閑話85・『俺をストレスで追い詰めるとこうなるぜ』

最近はクロリアやら姉さんやら炎水やら知識もあって戦闘も出来るパーフェクト三人衆の使い勝手が良い。


ゴゴゴ、しかも姉さんも炎水も組織のトップに立っていた人間なので統率力に優れている、クロリアはグロリアと同じで人を惹きつける求心力を持っている。


戦った俺ならわかる、あの三人は強い、一対一では俺でも危ないかも?しかし知識に関して言えば確かに優れてはいるが専門職には勝てない、インテリ三人衆の方が上だ。


しかし筋肉バカ三人衆はどうだろうか?戦闘でもパーフェクト三人衆に勝てない可能性がある、ちなみにインテリ三人衆が影不意ちゃん、ササ、祟木の三人なのだが非常にお世話になっている。


最近はパーフェクト三人衆とインテリ三人衆で大体の事態が解決出来る、そして筋肉バカ三人衆はそんなに使わない、そして具現化もしない、召喚もしない、理由はウルセェから、以上。


「ユルラゥ、姉ちゃん、灰色狐、抗議だと?」


「そ、そうじゃ!最近は儂達を使ってくれぬでは無いか!特に儂ッッ!」


「新しいお母さんが出来たからな、炎水お母さん」


「ああ、それな、後で二人きりで話そうな」


○○じゃ口調を止めて真顔で呟く灰色狐、こわっ、瞳孔が開いて危険な状態、殺意を隠そうともしない灰色狐、激情に駆られたその姿、蝶々の刺繍がされた東方服が実に似合っている。


母親が二人って特別だよな?灰色狐に説明をしなかったのは面倒だったから、爪を伸ばして喉を鳴らす灰色狐は絵本の中にでる敵役のようだ、戦っても炎水が勝つと思うけど、無色器官でボコボコにされるだろうし。


しかし怒ってやがる、灰色狐の癖に怒ってやがる、生意気に涙目になって意見しやがって。


「灰色狐の分際で」


「キョウッ?!聞き捨てならん台詞が聞こえたんじゃが!」


一人用の部屋に三人はキツい、ユルラゥは小さいから良いけど灰色狐と姉ちゃんがキツい、泊まるだけのシンプルな部屋には娯楽品は無い、部屋の半分がベッドで埋め尽くされている。


シーツが皺になるので暴れないで欲しい、しかし灰色狐はギャーギャー暴れながら猛抗議、灰色の尻尾の毛が逆立って藁箒(わらぼうき)のようだ、箒なら部屋を綺麗に出来るのにな。


「灰色狐の尻尾を切り落として箒の代わりに使いたい」


「今日のキョウはバイオレンスじゃ!!」


「主よォ、それだと血が溢れるから必要なのは箒じゃなくて雑巾だぜ?」


瞿麦(なでしこ)を彷彿とさせるピンク色の髪、縹(はなだ)と呼んでもおかしくない程に明度が高い薄青色のやや吊り目がちの瞳、形は蝶々のようなのに透ける様は蜻蛉のような羽、そんな俺の妖精は呆れたように呟く。


ユルラゥは足を組んで宙に浮いている、お前は三人の中でもかなり使っている方だぜ?視線を向けると静かに頷く、そうだろうそうだろう、灰色狐に付き合ってやっているのか?妖精の力は便利過ぎて重宝しているぜ。


羽を掴んで肩に置く、柔らかい尻の感覚がたまんねぇ。


「ユルラゥはケツが良い」


「オイオイ、セクハラだぜ」


「キョウ、わ、儂のお尻は?」


「尻尾が邪魔、尻尾を切り取って箒にしろ、アホンダラ」


「やっぱり尻尾の有無を指摘する息子っ!うぅぅ、最後にアホンダラって言ったぁ」


ベッドの隅で丸くなる灰色狐、名前に恥じない色合いをして尻尾が力無く項垂れている。


切り取りたい。


「ユルラゥ、見てくれ、あのケツを………尻尾が邪魔だろ?」


「いやいや、獣属性の全てを全力で否定するのはやめよーぜ、流石に可哀想だぜ」


「羽もいらねぇよな」


「主よォ、ケツに小汚い尻尾をぶら下げているなんて滑稽だぜ、さっさと引っこ抜いてやるのがこいつの為だぜ」


仲間割れはやっ、筋肉バカ三人衆の結束力は脆い、姉ちゃんはそんな俺達の寸劇を無視してベッドの上を飛び跳ねている。


畔の水面のように穏やかな姉ちゃんの瞳は虚空を見詰めたままだ、少しは俺達の寸劇に付き合って欲しいぜ、暫くすると口を開く。


「……………………………弟」


「ど、どうした姉ちゃん」


「…………もう一人、姉が出来たね、ん………しかも天命職」


姉さんの事だ、姉ちゃんと同じ天命職のタソガレ、こっちもこっちで何も説明していなかった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、無言の圧力を感じる、いやいや、姉ちゃんより姉さんの方が美人で立場があって優しいだけだぜ?


だから落ち着いて、あ、姉ちゃんはスラム出身だったっけ、あはははは、他意は無いぜ。


「後でゆっくり話そうね、二人っきりで」


間延びした口調では無く普通に呟く姉ちゃん、灰色狐と同じかよ、何だか死地に向かう心境でゴクリと息を飲む。


え、抗議されているつもりだったが本当は糾弾されている?―――――――――――――――――ストレス、た、助けて私。


「ンフフ、随分生意気だね、お姉ちゃん、筋肉しか良い所無いんだから無理に畏まった言い方しないでよねェ、キモーイ」


「!?」


「灰色狐ェ、自分を使って欲しいならせめて白星の一つぐらい土産にしなさいよねェ、負けっ放しの分際で偉そうに指図するんじゃないよ」


「あ、あばば」


「ユルラゥは………」


「な、何だぜ」


「アハァ、小さくてお人形さん見たいだからこの前買ったこのヌイグルミとお人形遊びしようねェ」


「な、何だぜ、その禍々しい化け物のヌイグルミはっ!」


「地獄の番犬ケルベロス、趣味は異種姦、さあ、皆で遊ぼうよォ」


「ヒィ!?」


そして皆でお人形遊びをして遊びましたァ。


楽しかったよね?キョウ。

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