第161話・『麒麟蹂躙崩壊再構成』

新しく開けた世界は歓喜に満ちていた、全ての穴から血が噴き出る、理屈はわからぬが毛穴からも噴き出るソレが全身を温かく包んでくれる。


天上にいた頃にも味わえなかった至福の快楽、自分が何処の誰でどのような使命を与えられていたのか、それすらも忘れて地面に額を擦り付ける。


満天の星の煌めきすらも月の青白く美しい光ですらもこのお方を染める事は決して叶わぬ、クスクスクス、童女のような声、鈴の音のような秋を告げる羽虫の音色のような心に自然と入り込んで来る声。


見上げる事すらも出来ない、許可を与えられていない、頭部の奥の方がジンジンとして忠誠を促し愛情を促進させ快楽を増幅させる、この穢れた身は全てこのお方の為に捧げなければならない、そう決まっている。


誰が決めたのか?我の神だ……神は愚かな我の脳味噌を正しい形にへと導いてくれた、それはそれは楽しかったと笑顔で教えてくれた、自分の脳味噌を蹂躙するお話はとても耳心地が良くまるで絵物語のようだ。


「麒麟ちゅわん」


「はっ」


「顔を上げていいよ、お前の主がどれだけ美しい生き物か再確認してごらん、きっと嬉しくなるから」


「御意」


見上げる、ああ、やはり自然物ではこの人の美しさを凌駕する事など出来ない、真っ白い服に包まれた少女が世界を拒絶するように闇夜に浮かび上がっている……その美しさは天上でも見た事が無い程の輝きを放ちながら卑しい下僕を圧倒する。


忠誠心は肥大化する、自分はこのような美しい人の一部となりこれからの生を全うするのだ、二人の神の魂の資質を受け継いだこのお方は人間を従属させ屈服させ支配するお姿がとてもとても良く似合っている、吐息が漏れる、眩暈がする、股を擦る。


疼いて疼いて仕方が無い、脳味噌と股間が直接繋がってしまったかのような違和感、人間としての形態などまやかしに過ぎないはずなのに人としての生理的な反応に戸惑いを覚えてしまう、素晴らしい、素晴らしいぞ、この人の道具に成り得たのだ。


夜空を彩る星の煌めきもこのお方の銀色の髪の輝きの前には無力、淡く輝き世界を照らし出す月の光もこのお方の金色の髪の麗しさに比べたら無力、少し癖のある短いソレがとても愛らしくとても可愛らしく言葉では言い表せない、自分の言葉ではまったく足りぬ。


「あぁあ」


「アホ面晒してるんじゃないぜ、主が褒めて欲しいのにソレすらも出来ない無能なのか?やはり獣は獣か」


「も、申し訳ございません、ご主人様の美貌の前に卑しい自分の矮小さに絶望していました」


「何で?そんな糞見たいなお前でも俺の一部なんだぞ、ふふ、おいで」


「う、嬉しいです、あ、い、おいで、とは?お、仰る通りです、わ、我は獣であるが故にご主人様のお言葉を―――」


「抱っこしちゃる」


「え、あ、お、お体が穢れてしまいますっっ、獣の臭いがっ」


「んふふ、これ、俺のぉ」


腕を引っ張られて無理矢理抱き締められる、我の汚い血液がご主人様の体を汚してしまう、穢れ、ああ、それなのに幸福に包まれる我が身は本当にどうしようも無い畜生だ、自分では聖獣だと思っていたが血を這い回るドブネズミよりも汚らしい生き物、それが我だ。


頬を両手で掴まれて瞳を覗き込まれる、左右の違う色合いの瞳、長い睫毛と綺麗に整った眉毛に恐ろしい程に整った顔、一切の無駄が無く全てが完璧に配置されているソレは神の所業だ、爛々と輝く瞳は何処までも力強く雄々しい、支配者の瞳、下僕を値踏みしている。


「ぁぁ、わ、われを、われでおたのしみくださいまぜ」


「頬っぺた柔らかい、ふふ、血の味がする、それ、俺の細胞を活性化させて治してやろう」


「ぎぃえあああああああああああああああ」


頭部が一瞬肥大化する、脳味噌が頭蓋骨を粉砕して毛髪が飛び散る、そして収束、僅か数秒の事だがあの世が見える、そして毛穴から噴出する血も全てが止まる、このお方の細胞にすり替わった脳味噌は我の支配者だ、我は全身を震わせながらその事実を再確認する。


この体で遊ばれている様子は妹君に良く似ている、以前の主を愛で狂わせ堕落させた幼神、そのお方の血を継いでいるだけはある、人間として生れ落ちようがその純度は保たれたままだ、蒼褪めさせた我の頬を白い歯で甘噛みしながら顔を寄せる、甘い匂い、鼻孔を擽る。


「あ、ありがとうございます、血を―――」


「いいよ、お前は俺なんだから、治してやるのは当然だろう、なあなあ、俺がご主人様で良かった?」


「し、幸せです、ご主人様のような美しく聡明な主にこの身を捧げられる事が」


「可愛い事を言う、キスしてやる」


「ん」


舌が躍る、小さくて短い我の舌を屈服させるように何度も舌で虐めて下さる、二人の唇の間に唾液の泡が溢れやがて透明になったソレが首筋を通って胸を濡らす、我は初めての事で粗相の無いように必死で努めるが瞳を閉じてしまう。


その瞼をこじ開けるようにして舌を差し込んで来る、瞳が唾液で濡れて鼻の穴も蹂躙されて呼吸がままならない、瞳を開けて懇願するが無表情で我をジーッと見詰めている、ぞくり、観察されている、我がこれだけ自分を見失って悶えているのにこのお方は何も感じていない。


「今度からはお前が俺をエスコートするんだぞ?キスはお前からしろ」


「そ、そのような」


「しろ、ふふ、何時だってしていいからな、俺にムラムラしたら」


「あん」


お尻を嬲るように手で触られる、もう何が何なのかわからない、一つだけわかる事があるならば我はこの人を喜ばせる為なら何だってやる、そのような生き物に仕上げてくれた、至高の喜び。


「それとも、俺じゃあ、ムラムラしないか?魅力無いかな?」


「ぁぁ」


柔らかく笑うその姿に胸の中で愛しさが弾けて口付けをする、ご主人様は黙ってそれを受け入れてくれた。

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