愚者の贈り物~黄金色の髪の人形

夢原銀河

愚か者の贈り物~黄金色の髪の人形

 彼には一体のクレイドールが与えられた。鉱石を食べて育つ人形だ。

 彼の家には、金鉱石が成る樹があった。その人形も、金鉱石を食べて育った。彼女の髪は、黄金色になった。長い金髪は美しかった。


 彼は彼女に、たくさん愛情を注いだ。たくさんの贈り物を送った。黄金の樹がある彼には、何でもできた。


 彼女は幸せに暮らした。いつかミネオールと呼ばれる、特別な人形になれるかもしれない。そうすれば、もっと綺麗になれる。何でも叶う彼女の夢は、それだけになった。


 ある日、黄金の樹が枯れた。彼のモノは減ってゆき、彼女も金を食べられなくなった。


「もう良いわ。私はたぶん、それなりのお値段で売れるわ。売って。もう、私のために安い鉱石を買うお金も無いのでしょ?」

「ダメだ。キミは僕のモノだ」

「食べさせることもできないのに?」

「ごめん、そうだね。でも、悲しいよ。キミが好きなのに」

「私は嫌いよ。だから、売って」


 その言葉は嘘だった。彼女は彼とずっと一緒に居たかった。

 彼が好きだった。これ以上、無理をして欲しくはなかった。だから、嘘をついた。


 その瞬間、彼女は変わった。ミネオールと呼ばれる、美しい人形に変わった。黄金の髪は更に伸びて、床に届いた。

 嫌いと言う嘘、それが彼女の、初めての愛の言葉だったから。


 彼女はまだ彼と暮らしている。彼は小さな水晶の樹と、丈夫な鋏を買った。彼女の髪は金だった。どの鉱石を食べても、黄金の髪が伸びた。


「不思議だな、キミは金鉱石をたくさん食べてきたからかな」

「特別な石に届いたのかもね。触れたモノを黄金に変える石の伝説があったわよね」

「ああ、賢者の石だっけ?」


「あなたは、私にたくさんの黄金をくれたわ。あれだけの黄金、ミネオールだって何体も買えたでしょうに。愚か者の贈り物、たくさんもらったわ。あなたが愚か者過ぎるから、私は賢者の石を創らなきゃならなかったのかもね」

「それじゃ、キミがくれるこの髪は、賢者の贈り物だな」


 彼女の髪は伸びるのが速い。彼は黄金の売り方を知っている。

 彼女はもう嘘をつかない。彼は彼女に愛されていることを知っている。彼女からの初めてのプレゼントは、綺麗な鎖が付いた金時計だった。

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愚者の贈り物~黄金色の髪の人形 夢原銀河 @yumeharaginga

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