閑話105・『男の決心で女の俺を黙らせるの巻』
基本的に一部の皆は俺の下位器官になる、だからこそ俺の命令を嬉々として受け入れるし俺を愛してくれる、神と人間のように絶対的な隔たりがある。
だけどキョウは違う、俺の生理的な現象でしか無いので一部では無い、俺の側面、もしくは俺そのもの、そこに精神的な差異も無く、互いが互いに入れ替わる。
俺だって女寄りのキョウになるし女寄りのキョウだって俺になる、そんな不思議な関係性の俺達なのだがキョウが自我を持ち始めてから少しずつ関係が変化した。
湖畔の街を形成してそこに俺を誘い込む、独占欲の現れ方が極端だなと苦笑する、一度は敵対した関係だが今では関係も良好だ、俺がグロリアを嫌うように誘導した過去。
それも全て俺の身を案じての事、何よりキョウは俺よりも過去の記憶に精通している、欠損していないし欠落していない、俺という人間を俺以上に把握している、本当にもう一人の俺だな。
そんな頼りになる俺自身に俺は監禁されている、な、何でだ?
「キョウっ!最近グロリアに対して弱過ぎっ!スライムかっ!」
「え、えぇぇ、そもそも何時もの湖畔の街は何処だよ、何だよ、この座敷牢」
「座敷牢だよっ!」
「やっぱり座敷牢なのかよ」
厳重な格子が外界との交流を遮断しているがそもそもここは俺とキョウの精神の世界、閉じ込められようが何をしようが朝が来れば現実が訪れる、しかし気分的に良く無い、地下をイメージしているのかジメジメしている。
用便や洗体の為の設備が無い、キョウの想像力ではコレが限界か?実際にここに閉じ込められたら地獄だなと苦笑する、ちなみに何故かキョウも座敷牢の中にいる、おいおい、俺を閉じ込めるのでは無く二人で閉じ込められるのか?
「キョウ、俺がグロリアに対して甘いのは理解しているつもりだ」
「理解してないもんっ、何時も何時もグロリアグロリアってキモイよっ!」
ぷくー、頬を膨らませながら力説するキョウ、確かにグロリアに対して色々と甘い自覚はある、俺のそんな心を利用してグロリアは己の計画を進めているのだから笑うに笑えない、でも惚れた女に利用されるのは嫌な事では無い。
影不意ちゃんの言葉で俺は理解した、俺はグロリアを信じている、そして使い捨てにされようがどうでも良い、俺がソレを受け入れるかどうかで世界は変わる、あんな女の傍にいれる男なんて俺ぐらいだろう?だったらとことん尽くすさ。
そしてグロリアを幸せにして見せる、計画とか神とかどうでも良いんだぜ、その為にキョウには俺の自我を保つための術を探して貰っている、取り敢えずの打開策としてはつまみ食いをする事だな、純度の高い純血のエルフを取り込む事だ。
謝る事はしないぜ、人間が飯を食うのと同じだ、エルフライダーはエルフを食う、自覚してしまえば何て事の無い事実、人間が人間でいられるのは他の生命を食らうからだ、だったら俺はエルフを食らう事で自我を保つ、自分自身の決断で。
「キモくて良いぜ、グロリア大好きだからな」
「か、影不意のせいだぁ、キョウがおかしくなっちゃったよォ」
「ふはは、俺達の幸せの為に魔王軍の元幹部もエルフも美味しく食べちゃうぜ、キョウ、お前も協力しろよな?」
「むぅ、むぅうううう」
「怒っても無駄だぜ、お前は俺の事を愛しているから最後に絶対折れる」
「う、うわぁ、最低だァ、他の女と幸せになる為に酷いよォ」
「愛してるぜキョウ」
「う、うぁぁ」
涙目で震えるキョウに追い打ちを仕掛ける、ふふ、お前も必ず幸せにしてやるから安心してくれ、まさかこんな座敷牢に閉じ込められる事になるとは思わなかったけどな!俺はとことんグロリアに尽くす、その覚悟をキョウに叩きつける。
俺自身が崩壊してもそれはもうどうしようも無い、そんな感情なんだぜ、自分自身でも止められないのだ、グロリアが俺を外の世界に連れ出してくれた、そして惚れた、何時も邪笑を浮かべて人を操って自分の利益にしか興味が無い、そして世界で一番寂しい女の子。
それを理解したあの日から俺の体も心もグロリアのものだ。
「し、仕方無いから色々と策は考えてあげるよォ、でもそれはキョウの為であってグロリアの為じゃないんだからねっ!」
「やったぜ、チョロいぜ」
「チョロく無いもんっ!ばーか、ばーか!キョウなんかグロリアに使い捨てられて最後は廃人になっちゃえば良いよォ!」
「その時はお前が傍にいてくれるんだろ?」
「っっ、しらない」
顔を真っ赤にして怒鳴るキョウ、よしよし、保険は出来たしこれで大丈夫だろう、俺には信頼できる一部と愛するキョウがいる、例え廃人になってもこいつ等がいる限り俺は大丈夫だ。
グロリアを幸せにして見せる、ふふ、お前の計画より俺の事の方が大事って意地でも思わせてやるからなっ!
「影不意めェ、後でお仕置きだよォ」
「影不意ちゃんをお仕置きしたら後で俺がお前をお仕置きする、この部屋は良いな、トイレも無いしお仕置きには最適だ」
「ひぃぃ」
素敵なお部屋をありがとよ
後で使おうな?
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