閑話29・『祟木のおしっこの……』

「駄目だな」


今後の目標を教えてくれと言われたので『ドラゴンライダーになる』『グロリアと結婚したい』と二つの目標を出したら一言で切り捨てられた。


祟木(たたりぎ)の獅子を連想させる金色の瞳が俺を射抜く―――ちなみにここは風呂場だ、部屋の外に備え付けの風呂場……贅沢である、日頃の疲れを流せる。


木桶風呂の中で二人っきりは狭い……凹凸の少ない真っ白い肌、短い手足、何処か丸みを帯びた肩………幼い姿をした祟木は大人びた表情で俺を叱責する――立ち上がっているのであそこが丸見えだ。


「祟木、座れ、見えてる見えてる」


「見せてる見せてる」


産毛も無い程にサラサラした肌を惜し気も無く見せつけて祟木は笑う、男らしい豪快な笑みだ……幼女だけど……肩を掴んで無理矢理湯船に沈める、頬が少しピンク色に染まっていて桃のようだ。


ヒノキで拵えた大型の小判型木桶(こばんがたきおけ)だが二人で入ると割と狭苦しい……祟木がガラにも無くはしゃぐので妙な所が擦れて変な気持ちになる……相手はガキだ、気にしたら負けだ。


木桶風呂(きおけぶろ)と呼ばれるコレは火を焚く為に鋳物製の釜と煙突が合体した形状をしている――地下熱を使ってお湯を温めているらしいがこの地域特有のものだろう……羨ましいぜ!


「キョウ、髪を下ろした私はどうだ?」


「サイドポニーじゃなくても可愛いぜ、どうした突然」


「そりゃそうさ、私は幼い時からお前の為に生きて来たのだから!あはははは、そうじゃないと困る」


豪快に笑うのは勝手だがまた立ち上がったので盛大にあそこが見えている、腕を組んで立ち上がるのマジ止めてくれ………圧倒的な頭脳で学会のトップを走る少女は基本的に豪快らしい。


形の良いヘソを指で突きながら何の話をしていたのか思い出す………しかしヘソを突いても動じないなコイツ、ぷにぷに……獅子を連想させる猛々しい少女のヘソはプニプニしていた。


「話が脱線したがよォ、つまり二つを追うのは駄目って事だろ?」


「そうだ、キョウが求めているグロリア……片手間で落とせる程に安い女じゃないだろ?」


「まあな……高い女だぜ、とびっきり」


「ぶくぶくぶく」


口元を浴槽に沈めて泡を噴き出す祟木、天才でもこんな風に意味の無い事をするんだな………泡ならまだ良いが吐瀉は止めてくれ、顔面に塗りたくられた思い出がトラウマになっている。


祟木は戦々恐々としている俺を面白そうに見つめている………一部の中では相談事に関しては最も頼りになる、若くして学界にその名を轟かせたのだ………頭が良いだけでは無く、肝も据わっている。


「祟木はどうしたら良いと思う?頭の悪い俺の代わりに二つの夢を叶える手順を考えてくれ」


「ああ、まずは………どうだ」


また立ち上がった、また股間が見える……ツルツル。


「こ、股間が見えるぜ」


「……………ああ、もっと寄って見てみろ………臭うか?」


描写出来ねぇ……くそ、ゆで卵……ゆで卵のようにツルツルしてやがる……いや?ゆで卵以上にか…………ツルツル……産毛ぐらいあってくれ。


臭いは……しない。


「に、臭わないぜ…………」


「そうか、しかし私とて研究に忙しくて三日間風呂に入らない時もある、その時は臭うぞ、普通に」


「そうなのか?……くんくん、いいや、やっぱり臭わないぜ」


………鼻を寄せて嗅いで見るが臭わない、風呂の熱気のせいで頭が若干フラフラする、くんくんくん………くんくんくん。


「臭わないぜ、命を掛けても良いぜ」


「見た目幼女の股間が臭うかどうかで命を掛けられるキョウなら二兎を追う事も容易いだろうな……ふふ」


「ん?やっぱ少しおしっこ」


言葉を言い終える前に殴られた………研究職のはずなのに中々の右ストレート。


臭ったぜ。

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