこのままで一夜限りの関係なら良いかと行きずりの男に引っかかる可能性もゼロでは無い、多くの一部がちゃんと教育しろと叫んでいる、わ、私だよねェ。
炎水やクロリアだと最終的にキョウに甘いのでちゃんと叱る事が出来無い、影不意が唯一ちゃんとキョウを叱れる?後は手奇異(てきい)とユルラゥぐらいかな?初期に取り込んだ一部は人間性が大きく歪んでいないからね。
ここ最近取り込んだ一部はキョウの圧倒的なエルフライダーの能力で歪められた狂信者の一部ばかりだ、キョウに意見するって思考がまず無いよね、さてさて、キョウに向かい合って指を立てながら教育を始める。
「キョウは少し性に奔放過ぎるよォ、グロリアに嫌われちゃうよ」
「んー、キョウにも?」
「え、わ、私ィ?ど、どうだろう、私はキョウを嫌いになる事なんてあり得ないよねェ」
「グロリアが嫌いになってもキョウが俺を好きならプラスマイナスでゼロ、んふふ、キョウは俺を好き」
「ちょ、ちょっとォ、どーゆー思考回路してたらそうなるのォ?はぁ」
「キョウが俺を好きでいてくれる限りグロリアがまた俺を好きになるように頑張れる」
にこぉ、これだ、この無邪気な性格が危ういのだ、男としての尊厳や人間性を失ってしまったせいで男性に対する憧れが大きい、なので少し優しくされるとすぐに体を許してしまう。
自分がどれだけ男性にとって魅惑的な存在か自覚しているのだろうか?いいや、自覚していたらそもそもこんな教育をする必要は無い、頭を抱える私を不思議そうに覗き込むキョウ。
「き、キョウ、この前さ、警備兵の男の子にお尻を触らせてあげても良いかな?って思ったでしょう」
「うん」
「だ、ダメだよォ、キョウの彼女はグロリアなのにそんな事をしたらグロリアが傷付くよォ」
「でもグロリアだって同僚や部下のシスター抱いてるじゃん」
「ぐえ」
あ、あの女っっっ、そもそもこんなに可愛い彼女がいるのに同僚や部下に手を出すなんてどんだけ非常識なのォ、だけどそれはキョウと出会う前の話だってわかっている、けどそこを突かれると何も言い返せない。
キラキラした無邪気な瞳が私を見ている、どんな答えが返ってくるのか楽しみにしている瞳、私と同じ瞳のはずなのにどうしてここまで邪気が無いんだろう、あまりに澄んでいて目を背けたくなる、申し訳ない気持ちになる。
こ、困ったよォ。
「そ、それは、グロリアにとってその人達は大事じゃ無いんだよォ、大事じゃ無い人で性欲と支配欲だけを」
「じゃあ俺もそれ!グロリアやキョウや一部以外の存在なんてどうでも良いぜ、だからお尻触られても平気」
「うあぁあああ、グロリアのせいでキョウがどんどん性に奔放になるよォ」
「いいじゃんお尻ぐらい、減るもんじゃないし」
「え、えっと………キョウの体は私の体だしぃ、キョウは私が知らない男の人に触られても平気ぃ?」
「殺す」
即答、嬉しいやら悲しいやら良くわからない、しかし殺意が膨れ上がり目が笑っていない。
うぅう、情けない。
「じゃ、じゃあ、今度からはお尻を安売りしないでねェ」
「そ、そうだな……確かにこの体はキョウの体でもあるし………ん?だったら自分一人の時にケツを揉めばキョウのケツを揉んだ事になるのか?きゃっほー」
「ぶん殴るよ」
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