第88話・『胸を揉ませて物を買わせる、俺の意思では無い』
死体を取り込んだ、そして死体を生者にする為に肉体がフル稼働、グロリアに説明したら便利な体ですねと皮肉を言われた。
魔王軍の元幹部である此処野花の細胞の汚染は少ない、少し力が強くなったのと雷を自然と操れるようになった事ぐらいか?
最大出力で放てばどのぐらいの威力なのだろうか、指の間に電光を走らせながら微笑む、この力は俺のモノだ、此処野花のモノでは無い。
「順調に成長してますね、感心です」
「もっと褒めて良いぜ、褒めれば褒めるだけ伸びるぜ、上も下も」
「下は伸びても程度が知れますよ」
「酷くね?ふん、グロリアのバカ、バカバカ」
「今晩、少し触っても良いですか?」
「お、おう」
グロリアのチッパイ中毒め、会話をぶった切って要求するとは中毒患者か?何時もの凜とした佇まいのまま欲望を口にする姿が初々しい、注意深く観察すると頬が若干赤い、わ、わかりやすい、胸が疼く。
成長期なのか胸が少し痛かったりする、炎水に聞いたら成長期って言ってたし我慢するしか無い、自分で軽く触れる、まな板だった胸に僅かな膨らみ、グロリアより少しだけ大きいかな?世間一般で言うと小さいがな!
ん?男っておっぱいって成長するっけ?ザーザーザーザー、視界が激しく乱れる、そして耳元で奇怪な音が鳴り響く、グロリアも違和感を感じない程の一瞬…………何だっけ、何を考えていたんだっけ??そうだ、この不思議な街の事を考えていたんだっ!
売春とマリファナが合法の地域らしく性欲に塗れた歯の欠けた男性があちこちで手招きしている、俺みたいなガキでも興味があるのか目が合えば凄まじい笑顔で手招きする、キモいぜ、そして俺は男だぜ!同性愛者はお断りだぜ!
ショーウインドーの中には娼婦達がまるでマネキン人形を展示するように飾られている、こちらも目が合えば手招きされる、気恥ずかしくなって俯きながらグロリアの手を握る、握ろうとした瞬間に一瞬だけグロリアの手が震える
初々しい。
「き、キョウさん、どうしました?」
「な、何かこの街怖くね?みんな俺に手招きするんだ、シスターの格好してるのにおかしいぜ!」
「キョウさんが可愛いからですよ?」
引き寄せられる、懐に収まる、グロリアの体は良い匂いがする、柑橘系の爽やかな匂い、胸元に頬を寄せてその香りを楽しむ、街の喧騒が何処かへと消え去り二人だけの時間が流れる、幸せな時間を満喫しながらグロリアの体に自分の体を擦り付ける。
「きゃ」
「あ」
自分の口から少女らしい声が零れる、グロリアが俺の胸を軽く揉んだのだ、繊細で細い指先が陶器をなぞる様に蠢く、人前で何て事を!顔を真っ赤にしながらグロリアを睨み付けると俺以上に顔を真っ赤にしながらこっちを見詰めている。
口元がプルプルと震えて汗がダラダラと溢れている、だ、だったら無理して触るんじゃねぇぜ?こ、こーゆー事は夜中にしないと駄目だって本に書いてた、太陽のある時間帯はしたら駄目だんだぜ?ええっと、神様に怒られるんだぜ!
手招きしていた娼婦達も苦笑しながら生暖かい視線をこちらに向けている、ぐ、グロリアのせいだ、いきなり抱き締めるのは良いとして胸を突然揉むんだもん、最近ズキズキして痛いのにいきなり容赦無く揉むんだもん、お、俺は悪く無い!!
恥ずかしいのはグロリアの方だからな。
「ぐ、グロリアぁ」
「か、幹部を倒したのは誰でしょうねェ、偽ってクエストの完了申請をしても良いのですが」
「しらない!バカ!オッパイ揉み揉みシスター!」
「お、オッパイ揉み揉みシスターって…………私の事ですかっ!?」
ベールの下から覗く艶やかな銀髪を揺らしながらグロリアは叫ぶ、お前以外いねぇぜ、無視をして手を引く、グロリアの手は汗でびっしょり、俺の胸を揉むのにどうしてそんなに緊張するんだ?揉まれた事実よりもそっちの方が気に入らない。
胸を片手で隠しながらグロリアを睨む、ヘラヘラしたグロリアの表情も気に食わない、俺のグロリアは冷静沈着で何事に対しても動じない素敵な美少女なのだ、なのに俺の胸を申し訳無さそうに揉んだりその事で俺に怒られたり、何だかカッコ悪いぜ!
「最近のグロリア変っ!変態っ!」
「キョウさん、何か欲しいものはありますか?何でも買って上げますよ?」
「賄賂ッッ!わかりやすいぜ………大人って汚い、グロリアも汚い」
ニッコリ、俺の暴言を物ともせずに微笑むグロリアに震撼する、青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる美しい瞳が探るように細められる、うぅぅ、大人のやり口は苦手だぜ、キョウさんに似合いますよと店先に売られているアクセサリーを指差す。
水商売の女性がするアクセサリーは派手で目に痛い、グロリアはその中でも地味なモノを選んでいるがどうにも食指が動かない、そもそも欲しく無い、グロリアと結婚したら色んな物を買い与えられて骨抜きにされそうだ、今から気を付けよう!!
将来に備えてな!
「ん?向こうの方が騒がしいな………こんな街だから仕方ねぇか」
「魔物が暴れているようですね、さあ、キョウさん、どれが欲しいですか?」
「え、えーっと………え?魔物?」
「そうですか、魔物が欲しいのですか、じゃあ一狩りしますかねェ」
俺の言葉を勝手に自己解釈して走り出すグロリア、魔物が暴れているのに装飾品を俺に選ばせる神経が怖い。
その魔物退治のせいで厄介な事件に巻き込まれる事も知ら無いで俺は走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます