北へ、北へ
私は歩みを始めていた、それはかれこれ何千歩、何万歩も行われている。
進めど進めど目の前に映るのは砂と空のみ。
代わり映えしないことが逆に微かな変化を受け取る敏感さになる。
たまに戦争の跡、銃やその銃弾。飲み物を入れるための鉄の容器のようなものが転がって居たりした。人類は私の体を形つくる人造ニンゲンに滅ぼされてしまった。
本当かどうかはさておき私の中の記録はそう話しかけてくる。
ザッザッ
びゅうびゅう
風が少し強くなってきたようだった。体に当たる砂が強くなってくる。
気を抜くと余計な、何度も繰り返した自問自答がまた問いかけてくる。
『博士はなぜ私をこの時代に起こしたのか、いや、なぜ私を造ったのか、私とはなんなのか』
それを知りに行くために歩いているのに、結論を急いで出したいと願ってしまい、歩きが止まる時がある。
疲れたとかではない。疲れなど感じない。
代わり映えのない景色をただただ『代わり映えないな』と思いながら歩くよりはマシかと思う。
「?」
目の前が少しだけ暗くなってきた。眠気だろうか?眠気なんて感じないと思っていたのだが。
「あ」
情けない母音。
空が少し暗くなって来たようだった。
24時間周期で昼夜が変わらなくなっているのはもはや明確だった。
どうしようか。これから夜になるのなら”塔”に着いておきたい…
しかし目の前にはまだなにも無い、これは諦めたほうが良いだろう。
こんなとき人間なら焦るだろうが、私は人造人間だ。
砂だらけの場所で寝ようが極寒で過ごそうが平気なのだから。
「寝るか…」この体、寝ることだけは得意のようだった。
歩き始めて32日目。明日に希望を持って今日も寝る。
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