閑話11・『過去・かつて俺が団子三兄弟の真ん中だった?ハハハ、下らない冗談だぜ』

ここ最近、キョウの様子がおかしい……いや、キョウの周りに浮遊する『勇者』と『魔王』の様子もおかしい……総じておかしいのだが見守る事しか出来ない。


漆黒の空間でキョウの魂が忙しなく飛び回っている、命の輝きは並の人間のものでは無い……神の子供である天命職の魂は黄金に輝き闇を照らす、自分もかつてはこの状態だったのかな?


「キョウ、勇者と魔王にくっ付かれるのがウザかったら態度に出すべきだよ?」


『――――ミー、ミーーニー!』


キョウの魂が悲鳴を上げている、両脇からくっ付いた『勇者』と『魔王』の魂に押し潰されている、魔力による強い思念がこちらに助けを求めている、


好かれるにしても限度があるだろうに……同じ空間に長く一緒にし過ぎたか……魂の資質としては神から誕生している時点で天命職と『勇者と魔王』は同じような存在、従弟のようなもの。


なのでこの状況は決しておかしなものでは無い、家族が戯れていると考えれば笑って見過ごせる……見過ごせるが胸にモヤモヤとしたものが湧き出てくる、何とも嫌な感覚だ――どうして?


「勇魔さま、またここに来ていたの?」


「ああ、うん」


部下の一人である女性型の魔物が問い掛けてくる、割と強力な仕様にしたがこの北の大地までやって来る人間は少ない……この魔物、いつの間にか秘書のように振る舞っているしね。


あーもう、面倒だな……それよりも今は『勇者』と『魔王』の魂にお団子の真ん中のように上下から圧迫されているキョウの事が気になる、あれは何を意味するのか……勇魔の心はどうして荒んでいるのか?


じーっ、魂の団子状態を見上げる、キョウの魂は『ミ―ミ―ミー、ニー!』と兄である勇魔に助けを求めている、魂に痛覚は存在しない、身動きが取れない現状に不満なのだろう………。


『グイグイグイ』


『グイグイグイ』


『――――ミー、ミーーニー!』


「部下子……勇魔の弟……可愛いよね?ぎゅうぎゅう潰されてお餅みたいだ、可愛いなぁ」


「勝手に名前を部下子にしないでくれない?」


割と本気で生み出したので前魔王の幹部クラスの力はある部下子、容姿に関しては普通の人間の少女―――地味、そして口が悪いし主を主と思っていない、昨日国を五つ滅ぼした……それが部下子。


部下子よ……勇魔の質問に答えておくれ?


「いやいや、弟君すんごい勢いで魔王さまと勇者の魂に圧迫されてるけど、可愛い云々より可哀想なんだけど」


「ハハハハハ、お前の感性はそんなものか」


「いやいやいや、自分の弟を上下の圧迫で潰されているのを見て可愛いとか言う方が感性どうにかしてると思うけど」


勇魔の力で生み出したのに主に対する敬意とかそんなものは部下子には存在しない、容姿も地味にして性格も地味にしたのに口先は鋭い………何処で失敗したんだろうか?


「失敗作め」


「……別にいいけど、弟君の魂、なんか潰れて変な液体垂れ流してるけど」


上下の親戚に圧迫されて謎の液体を垂れ流しているキョウ、キラキラキラ、黄金色の液体は七色の虹を生み出しながら床に流れ落ちてゆく…………とても芸術的な光景だ。


「素敵だね」


「いやいやいや、え、弟君の魂が凄い勢いで縮んでいるけど大丈夫なのコレ?大丈夫じゃないよね?」


「縮んだって可愛いから良いじゃないか」


「可愛くても縮んだら駄目でしょ!!ほら、いつものように魔力で魔王さまと勇者の魂を引き離してあげて!」


「……………ぷい」


「え、えぇぇぇ……部下に命令された事に不貞腐れるの?………えぇぇぇぇ、器小さいよォ」


『――――ミー、ミーーニー!』


『グイグイグイ』


『グイグイグイ』


『ミギュウウゥゥゥ』


何だかキョウの様子がいよいよヤバい、仕方が無いので魔力で二つの魂を引き剥がす……ぺったんこになったキョウ、ペラペラで痛々しい。


「可愛すぎる……ペラペラで可愛いよね?」


「弟君グレるわ」


今日も平和だ、部下子よ、あと五つぐらい国を滅ぼしておいで?


キョウがペラペラの状態から元に戻るまでにね?

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