閑話99・『美少女の旋毛は麻薬と同じで法律で禁止されています』
魔法を使うのは苦手だ、苦手と言うかあまり必要性を感じない、妖精の力と錬金術で大体の事は行える。
だけど鍛える必要はある、グロリアに教えて貰っても良いのだが天性の資質を持つグロリアの教え方はわかり難い、自分と同じレベルを他人に強要する。
それでは頭の悪い俺は理解出来ない、首を傾げて唸りながら蹲るだけ、なので影不意ちゃんに教わっている、影不意ちゃんの扱う魔法は一部なので使えるが問題はそこでは無い。
自分自身で勉強して自分自身で学びたい、影不意ちゃんも自分自身なのだが俺の末端の器官だしな、メインの俺がたまにはしっかりしないとなっ!影不意ちゃんは面倒な様子も見せないで俺に色々と教えてくれる。
「ここまでで質問は?」
「無いぜ、祟木の姿をしているせいか何でも頭に入る」
「それは凄いね、天才だ」
「そうだぜ、影不意ちゃんも天才だけど祟木も天才だぜ」
「僕は天才じゃないけどね」
お世辞では無く事実を言っているのに軽く流される、影不意ちゃんの虚空の様に何も映さない瞳が俺を見詰めている、故郷の村に立ち寄った商人が売っていた『海緑石』のような灰緑色の瞳、目尻に涙が溜まっていて眠そうだ。
何時でもとろんとした瞳で眠そうな影不意ちゃん、しかし魔法について語る口調は一切の乱れが無くスラスラと紡がれる、取り込んだ一部の多くは強力な魔力と圧倒的な才能を持っている、それを血肉に変化させた俺は全ての才を保有していると言っても良い。
なので影不意ちゃんの語る言葉の意味を理解するのも簡単だ、魔王軍の元幹部三人は魔法を扱うのではなく魔力を己の力で変質させて行使する、理論も糞も無い純粋な生物としての特性、そりゃ人間は敵わないよなぁと魔法について教わりながら心の中でも思う。
「キョウちゃんはどんな魔法を使いたいのかな?」
「グロリアの全裸を透視出来る魔法を使いたい」
「性欲が抑えられないの?僕が脱ごうか?」
「わびさびっ!」
「ワサビ?アブラナ科ワサビ属の植物だね」
服を脱ごうとした手を止めて愛らしく首を傾げる影不意ちゃん、柔らかな広袖のチュニック、真っ白い法服は故郷の村では見た事が無いものだ、肩から裾には幾つかの筋飾りが入っていて中々に立派なものだ、少女を彩るには些か大袈裟な気もする。
神聖な法服を下卑た理由で脱ごうとしないっ!宿屋の一室で俺は息を荒げながら注意する、ぜーはーぜーはー、左目に装着したモノクルの下の瞳は何処までも無垢で邪気が無い、大賢者ともあろう者が世俗をここまで知らないのはどうしたものか?
グロリアの全裸を透視する魔法は諦めて大人しく授業を受ける事にする、論理的なものから実践的なものまで様々な知識や技術を俺に根気良く教えてくれる、全ての記憶と精神は共通のモノなのに影不意ちゃんから伝えられるとまったく別のモノに思えてしまう。
「影不意ちゃん、ここらで休憩しようぜ」
「いいよ、お茶でも注ごうか」
そう言って椅子から立ち上がる影不意ちゃん、あまりに自然な動作なので何も言えない、眠そうで怠惰で動きが遅くてとっても女の子、影不意ちゃんは少し不思議な所はあるが優秀な一部だ、一部の中でも古参になって来たなぁと実感する。
すっかり馴染んだ感覚、俺がそんな風に下らない事を思考していると影不意ちゃんが台所の方から戻って来る、首を傾げながらお茶を注いでくれる、耳に僅かに髪が触れる程度のナチュラルなショートヘアが視界に入る、知的な彼女のイメージにピッタリだ。
目線より僅かに上の自然に流した前髪も似合っている、中性的な容姿に中性的な髪型、他のイメージに反してやや太めの眉が意思の強さを感じさせる、小さな鼻と小さな口は形は良いものの子供のソレを連想させる。
「美味しいぜ」
「煮立てて濃くしないのがコツだよ」
「へえ、影不意ちゃんは良いお嫁さんになるなァ」
「お嫁さんか、キョウちゃんは僕がお嫁に行っても良いの?」
「だ、ダメだぜ」
「即答するぐらいなら最初から言わない、これ、人間関係を円滑に保つコツだよ」
「うぅ」
「キョウちゃん?少し言い過ぎたかな」
「か、影不意ちゃんの旋毛の匂いを嗅いだら立ち直れる」
「………………脱ごうか」
「旋毛でっ!旋毛でお願いしますっ!」
影不意ちゃんは呆れながら旋毛を嗅がせてくれました。
くんかくんか、あまりに良い匂いだったので今日勉強した事を全て忘れました。
旋毛すげぇっ!全裸よりエロいっ!
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