第7話 木曜日は休みたいんです ~【味の無い木曜日】~
スコッパーという職業には、定休日という物が存在しない。
ファンタジージャンルを漁っている時は、当然ながら労働基準法など不適用であるし、SFジャンルでも労基が適用されるケースは殆ど存在しない。
現代アクションもそうだ。現代と名は付いているが、法令が順守されているケースは稀であり、現代ドラマとて同様である。
掘っている作品の中にその身を置くスコッパー達は、作品によって目まぐるしく変わる状況に適応しつつ、その世界観に合わせて掘り進めなければならない。
だが、体力にも限界はある。
「隊長、明日は休ませて頂きます!」
「貴様も偉くなったな。理由は何だ」
「ハッ! 明日が木曜日だからであります!」
刹那、隊長の鞭が飛んだ。
「あふんっ」
「貴様! 木曜日だから何だと言うのだ!」
隊員がグッと奥歯を噛みしめて立ち上がる。
「電子書籍のビジネス書がメンズデーで割引、近所の美術館がメンズデーで割引、そして、愛する人が甘い甘いケーキを焼いてくれる日だからであります!」
「黙れ
一層激しい鞭が隊員を襲った。
「ひぎゃ!」
「貴様のような無学な輩は、ビジネス書など読まないだろう! その教養の浅さで美術館とは笑わせる、行く機など毛頭なかろう」
倒れ込む隊員を見下ろすように、隊長の言葉は続いた。
「そしてだ、愛する人が甘いケーキを焼いてくれるだと? そんな妄想は知恵袋の中だけにしておけ!」
「知恵袋じゃありません、コブク――あぎゃひん!」
隊員の言葉は、隊長の鞭によって遮られる。
そしてその鞭は、往復してさら隊員を襲う。
「あひん!」
「黙れ! ええい黙れ黙れ!」
隊長は一段高い所にどっかりと腰を下ろすと、そのまま上から言葉を投げた。
「裁きを申し渡す。本日以降、一週間の中から木曜日を没収とする!」
「え!? そんな、お奉行さま、そんなぁっぁあああ」
「不服かね」
「どうか、どうかそれだけはご勘弁下さい。そうだ、こ、ここに新しい感想がありますから、これを差し上げます。これでどうか寛大な裁きを!」
「よかろう。これにて一件落着」
どうにか感想を提出できた隊員は、辛うじて木曜日を失わずに済んだのであった。
◆以前に読んだ作品を紹介します
タイトル:味の無い木曜日
ジャンル:恋愛・ラブコメ
作者:宮瀬晶汰様
話数:23話
文字数:38,828文字
評価:★31 (2016.11.13現在)
最新評価:2016年10月8日 12:38
URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054880477474
検索時:『味の無い』で検索しましょう。『木曜日』でもヒットします。
キャッチコピー
”あなたの木曜日を没収します”
感想★★★
特定の曜日を没収するという、何とも不思議なアイデアが特徴的。
全てが上手くいっているタイプの少年が失った木曜日は、どんな意味があるのか。
ネタバレしないようにすると感想が非常に難しいタイプの作品です。
無気力と行動力の狭間。
変えずに守り続ける事の大切さと、変わらずにいる事の愚かさ。
色々な物が詰め込まれた秀作だと思います。
ぜひご一読ください。
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