閑話114・『めんたまあめだまおいしいな』

グロリアと同じ部屋で過ごすのは気楽だ、しかし俺が一部と触れ合う事を大事にしているのがわかっているのか時々部屋を別々にする、少し寂しいがエルフライダーとしてしっかりやりなさいって意味だろ。


今日はその日のわけだが困った、どの一部と触れ合おうか?流石に一部も増えて来たので全員に平等に接するのはかなり苦労する、ふぅ、一人も良いかな?罪悪感を胸にベッドの上に転がる、柔らかい、太陽の匂い。


高級な宿ってわけでは無いが掃除は行き届いているし女将の表情も明るい、これは当たりだなと微笑む、川が近いので夜は魚料理がメインのようだ、グロリアは食いしん坊なので必ず献立を聞く、恥ずかしがらずに聞く。


爛々としたあの瞳を思い出して苦笑する、どれだけお腹が空いているんだ、クロリアも大食いだがその影響は少ない、他に多くの一部がいるせいだろうか?自分自身の体の事をまったく理解していない俺、苦笑する。


晩飯までまだまだ時間があるしどうしようか?グロリアはシスターとしての仕事として書類整理や色々とやる事がある、しかし俺には無い、土を弄るのが趣味だが流石に人様の庭に手を出すわけには行かない、誰か出すか?


「ササ」


一番都合の良い一部の名を呟く、ササと炎水は良い勝負だな、忠誠心が並外れて高く多くの知識を持っている、つまりは俺に甘くてバカな俺を楽しませる話術に長けている、自分自身の程度の低さにやや呆れるが仕方が無い。


生まれが生まれだしなっ!窓から穏やかな日差しが差し込む、オレンジ色のソレは幼い日の記憶を呼び覚ます、こんな時間になっても木刀を振るって鍛錬したっけ、ドラゴンライダーになる為に様々なモノを犠牲にしたのにエルフライダーとはな。


ズキン、疼く、取り敢えず、脇腹に何かが疼く、それはササの細胞が集まって形を成している証拠、俺に負担を掛けないようにゆっくりと再生している、ここまで俺に優しくするかね?戦闘中だったら皮膚を破ってでも具現化してくれないと困るぜ?


痛みは嫌いでは無い、そりゃ戦いで負わされる傷は痛い、しかし俺自身の一部が具現化する際の痛みは出産と同じで幸福感を味わえる、俺は一部の皆を愛している、それが俺自身のモノなのかエルフライダーの生態によるものなのかは判断できないぜ。


冷静に考えたら腕や足が強制的にもう一本生えるのと同じだ、そこに嫌悪感や違和感を感じたら日常生活を過ごせない、故に一部が増えても愛するようになっているのだと思う、生物学的な観点から見るとあんまりな愛情だが人間の親子だってそうだろ?


「しゅっさーん、よぉ、ササ」


「ケホッ」


「粘液が口内に入ったか?オラ、出してやる」


肉が肥大化してズルルルルと外部へと吐き出される、巨大なヒルのような肉塊が蠢く度に少しずつ形を成してゆく、そしてササの形になるのだがその工程は中々にグロい、ふふ、しかし俺自身の肉だしそれがどのような過程で人型になろうが知った事では無い。


粘液は乾燥してやがて瘡蓋(かさぶた)のようにバリバリと剥がれる、その音は耳に嬉しい、何だか耳心地が良いのだ、ベッドの上で丸まっているササの口内に指を突っ込んで吐き出させる、俺の痛みなんか気にしないで完全に人型になってから羽化すれば良いのにおかしな子。


オレンジ色の日差しに照らされて粘液を吐き出してササは呆けた瞳で俺を見詰めている、何時まで経っても信者と神のような関係、何回こうやって具現化させても瞳に灯る意思に変化は無い、崇拝と狂信、天才的な錬金術師が農家の倅に向ける視線では無いわなぁ。


「おはよう、ササ」


「か、神様、おはようございます」


「もう夕方だぜ」


「…………甘んじて罰を受けます、両目を具現化して下さったのですね?抉りますか?」


「抉る」


阿鼻叫喚、絶叫、結界を展開しないと誰かが駆け付けるな、俺とササの関係を端的に表す愛に満ちた交流についつい頬を緩めてしまう、暴れないようにしながらも生理的な反応で四肢をジタバタとさせるササは見ていて楽しい、これこそまさに暇潰しだ?


何度も再生させて何度も抉ると抉るのが上手になるんだ、しかしササは抉られるのが上手にならないなぁ、天才錬金術師なのに少し覚えが悪いんじゃないか?クスクスクス、ぎゃあぎゃあぎゃあ、女性らしく無い悲鳴はまるで鴉の鳴き声のようだ、ふふ、品の無い。


何時まで続けるのか教えてやったら安心するだろ?数秒後に終わるのか数時間後に終わるのかわからないから恐怖って奴は便利なのだ、しかし俺自身の中でルールは決めている、失禁するまでするのはルール、水分が足りていないのか失禁しないので何度も抉る事になってしまう。


「か、かみざ」


「呼び捨てにしてよ、カップルのように、甘く言って」


「きょうざま」


「まだ喋れるんだよなぁ、だから抉るぞ、ふふ、はは、ひひ」


「きょう、ざま、ざま、おしたい」


お慕いしているだと?そんな事はわかっているし別に聞きたい言葉でも無い、ジタバタと暴れる四肢を固定して股を観察する、ぜんぜぇん駄目ー、ダメダメー、しかし晩飯までの暇潰しにはなるな、抉った眼球が小さな山を作っている、幾らでも再生させるぞ?


それを口内に放り込んだ飴玉のように転がす、何だあ、血の味がする飴玉じゃないか、これはこれで商品になるんじゃないかと閃くが傷むのがなぁ、断念する、しかし食べ物を粗末にするのもアレなのでその眼球をモグモグと食べる、何だか肌がプルプルになりそうだ。


人間の眼球は美味いな、動物の眼球を味わった事が無いので他と比較出来ないのが少し残念だ、人間ばっかりで無く動物も食べないとなぁ、しかし美味しい動物ランキングだと人間が一番だ、次が猪かな?鹿は少しなぁ、エルフライダーとしての感想だぜ?


「愛を囁いて♪晩飯までグロリアに会えないんだ」


「あ、う――――」


「お仕事なんだってさ、寂しいからグロリアの代わりに愛を囁いてよ、お前如きがグロリアの代わりになれるんだから幸せだろ?」


「し、あわせ、すき、あいし、て」


「ふふ、可愛いササ、俺のササだもんな」


少女の形は蹂躙する材料としては最高だ、しかし瞳にだけ集中してソレをするのは中々に興奮するなあ、瞳から流れる血が開きっぱなしの口内に流れ込んでいるのを見て水分補給はこれで十分だなと確認する、オレンジ色の日差しがより赤い血に染められる。


ササは何度も何度も俺を褒め讃え愛を囁く、それによって精神は充実し気分は高揚する、ありがとうササ、もういいや。


「ほら、回復してやる、潰れた喉もな、軽く絞めただけで潰れるんだもん、俺は悪く無い」


「―――そう、です、悪いのはササです、申し訳ございません」


「そう、悪いのは何時もササ」


「正しいのは何時も神様……キョウ様、キョウ」


「おっ、呼び捨てにしたな、このこの」


「あう」


くしゃくしゃと頭を撫でてやる、よし、晩飯だ!


少しお腹一杯だがな!

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