閑話13・『その血の運命』(キョウ視点)

地味で構成された地味な部下子、それが僕のお目付け役―――……子守り歌は下手だし良く叱るし愚痴は多いし人間を沢山殺している。


赤子も老人も容赦無く殺す、僕のお兄ちゃんに命令されたらそれをそのまま実行する……そこに何の感情も無いし感慨も無い、粛々と殺人は実行される。


「しかし、何考えてんのかしらあいつ」


あいつとは『お兄ちゃん』の事だ……僕には理解出来ないけどこの世界を凄く憎んでいる、凄く憎んでいるが愛してもいるので『部下子』に命じて殺人を行っている……人類を滅ぼさない程度に。


地味は地味だが中々に優れた部下子…………従来の『勇魔』の魔物と違って魂や体の構造はルークレット教の『シスター』を原型にしているらしい、部下子の方が確実に可愛いし優しいし愛らしいけどね!


「真っ黒だろうけど」


部下子が吐き捨てるように呟く、お兄ちゃんとルークレット教の関係の事だろうけど……まあね、ズブズブの汚い関係だろうね!両方腹黒いしな!


「おっとっと」


魔王城の周囲にはかつての魔王達が創造した『警備兵』が巡回していて忙しない。


僕の事を見ても平気で攻撃してくる……そんな僕を庇ってくれるのは部下子だ、優しくて強くて地味なんだけど……好き、お母さんだもん。


「弟君(おとうとぎみ)あまりくっ付かないで下さい………グイグイきてるよ、グイグイ」


『ミ―』


黄金色に発光して部下子の体を這う、……ツルツルプニプニした柔肌の感触……自分をここまで育ててくれた部下子に対して何とも言えない感情を覚える、落ち着けー落ち着け―。


人間で言うならば10歳ぐらいの姿で固定されている部下子……俺がこの世界に誕生した時にどのように振る舞えばいい?――――――――――好きだけど、胸はねぇな……好きだよ、僕?


「弟君はいつも元気だね、グレないでね?」


グレないと誓うから胸の増量はよーっ!


「こらこら、暴れない、外に出るのは一時間だけって約束でしょ?」


『ミ―ミ―』


「聞き分けの悪い子は嫌いになっちゃうぞ?」


僕の母親は君なのにそんな事を言わないでよ、いつだって従うから愛して欲しい。


「帰ろう、弟君」


なんで泣きそうなの?君を泣かせる奴がいたら僕がぶっ飛ばしてやる!


「弟君も大切な人を見つけるなら『部下子』のような人を見つけなさいね?それだけで部下子は報われるわ」


『ミー』


僕が一番好きなのはお兄ちゃんでも他の誰でも無い……部下子だもん。


その言葉は聞けない、ごめん。

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