第142話・『キョウちゃんお嫁さん計画、旦那はキョウ』

ゴーレムの巨体が圧倒的なスケールで俺を威嚇する、洗練された形をしている、よっぽど腕の良い術者なのだろうが何者だろうか?


迫り来る腕を軽々と避けて宙を舞う、一体だけでは無いらしく地面が振動する度に数が増える、無造作に増えてゆく様は中々に圧巻だ、顎に手を当てて頷く、面白いな。


迫り来る拳を片手で弾く、それだけで相手の拳に細かい罅が広がり破片が舞う、瞬きをしながら高らかに笑う、この拳よりも目に破片が入る事を恐れた、自分自身が人間で無くなっていると改めて実感する。


ゴーレムは狼狽える事無く罅の入った拳を再度叩き込む、空気が震えて轟音が響き渡る、無色器官でソレを弾いたついでに妖精の力でゴーレムに干渉する、こいつは元々は無機物だ、自然物だ、妖精の力で逆に支配出来るか?


しかし目論見は外れて強制的に支配を弾かれる、おぉ、この術者割と凄いな、恐らく人間だろうが餌になる素質はありそうだ、シスターの前座として食べるか?前座では無く前菜か?ふふん、増え続けるゴーレムが虫のように飛び回る俺に集まる。


取り囲まれても何も怖く無い、村を出てすぐだったら死んでるよなあ?クスクスクス、俺の笑い方もすっかり女の子になっちゃったな、俺って男だっけ女だっけと急に不安になる、ふふふ、どっちでも良いか、グロリアが愛してくれるならキョウが護ってくれるならさ。


「どっちでもいいぜ」


『キョウったらおバカさん、男の子じゃないとグロリアと赤ちゃん作れないよ?』


「そうだったぜ、幸せ家族計画には股のモノがいるんだぜ、それにお前とも赤ちゃん欲しいし」


『ど、どうしてそれをぉ』


「肉体を欲してるんだろ?体が出来たら赤ちゃん作れるじゃねぇか、でもお前を俺から分離させるのはやっぱり嫌だな」


『んふふ、キョウは私、俺はキョウ、キョウはキョウ、大丈夫だよぉ、他の一部と同じように何時もは一緒で良いんだからァ』


「そうか、でもお前は一部じゃなく俺そのものだから肉体の構築は出来ないぜ?それがお前の夢か」


『そう、キョウと愛し合う為に体が欲しい』


「………ふんっ」


『あ、照れてるっ!』


指摘されると辛い、無色器官でゴーレムを拘束しながら先を急ぐ、このまま握りつぶしても良いが術者が健在な限りまたすぐに復活しそうだ、しかし使徒の無色器官は炎水のものよりかなり広範囲に展開出来るな、繊細な操作は炎水の無色器官の方が良いかな?


ついつい笑ってしまう、これでは炎水が拗ねてしまうかな?拘束されたゴーレムを見詰めながらこれ以上の数は増やせないのだと確信する、全部で十体か?あれだけのゴーレムを十体も生み出せる時点で中々に優秀だ、そこに食材としての魅力を感じてしまう。


鼻歌をしながら宙を飛ぶ、ふはは、さらばー、空を飛べるのって楽しいよな、まだ操作が上手く出来ないがその内に慣れるだろうと溜息、しかしキョウが肉体を欲しがるとは何だか嬉しいような寂しいような、これはグロリアには内緒だな、必ず邪魔をされる。


「グロリアには内緒だな、全力で阻止するはずだぜ」


『嫉妬の形が醜いよね』


「の、ノーコメントだぜ、しかしゴーレム使いと決めつけて良いのかな?」


『良いと思うよォ、職業としては珍しい部類だねェ、魔物を操る職業は嫌われる傾向にあるからねェ』


「俺は体内に魔物を飼ってるぜ?」


『それ、人間に言わない方が良いよォ、石を投げられてもしらないよ?』


「全部叩き落としてやるぜ」


これ以上に化け物になるのだからその位の覚悟はしているぜ、グロリアの望みを叶えてやりたい、だけどそれ以上に大切な事をグロリアに教えてやりたいぜ、その為には力がいるし精神が歪ませない為に餌もいる、エルフの血肉と精神は実に良く馴染む。


使徒を吸収した事よりもこいつがエルフの細胞を持っていた方が大きいよな、細胞つーかエルフそのものだったし、使徒にも様々な種族がいるのだろうか?俺が生み出す使途やシスターはエルフになるのだろうか?色々と疑問が浮かび上がる。


そもそもエルフライダーなんだから生み出す存在は全てエルフになるよな?実戦したのは一度だけだし複製に過ぎなかった、複製では無くエルフライダーの能力だけで誕生させたら一体それは何になるのだろうか、疑問は次々に出て来るぜ。


「おっ、シスターの気配がしたな」


『キョウは私より気配を探るのは上手だねェ、食いしん坊だからかなァ』


「言われてみればそうかもなっ!成長期だからどんどん食べて大きくなるぜ」


『おチチも大きくなってるからグロリアに狙われ無いように気を付けようね』


「だ、ダイエットも良いかもなァ」


『んふふ、自分に無いものを強請っているのかもねェ、ひんにゅーだし』


「ひ、品がある乳と言え」


グロリアのいない所でどうしてフォローしないと駄目なんだぜ?!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る