閑話112・『ロリ母親を教育する鬼畜息子の鏡だ』

裏切りをさせるのが大好きだ、どうしてだろう、大切な人間を切り捨ててまで得るモノがあるからか?いや、するのでは無くてさせるのだからまた話が違うな。


レクルタンに魔物を殺させながら進軍するのは少し飽きたな、それに約束の待ち合わせ場所にそろそろグロリアも戻る頃だ、服を嗅いで首を傾げる、死臭はしないよな?


しかしやや焦げ臭いかな?糞魔物の中に火を吐き出す奴がいたから死体が燃えたのだ、炭化したソレを踏み潰しながら欠伸を噛み殺す、死臭と腐臭、どれもこれも俺には慣れ親しんだモノだ。


今回の魔物は知性がやたらあったな、それだけ魔王の直系筋に近いのだろうか?どの魔王の系列なのかは不明だが無駄な抵抗だ、俺の母親は魔王の娘、しかも古代の魔王が育んだ存在、敵うはずが無い。


「どうした?魔王軍の元幹部の居場所でも新しい魔王の居場所でも何でも良いから聞き出せたか?餌の居場所を知る事は重要だぜ」


「吐き出させるデス」


『ゆ、許して』


人語を喋れるのか?しかし駄目だな、餌を食わないと俺は死んでしまう、普通の食事ではエルフライダーの体を保っていられない……魔物だって人間を殺して食うだろ?だったら俺だって魔物を殺して食う、何も変わらねぇよな。


死にかけの魔物は人間の姿をしている、殺したら食う、一部にしないが少しはマシだろう?殺すように命ずる、その命令は僅か数秒の内に完遂される、ずずずずず、地面から透明な触手が伸びてその精神と肉体を捕食する。


まったく腹が膨れん、しかし贅沢は言ってられん、苦笑しながら足を進める、全滅か?そこそこ大きい集落だったが全て捕食した、魔物が人間の集落を襲って無人の里を生み出す工程と似ている、魔物がいない集落を無人と表現するのはおかしいよな。


「まったく、幹部の居所を知らねぇか、困ったな」


「困りましたデス、レクルタンの赤ちゃんがお腹を空かせて」


「お母さん、魔王や魔王の眷属はどんな存在?」


「何を言うのデス、離乳食デス」


「ふふ、おもしれぇ」


「?赤ちゃんはお喋りが上手デス、もっともっと声を聞かせて欲しいのデス」


「駄目ー、今回聞き出せなかったからもう聞かせない、そうだな、美味しい餌をもっとくれたら考えても良いかな?」


「ほ、ほんとデスか、だったら沢山殺すデス、赤ちゃんの離乳食を作るのはお母さんの仕事デス」


「嘘、何時でも聞かせてやる、だって親子なんだもん、おいで、抱っこしてやる」


「そ、そんな、レクルタンはお母さんデス、それなら逆に―――」


「うるせぇ、抱かせろ、命令だ」


「は、はい」


「その前に謝れ」


「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、愚鈍なお母さんを許して欲しいデス」


「許す」


「っあ、い、痛いデス」


僅かな黄色が溶け込んだ白色の髪、卯の花色(うのはないろ)のソレは清廉で清潔で清純だ、人々に愛される色、その髪を無理矢理掴んで引き寄せる、口答えをした母親にはコレが一番大切だ、子供が親を教育するのは当たり前だよな?


自分の都合の良い存在に作り替える、その為に髪を引き千切りながら無理矢理俺の腕の中に寄せる、空木(うつぎ)の木に小さく咲く初夏を告げる可愛らしい花の名を冠した色、卯の花は雪見草とも呼ばれているな、小さな花が健気に咲き誇る様が雪のように美しいからだ。


しかし空木とはまた笑えるぜ、その中身は俺への愛情で支配されている、空洞では無く満タンだぜ?クスクスクス、涙する母を抱き寄せて全力で抱き締める、ミシミシミシっ、骨が軋み皮膚が圧迫され肉が潰れる、こいつの細胞も含めて幹部勢の細胞を活性化させている。


痛がれ。


「お前がちゃんと聞き出せなかったせいで俺は傷付いているんだぜ、心がもっと痛い、味わえ、苦しめ、反省しろ」


「ァ」


口から涎を垂れ流して瞬きを忘れて俺を見詰めている、自分より強い存在に抱かれる事なんて無かったろ?……反省して良い母になれ、背骨が軋み全身が圧迫されている、幼くて小さな体はミルクのような香りがするし体温も高い。


殺す価値がある肉体だなと素直に思う、卯月(うづき)に製造されたのでこの髪の色を与えられたらしい、卯月とは卯の花が咲き誇る季節を指す、こいつの母親は人間のように感性豊かでこいつを本当に大切に大切に育てたらしい。


その娘が俺によって蹂躙されるのはどうよ?泡を吐いている姿が愛らしいぜ、舐めるか、つぷつぷ、泡は泡かぁ、それが絶命の瞬間でも味に変化は無いのだろうか?試して見たい気がするがお仕置きで殺してしまったら元も子も無い、こいつの子供は俺だけどなぁ。


「ふふふ、しーね、しーね」


解放する、そして介抱する、死に際で何かを見ていたのか小言を呟いてやがる、なぁんだぁ、こんな余裕があるのならもっと遊んでやったら良かった、ウサギの耳が元気無く垂れ下がっているぜ?


瞳を覗き込む、そこにある感情を観察する。


「俺が憎い?」


「ァ、ぁぁ、すき、かわいい、レクルタンをころそうとして、わんぱくなあかちゃん」


銀朱(ぎんしゅ)の瞳は全てを見透かすように穏やかだ、死に掛けていたのに中々に根性あるな、今度は優しく抱き締めてやる、愛情を確認するのはこの方法が一番だ、この方法しか俺は知らない、ふは、エルフライダーだからかな?誰かが俺に教育したからか?


「今度は血の泡を吐いてよ、どんな味がするか知りたいから」


「っはぁ、なんでもたべて、えらいデス」


そうやって微笑んだこいつの顔は子供が無事に成長する様を喜ぶ母親そのものだった。

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