閑話90・『魔王の娘は俺の恋人形で愛人形で娘で放屁』
魔物の死体が山になっている、魔に連なる者だろうが聖なる者だろうが死ねば肉の塊だ、ウジ虫も湧き死臭もする。
人間も魔物も共通点が多い、普通の動物より知恵があるし群れたがる、互いに嫌悪しているが似た物同志だ、この場所には数日前まで人間の村があった。
そして二日前に滅んで魔物の村となった、それだけだ、それだけの現実、理不尽なようでいて世界から見れば何も変化の無い日常、住んでいる生き物が変わっただけ。
そして今日になって魔物が滅んだ、全て滅んだ、人間も魔物も滅んで残ったのは一人の人間と一匹の魔物だけ、いや、一人の母親と一匹の娘だけ、否定、一つの生命体だけ。
「良い子だな、ホントに良い子」
「お母さん、お母さん」
周囲の建物は激しい戦闘のせいで崩れてしまっている、これでは魔物だろうが人間だろうが住めないだろう、しかし一方的な戦闘だった事は窺える、どの魔物も逃げようとした痕跡があるのだ。
だけれど逃げれなかった、背後から激しい電光に射抜かれて消し炭になっている、その余波で死んだ魔物は生焼け状態で実に食欲を刺激する、俺は笑みを深くしながら周囲を見回す、人間も魔物も滅んだ辺境の一つの村。
足を踏み入れた時には魔物に蹂躙された後だった、だから次は俺が蹂躙した、魔物には魔物、おらぁ、お前達のような下級のゴミと違って俺の娘は魔王軍の元幹部にして魔王の娘だぜ、んふふ、間違った、俺の腹で産んだ俺の娘だ。
「見てくれ、お母さん、この手で同族の腸を引き摺り出したぞ」
「へえ、見せてくれ、小さくて綺麗なおてて、舐めさせてくれ」
「駄目だよ、汚らわしい魔物の血で濡れているから、病気になってしまうぞ?」
此処野花は白くて細い指を隠してしまう、それを無理矢理掴んで口に入れる、崩壊した民家の中で娘を溺愛する、同族を殺すのに少しは抵抗があるのかと機能を点検したのだが問題は無いようだ、汚らわしい種族と嫌悪感たっぷりに消滅させた。
やはり高位の魔物は魔物を嫌うように作り替えないとな、己の種に誇りを持っている存在が相反する存在に転じるのは実に面白い、俺の胸に吸い付く此処野花の頭を優しく撫でてやる、性的な動きでは無い、純粋に食料を欲している、母の愛を欲している。
乳首を白い歯で噛んで何度も催促する仕草は実に可愛らしい、魔王から寝取った、魔王の娘を寝取った、こいつの頭には魔王も魔物も無い、そんな単語は既にどうでも良くなっている、俺の為にだけ機能する愛しい娘、撫でてやりながら何度も言い聞かせる。
「お母さんの敵は?」
「ちゅぱ、ん、ちゃんと殺せるよ」
「お母さんの敵が人間だったら?」
「ん、ん、ん、脆いから、すぐに殺せると思う、お母さんに近寄らせない」
「お母さんの敵が魔物だったら?」
「ぁぁ、おいし……」
「こぉら、質問に答えないと怒るぞ?」
「ぁ、殺せる、魔物は汚いよ、とてもとても汚い種族なんだ、お母さんは知ってるのか?」
「ああ、前に途轍もなく強い二匹に出会って苦労したぜ」
「お母さんを困らせたのか?ああ、私が殺してあげる、お母さんを困らせる奴は誰だって殺す」
お前の事だよ、バーカ、んぐんぐんぐ、白い喉が鳴る、白い水を飲む、俺の母乳を飲んで順調に成長している、魔物の死体に囲まれて魔物に母乳をやるのは生と死が同居しているようで実に居心地が良い、混沌とした場の空気は俺に力を与えてくれる。
様々な一部を取り込んだせいで俺も不安定な生き物になっている、人間なのか??最近は自信が無いな、優しく此処野花を撫でて最初から同じ質問を繰り返す、彼女は嫌な顔をせずに同じように返答をする、舌の動きは何処までも優しい、くすぐったい。
此処野花の葵の花のように灰色が混じった明るい紫色の瞳が俺を見詰めている……上手にお返事が出来たからもっと褒めて?最強の魔王の最強の娘はそんな過去は忘れて母乳を与えてくれる俺に夢中だ、腹を痛めて産んだ我が子は可愛い、とても愛しい。
その幼い体にしては大きめのパルカ、ブカブカで持て余している感が半端無いな、あまりに大きいソレのせいで下半身も隠れてしまっている、畳の材料にもなるイグサを編んだ畳表草履、その草履を擦り合わせて身を俺に寄せる、もしかして性的に興奮している?
「お母さんに駄目だぞぉ」
「あ、ち、違う、ちがい、ます」
「そう?何だか足をモジモジ擦り合わせていけない動きに見えるけど」
「ち、ちがうから、あんまり見ちゃダメだ」
「んふふ、そう、お母さんのお腹の中で同じ事をする?子宮の中でする?」
「だ、大丈夫、あんまり子供扱いしないでくれ」
トップスの内首の根元の部分に帽子となるフードが付随している、北の民族が好んで着る服だ、動物の毛皮で作るソレはパルカと呼ばれ他の地域では高値で買い取りをされている、服に付随した頭巾のようなソレを頭に被せて顔を隠す。
明るい紫色の瞳、葵色(あおいいろ)の瞳が隠れてしまった、大好きなその瞳を見たくて甘く囁く、何度も何度もしつこく囁く、やがて顔を出した所を掴んで捕食する、ずぶずぶ、ずぶぶぶぶぶ、放屁のような音を鳴らしながら俺の胸に沈む、出しては入れる。
頭部を何度も出し入れさせてバカにする、賢いこいつはバカにしないと、もっと俺の為に色んな生き物を殺さないと。
「あ、ひぃ」
「ふふ、おバカになった、顔を隠すなんて文明的な事をするんじゃないよ、ばぁか」
「ひ、ごめ、なさい」
「――――魔王が俺の邪魔をしたら?」
「ころ、しましゅ、そし、て」
ずぶぶぶぶぶ。
返事が言い終わる前に頭部を取り込んだ、放屁のような音を鳴らしながら魔王軍の元幹部の少女は肉の海に沈んだ。
びくんびくん、痙攣する足が海老のようで少し笑った。
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