閑話131・『キョウちゃんはつおいのでキョウは凹む』
ファルシオンを互いに抜いて構える、湖畔の街は傷つけても再生する、街中で戦う事は経験になる、つまりこの精神世界での経験は得難いものになる。
キョウとの訓練は何時も負けっぱなしだ、俺は何時になったらグロリアやキョウを守れるカッコいい男になれるんだろうか?障害物の多い街中でファルシオンをどう使う?
だらりと腕を落としてファルシオンを引きずるような形で歩いて来るキョウ、何て事の無い動作、隙だらけだ、俺は煉瓦張りの地面を蹴飛ばして一気に接近する、肩に担いだファルシオンの重みを実感しながら急速接近。
「うぉおおおおおおおおおおお」
「ほいさ」
振り落としたファルシオンを軽々と避けるキョウ、地面に刀身が弾かれる力を利用してそのまま斜めに切り上げる、キョウはそれを垂れっ放しのファルシオンを僅かに動かすだけで防御する、甲高い音、そのまま軽やかにステップを踏みながら交代する。
ファルシオンは引きずったまま、振り上げる動作も降り下げる動作も無い、手首を僅かに動かして防御に使う、上からの攻撃はファルシオンを傘のようにして躱す、見た事の無い戦い方だ、あの巨大な剣を壁として傘として身代わりとして使っている。
「重量と反発力を使って戦うのも良いけどねェ、そんなに必死にならなくても雑魚相手だとこうやって立ち回れば良いんだよォ」
「俺が雑魚だと?……反論しねぇぜ、キョウの方が強いもんな、でも俺だって男の子だっ!女の子に守られるだけじゃカッコ悪いぜっ!」
「がんばれ、私の男の子」
「頑張るぜ、俺の女の子」
ファルシオンの刀身が鈍いからと言っても刀身が厚い為に全力で振り落とせば一撃で首を断ち切る威力がある、だけどその必殺の一撃も当たらないと意味が無い、接近を容易に許すのは俺の攻撃なんて当たらないよって挑発、図星なので何も言えない。
ファルシオンを棒術のように使って突きを行ってみたり柄の部分を使用して絡めようとしてみたり様々な工夫をするが全て軽々と看破される、地面に刃先を当てたままのファルシオンがこんなに厄介だなんて思わなかった、あれを軸に足技も繰り出してくるし恐ろしいぜ。
剣術の戦いのはずがそもそも剣術をしてくれないのでこんなに苦戦している、剣術での争いならば先端部分でイニシアチブを奪い合うのだがそもそも刀身と刀身が交わる事が稀だ、店先に並べられた商品をファルシオで弾丸のように飛ばして様子を見る。
「ファルシオン大きいから私の小さな体を覆えるよねェ、んふふ」
ファルシオンでそれらを防御し終えると先程と同じように刀身を引きずりながら近付いて来る、どうせこの世界では死ねないんだ、ヤケクソ気味になってファルシオンで切り裂こうと必死に腕を振るうが上半身を捻って避けるわファルシオンを軸にして攻撃を繰り出すわで相手にならない。
避けられた瞬間に肩を軸に円弧状に刃を振り上げる、キョウの毛先を僅かに切り裂いて振り上げたままの無防備な状態の俺の腹に容赦無く蹴りが繰り出される、呼吸も出来無いまま転がるようにして逃げる、舌を噛んでしまったようでヒリヒリするぜ、痛い。
しかし今の攻撃は良かったな、避けられた瞬間に体全体で動作するよりも肩や腕だけで刃を動かす方が対処し難いのか?しかしそれだと体重を付与出来無いし体全体の動きによる力の浸透も無くなってしまう、だけど普通の人間は刃が首に当たれば普通に死ぬしこれが正解か?
「そぉ、そぉ、避けられて追撃する時は僅かな動きで最大限の効果を発揮出来るように努力しないとねェ」
「でもそれだと必殺の一撃にならないぜ、うぅ、舌切ったぜ」
「相手によって力加減も変えないとね、人間相手だったら刃先が当たれば勝ちのようなのだから、逆に皮膚の厚い魔物には常に全力を心がける」
「む、難しいぜ」
「キョウはおバカで可愛いねェ」
「最近同じ事を言われたぜ!?」
「私の方が可愛いって思ってるもん」
「男として嬉しくねぇなっっ!畜生っっ」
「んふふ、さあ、おいで、可愛い娘ちゃん♪」
「な、なんかやだ」
ファルシオンを床に突き刺して座り込む、どうやら今の俺ではキョウを倒す事は無理らしい、悔しいけどその事実を認めて頬を膨らませる、同じキョウなのにここまで戦闘力に差があるなんて何だか悲しい、沢山修行して沢山食べてるのに女の子の自分に負けるだなんて。
今日なんかファルシオンを地面に引きずったままだしっ。
「もうやんない」
「あらら、拗ねても可愛いだけなのにねェ」
「ぶぅ」
「んふふ、よしよし、キョウだったらすぐに強くなるよ、だって私なんだもん」
頭を撫でられる、前回もだし、グロリアもキョウも俺の頭を撫でて誤魔化す事が多すぎる。
「そのうち、ぎゃふんと言わせてやる」
「はいはい」
キョウに勝つ為には何が必要だろうか?悩みは尽きないのだった。
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