閑話106・『キョウちゃんの修行は生足サービス』

この状況は流石に想像していなかった、何処までも広がる草原、爽やかな風が吹き抜ける、頬をくすぐるその感触に満足しつつ構える。


高い樹木が殆ど無い景色は見ていて気持ちが良い、俺はグロリアの為に全てを捧げると決めた、その為にもっと強くならないと駄目だ、せめてグロリアと同じぐらいには!


そんな俺の言葉を聞いてキョウがだったら特訓しようと提案した、自分自身と戦うのは初めてだ、何よりキョウは俺の知らない過去の情報や経験を多く持っている、それを暴くには丁度良い機会だ。


干し草を刈る草地のように思えるが俺の過去から再現したのだろうか?耕作放棄された土地は草花が生い茂るがココは一切ソレが無い、誰かが整備しているのか?夢の中でそんなわけがあるかっ!呑気な思考を一喝する。


「キョウ、本気で良いよォ?一部の力も存分に使って良いからね」


「それだけ力の差があるのか?」


「あるよ、今までキョウが苦戦した時も何でこんな相手に苦戦するんだろうって思ってたもん」


「そうか、力不足で恥ずかしいぜ、だから鍛えてくれ」


「良いけどねェ、取り敢えず今の実力が知りたいから……おいで」


声音は何処までも優しいが佇まいに隙が無い……豪華絢爛な着飾る必要も無い程に整った容姿で俺に微笑み掛けるキョウ、何処までも整った顔は人形のようだなと再認識する、しかし口元はユルユルだ、俺に構って貰って嬉しいのだろう。


瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、何となく慣れ親しんだ感じがあるが違和感も同時に存在する……左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、グロリアと同じ色彩の瞳を見ていると吸い込まれそうだ。


風に揺れる癖ッ毛を手で整えながらキョウは構えもしないで立ち尽くしている、舐められているわけでは無い、実力差がそれだけあるのだ、取り敢えず、出来る限りの事をするぜ!魔物の細胞を全身で活性化させる、一人の母と二人の娘、三人揃えばどれだけの力が得られる?


能力を解放しつつ走る、ファルシオンを抜くとキョウもファルシオンを構える、あいつは一部の能力を使わないらしい、しかしその条件を飲んだのは俺だ、ここで死んでも夢の中、現実で滅ぶ事は無いから安心だ!キョウに攻撃するのは少し心苦しいが強くなる為だぜ!


「うおぉおおらあああ、死ねやぁああああああ」


「ひ、酷いよキョウ」


深く腰を落とした姿勢から体を捻るようにしてファルシオンを叩き込む!!横腹頂きっ、しかし軽々と弾かれる、力で相殺されたのでは無い、タイミングで全て受け流された、歯軋りをしながら後方へと飛ぶ、魔王の幹部勢三人の力を一つにしているんだぞ?


純粋な剣術でここまで良いようにされるとは驚きだぜ、剣で攻防して敵を殺傷する為の能力、それにここまで大きな隔たりがあるとは屈辱的だ、しかしやりがいがあるぜ、刀身は触れた瞬間に少しずつ後ろに下がって刃を擦り抜けやがった、最後のタイミングで弾かれて俺だけが吹き飛んだ。


胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、それと合わさって羽根を相手しているような気分だ、切り裂くまでに風に揺れて何処かへと飛んでゆく、くはは、面白い、ここまで実力差があるとはお前はどんな過去の俺を知っている?


「死ねは無いよねっ!怒るよ!」


「お前も言って良いよ」


「言えないよ!大好きだもん!」


「うおぉおおらあああ、死ねやぁああああああ」


「うえぇええ」


涙目のキョウに容赦はしないぜ、実量差は明白なのだ、精神的な揺さぶりをかけてでも絶対に勝ってやるぜ、全ては腰の回転から始まる、走りながら大きく足を踏み込む、腰の捻りを腕に伝えるように意識して順番に肩から肘へと力を流すようにする。


手首を伸ばしきるのを待って剣をぶつけると同時に足をもう一歩前へと強く踏み入れる、基本に忠実な動きだが身体的な能力の差があるのならコレが一番状況を掴める、右斜め上から飛来する必殺の一撃、魔物の筋力が刀身に残像を残らせるほどの力と速度を与えてくれる。


「基本だね、でも足を踏み込む位置はそれで良いの?ファルシオンの長さならもっと離れてて大丈夫なはずだよ」


「っっ」


「私の足が伸びる位置に重心を置くのは少しね」


足払いされる、景色が斜めに歪む、体が浮いたタイミングでは無抵抗になってしまう、そのままさらに片方の足で腹を蹴とばされる、ファルシオンを掴んだまま大きく後方へと吹き飛ばされる、カウンター、血反吐を吐きながら地面に倒れ込む、空が綺麗だぜ。


どれだけ激痛で意識が飛びそうでも相手の姿が見えなくても地面に寝転んでいるのはまずい、意味も無く転げ回って立ち上がる、しかしキョウは同じ位置でのほほんと立ち尽くしている、お、同じ顔をしているだけあって何かムカつく、すげぇムカつくぜ。


「キョウちゃんキック」


「き、キョウキックの方が強いぜ、おろろ」


「んー、キョウは基本に忠実で応用力もあるけど不意打ちに弱いねェ」


「う、うるせぇ!」


「不意打ちキスしようかなァ」


「ゲロ吐いたばかりだぜ?」


「じゃあいいや」


しかし勝てるビジョンが浮かばない、単純な力量差では無く俺の性格を熟知してやがる、ファルシオンを地面に突き刺して思案する、思案するように見せかけて墓の氷の力で地面に冷気を流し込む、魔法と違って難しい魔力操作がいらないのがお手軽だぜ♪


あいつの足裏を地面に固定してやる、気付かせ無いように圧縮した冷気であいつの足裏の広さだけを地面の水分を利用して!ふふふ、卑怯だろうが何だろうが勝てば良いのだ、勝たなければ意味が無いのだ、そして走る、よっしゃあ、俺の勝ちー!


墓の氷の冷気はあいてに気付かれること無く侵食する、冷たいと感じる事も無い異界の冷気、ふはは、よぉし、ファルシオンを叩き込めば俺の勝ちー!


「靴を脱いでェ」


「え」


「そのままキョウちゃん生足キック」


「へぶらっ!?」


地面に固定された靴を脱ぎ捨てて俺の顔面に蹴りをぶちかますキョウ、気付いていやがった?


「キョウのする事なんて予想出来るよォ、んふふ、私の勝ちだね♪」


「ぐ、ぐぐぐ、悔しい」


「ついでにおっぱいを揉んでおこう」


寝転がった俺の胸を揉むキョウ、激痛でそれ所では無いので好きにさせる、うぅ、次は絶対に勝つ!


「あ、乳首立った」


「く、屈辱だぜ、き、キョウの癖に」


「ついでに下の具合も見とこう、んふふ」


「ぎゃあー」


必ずこいつに勝って次は俺が美味しく頂いてやる!そう胸に誓うのだった。


乳首の立った胸にな!

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