閑話124・『キョウママがキョウに強請られると容易く折れる、つまようじ並』

「あほんだらー!」


叱られた、怒られた、キョウの左右の違う色合いの瞳が俺を睨んでいる、キクタと会うのは楽しい、キクタと喋るのは楽しい、キクタをからかうのは楽しい、キクタを一部にしたい。


だからキョウの許可を得る為に良いかと問い掛けたら頬っぺたを叩かれた、ぺち、痛く無い……しかしフルフルと震えながら涙を流しながら睨まれると流石に心が痛む、湖畔の街は今日も静かに俺達を見守っている。


街の真ん中には噴水がある、申し訳程度のソレに虹が浮かび上がる、綺麗だなーと見詰めながら現実逃避、俺が何か言うまで自分は反応しないと決めているのかキョウは何も言わずに俺を睨んでいる、えー、ダメなの?


「キクタを取り込みたいんだ、協力しろ」


「こ、この子は………おバカ、これ以上キクタを強化したら使徒でも勝てないかもなのにぃ」


「協力してくれるか?わはは、よぉし、次に会ったら食ってやるぞー、キクタはどんな味かなー?」


「き、キョウ落ち着いて、ヤバいから、それしたらヤバいから」


「?キョウは何時だって俺の味方だろ、サンキュー」


「あぁぁあ、、無垢な視線が辛いっっ、そ、その期待を裏切ら無いと駄目なのがもっとキツイよぉ」


違う色合いの瞳が細められる、瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、何となく慣れ親しんだ感じがあるが違和感も同時に存在する、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている。


キョウの瞳を見詰めながら思う、どうして同じ色じゃ無いんだろうか?むぅ、今更に疑問だぜ。


「キョウ!質問があります」


「うええぇ、お、おバカな子の質問は聞くに堪えないよォ」


じりり、後退しようとするキョウ、安心しろ、後ろは壁だっ、ゆっくりと近付く、しかしキクタを取り込む事をどうしてそんなにも反対するんだろうか??基本的にキョウが俺の望みを否定する事は無い、だって俺は私で私は俺だもんな、二人の願いは共通だ。


あんなに可愛くて面白いキクタを一部にしなくてどうするよ?それにあいつと話していると気分が休まる、心が落ち着く、何だか実家にいるような気持ちになる、どうしてだろう、あいつが他の男と話していたら殺してしまうかもしれん、グロリアへの想いとはまた違う。


嫉妬でも無いしなぁ、近いようだが違う、あいつは誰にも渡さないって気持ちだけが次々と胸の内から湧いて来る、まるで俺では無い誰かの感情がそのまま伝染したかのような奇妙な感覚、少しだけ気持ち悪い、そして受け入れ難い、だけど否定する事は出来ない、大好きって気持ちだけが残る。


「どうしてキクタを取り込むのは駄目なんだ?あいつエルフだぜ、エルフを取り込めって良く俺に説教するじゃん」


「そ、それはそうだけどぉ」


「キョウの言っている事はおかしい、俺が正しい!」


「き、キクタが魅力的なのは認めるよ、純粋なエルフだし綺麗だしキョウの事を世界で一番大切に想ってくれているし」


「じゃあ良いじゃん」


「き、キクタめ、こうやって並べてみるとまったく隙の無いスペックで腹立つよォ、ひ、否定材料がぁ」


「キョウが俺に逆らうなんて傷付くぜ、くすん」


「う、嘘泣きなのに反応しちゃう自分が疎ましいよォ、き、キョウ、大丈夫?」


「うん、キクタを取り込まないと涙が止まら無い」


胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、それを震わせながらキョウが項垂れる、俺の可愛いお願いの前に屈服するが良いわ。


「なあなあ、ちゃんと飼うから、キクタにちゃんと餌もやるからぁー、えへへ、同族のエルフを食わせてやるんだ」


「あの娘なら同族だるが何だろうがキョウが与えたら美味しく食べちゃうと思うけどねェ」


「好き嫌いが無い!つまりは飼いやすいっ!」


「こ、肯定材料を与えてしまったぁ……ひ、否定しなきゃ、あっ!キクタはキョウの弟と仲が悪いよっ!」


「俺に弟はいねぇぞ」


「そ、そうだよね、あはははは………い、胃が痛い」


「ペットはストレスにも良いらしいぜ?」


青白い顔をしたキョウがおろろろと吐瀉をしたので話は中断された、どうしてだろうか?どうしてそこまでキクタを取り込むのを反対するんだろう。


おかしいぜ。

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