第107話・『良い子って言われると嬉しいよ、だから殺すよ』
キープに侵入して具現化する、妖精の姿を捨てて本来の姿に転じる、キープには地下か必ずある。
ダンジョンと呼称される牢獄がそこには広がっているはずだ、上から透明化して攻めて見たが妖精はいなかった。
「やっぱり地下か、地下の地下ってもう意味がわかんねぇわ」
『エルフライダーつーわけのわからない生き物の主が言えた台詞かね?』
「人殺しが趣味の妖精に言われたくねぇよ」
『ロリに跨ってコレは生理的な現象です!で全て済ます主に言われたくねぇよ』
「あまり俺を責めるとキョウを呼び起こすぜ?」
『そ、そいつは勘弁だぜ、あっちの主は攻撃的だからな、あんまり怖い事を言わないでくれ』
キョウの抑止力に感謝しながら地下に下る階段を探す、透明化して先に進んでも良いが同族の気配はやはり目立つような気がする、ここで少し驚いたのだがユルラゥの気配探知の能力は同族の中でも飛び抜けて範囲が広いらしい。
確かに恐ろしく広い範囲を探知出来るもんな、妖精の中の麒麟児って奴か?女だけどな!しかし妖精で麒麟ってもはや意味不明だな、首でも伸ばしてやるか?フフ、きっと楽しいぞ、錬金術の力でどうにかならないだろうか?
『オイオイ、邪悪なオーラが垂れ流し状態だぜ、どんなヤバい事を思い付いたよ?』
「お前の首をお前の無限の命を等価交換にキリンのように伸ばす事だよ」
『え』
「お前の首をお前の無限の命を等価交換にキリンのように伸ばす事だよ」
『二度言ってもわかんねぇもんはわからねぇわ!どうしてオレの命を使ってオレをキメラ化しないと駄目なんだぜ!?』
「お前が妖精の中でも天才だからだ」
『ど、どんな思考でそこからオレの首を伸ばす事に………やだかんな!』
「そうか、ササに聞いて出来るかどうか聞いてみる」
『マジでやだかんな!?』
石段を進む、まさかいきなり襲って来ないだろうけどユルラゥしか妖精って知らねーし、初めての出会いで殺されかけたのは良い思い出だ、額が疼く、こんなに殺意と邪気を持った素敵な妖精は他にいねぇだろう?
だから他の妖精に肉体が反応する前に根絶やしにしてやる、じじっ、じじじじっ、死に際の蝉の羽の音のようなものが脳内に木霊する、頭痛い、痛い痛い、ここまで俺って残酷な奴だったけ?意味も無く生き物を殺せたっけ?
切石製の踏段を注意深く歩きながら自分自身の考えに疑問を感じる、亡霊を生み出しているかどうかもまだわかんねぇのに、邪悪な存在かどうかまだわかんねぇのにどれだけ攻撃的なんだよ俺、体を抱き締めて軽く震える。
『主、オレの為に無理しなくて良いぜ?エルフの祖先である妖精は御馳走だろ?無理して苦しんでいる主を見る方が辛いぜ』
「うるさい」
『主』
「ああ、殺したいんだ、殺したいんだ、お前しか欲しくないからお前以外の妖精を見つけたら殺さないと駄目だよな」
『でもそれは辛くて苦しいだろ?オレは特別じゃなくて良いんだぜ』
「特別だ」
『――――――――――――』
「お前だけが俺の妖精だ、だからいらない、いらないいらないいらないいらない、いらないもん」
『そうか、主はオレの事が大好きだな、オレも主の事が大好きだぜ、愛している』
「うん、おれも、えへへ」
そうだ、だから殺さないと駄目なんだ、わかってるもん、キョウが教えてくれる、どいつを殺してどいつを生かして良いのか教えてくれる、んふふふ、ありがとう、俺は嬉しいよ?
特別な妖精を特別なままにし続ける為にいらないものは消さないと、そうだ、それが一番だ、畑で作物を育てていた時の雑草は抜いて燃やしていたもんな、それと同じだぜ、同じ植物でもいる植物は世話をしていらない植物は燃やす。
ユルラゥが妖精の力を感知されない程度に俺の体に纏わせる、これでどのような攻撃が来ても肌に触れる前に支配して操れる、どうしてこんなに優しいんだろ?人間を殺す悪い妖精なのにどうして俺にはこんなに優しいの?
おしえてくれるとうれしいな♪
「くふふ」
『フフッ、どうした?少し心の安定を欠いてるな、シスターに酷使され過ぎて可哀想に』
「ねえねえ、ユルラゥはどうしておれにやさしいの?」
『優しくしてるつもりはねぇけど』
ころばないように、あるかないと、なんだかからだのじゆうがきかない、うぅう。
『少しだけオレに体を預けてみな』
「うん」
『逆支配されるとは考えないんだな』
「うん、ユルラゥすき」
『し、しつこいぜ』
なんだかしらないけどしかられる、ユルラゥにからだをあずけるとじょうずにそうさしてくれます。
おおきなとびらだ、よぉし、がんばってぜんぶころすよ、ユルラゥがよろこんでくれるように、そうだ、むすめふたりをがんばってかいほうしよう。
開放しよう、解放しよう、くふふ、妖精を根絶やしだ。
「あいしてるよ、だからころすね」
『おうおう、一匹は残しとけ、あの村の秘密や亡霊の件を聞きてぇからな』
「うん」
『……………そうか、良い子だぜ』
もっとほめて。
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