閑話28・『「アドベ!!うわぁ!!」』
近隣で開催される大食い大会にグロリアが出掛けたので俺はお留守番、暇潰しに召喚した影不意ちゃんが行きたい場所があるらしく手を繋いで街を歩く。
来た事が無い街なのに迷わずに堂々と歩く影不意ちゃん、俺の記憶を読み取ってより合理的に最適化して脳内で地図化している、それを読み取って感心する。
眠たげな『海緑石』のような灰緑色の瞳にはいつもと違って『光』が宿っている、ワクワクしているな、読み取れば早いが読み取らないのも面白い……ひんやりとした手の感触が心地よい。
「影不意ちゃん、そんなに急いでどうしたんだ?」
「キョウちゃん、そっちじゃない、こっち」
グイッ、いきなりの方向転換に腕が捩じれて痛い、ふんふん、鼻息が荒い……影不意ちゃんにしては珍しいな……この街に滞在して既に三日目だが観光する場所も無く目新しい物も無い。
言い方は悪いが『つまらない』街だ、だからこそ落ち着いて旅の疲れを癒せる、観光する場所が多過ぎるのも問題だな………グロリアは興味心が旺盛なので付き合うと割と大変だ――楽しいけどさ。
街の中央から次第に離れてゆく、街並みが変化する……俺達が寝泊まりしている地区が現在の市街地でこっちが旧市街地か………城壁や堀が多くて物珍しい、前言撤回、ここまで来ると『観光』になるぜ。
時計塔が中央に鎮座していて旧市街を見下ろしている……あそこに行くのか?しかし遠目に見えるまま距離が離れてゆく、少し寄りたい気持ちになったが影不意ちゃんの熱意を優先する。
「あの時計塔デカいなぁ、すげぇ」
「ぜんまい式時計だね、曜日、日、月、星座も表示しているんだよ?石の重さで5つの主要歯車が28時間稼働する仕掛けで450キロの石を毎日持ち上げているようだね」
「見てぇ」
「なに?」
「な、何でも無い」
え、寄る暇も無いの?……時計台を囲むように設置された砲塔とか気になるんだけど……日の光を知らないのかと問いたくなる程に青白い肌を紅潮させて影不意ちゃんは先を急ぐ。
普段は眠たげな表情で覇気の欠片も感じさせないのに今日は元気満々だ…………何時もなら目蓋で半分隠れてしまっている可愛らしい瞳も『開き切って』いる……何が影不意ちゃんをここまで急かすのか不明だぜ。
柔らかな広袖のチュニック……真っ白い『法服』は彼女の職業が『賢者』である事を示している、特殊な職業で人々の畏敬の念を集める職業でもある……道行く人が頭を下げる。
……そして俺に奇異の視線を向ける、見た目は貧相な農民だから仕方ねぇ。
「ハァハァハァ、影不意ちゃん、少し落ち着こうぜ?」
「…………こっち!」
「カーブする時に俺の腕を捻るの止めてね」
左目に装着したモノクルの下の瞳は探求心に満ちている、ササと影不意ちゃんはスイッチが入ると暴走しちゃうな……手綱は握っているつもりだが『勉強』したいって気持ちを強制的に抑えるのは無理がある。
そして『農民』だった俺からすれば素敵な感情だと理解出来る………中性的な容姿に中性的な髪型をした影不意ちゃんだが『トキメキ』のままに行動している姿は乙女だなぁとついつい見惚れてしまう。
しかしどうして腕を捻るのか……道を曲がる度に関節技を仕掛けられている………腕がぷらーんぷらーんしている……いいよ、ここまで来たら好きに捻ってくれ。
「影不意ちゃん、お尻揉んでいい」
「いいよ」
手を離して前を歩く影不意ちゃんの尻を揉む、もみもみ、尻たぶは薄くて小さい…触った感触としては男のものと大差無いように思えるが嬲るように揉むと柔らかさを感じさせる。
急な運動のせいか少し熱気が篭っている………影不意ちゃんに合わせて早足になりながらケツを揉む………もみもみもみもみ、時計台は見れなかったがケツは揉めたし良しとしよう。
時計台より目の前のケツ。
「アドベ!!うわぁ!!」
「……………大声を出す影不意ちゃんを初めて見た」
何時もは眠たげな表情を輝かせて影不意ちゃんが叫ぶ、年頃の女の子が夢中になるものか?心の中で少し溜息……でも可愛いから許す、目の前には『アドべ』で出来た民家が立ち並ぶ。
既に人は住んでいないのか罅割れているものもある………アドベとは、砂や砂質粘土と藁を混ぜ合わせて作る天然建材の一種だ、木製の型枠に流し込んでアドベ煉瓦として多くは用いられる。
家畜の糞を混ぜ込むのが一般的で少し藁の量を減らして内側と外壁のモルタルとして使われる、雨害の多い地域では石灰を基本として製造したり様々な形で地域に溶け込んでいるのだが……主に田舎で。
俺の実家のようにな!
「こんなもの珍しいか?」
「うん、僕はこれを見たかったんだ……見れて良かった」
ニコニコ、とても機嫌が良さそうだ……賢者だけあって様々なモノに興味がある影不意ちゃん、その知識欲は果てしなくて予測がつかない……可愛い女の子が家畜の糞を混ぜ込んだ天然建材に興味を持つなんて普通思わないしな!
耳に僅かに髪が触れる程度のナチュラルなショートヘアを汗で濡らして彼女は興奮している、引っ張られる形で俺の精神が『興奮』してしまう、こんなものなら何時でも見せてやるのに……可愛い一部だぜ。
「影不意ちゃんは家畜の糞尿が好きか……」
「アドべ!……うわぁ」
「相手してくんないか?流石に糞尿で出来た壁に負けると切ない」
「こっちはムデハル様式になっていて装飾が凄いねっ!」
興奮して壁を触っている影不意ちゃんは俺の相手をする暇が無さそうなのでケツを揉んで気を紛らわす事にした。
もみもみ、この奥にある糞尿で俺もアドベっちゃおうかな。
はぁ。
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