第7話 今日、ここから

私は私自身を知らない。

だから不安になるし、興味もある。

何もないあるのは砂とたまに落ちてる戦争の遺物だけ。

そこに私。

なら私はそれを知ろう。知る旅にしよう。

当面は"博士の研究室の跡を見つけ、私についての情報を知る"だ

いわば自分探しだ。正真正銘の。

この2日間でずっと自分のことが気になっていたのだ。

きっと今はそれが知りたいのだろう、自分のやりたいことをしていこう。

なんたってこの世界は誰もいない自由な世界なのだから。

ポジティブになった私とは逆に天気は変わらず少し暗いけれど。


そう思いバッグを手に持ちザーッと砂埃をあげてゆっくりと立つ。


ブチッ。


「んん?」

何かが千切れた音がした。だいたい予想はつくもので手に持っていたバッグが地面にボトリと落ちている。

どうやらそうとう劣化が進んでいたらしい。幸先が悪い。

はぁ、とため息をしながらバッグを拾い上げる。

ふと気づく。長めの持ち手に白い文字で何か書いてある。

『南 塔 博士』

「みなみ、とう、はかせ」

「博士!」

思わず声に出してしまった。これは手がかりだ。幸先が良い。

予想でしか無いが、これは南のに向かえば塔があるということだろう。

そこに研究所か何かがあるのだ。

そこで私の正体が分かるはずだ、そうに決まってる。

わかりにくすぎる手がかりだが愚痴を言っている場合ではない。


・・・・。

待てよ、南はどっちだ?

せめて太陽さえ出てくれれば分かるんだけど。

どうすればいい、太陽が出るのを待つか?

ぐぅ、そうするしかないのだろうか。


そもそも朝があるのか夜があるのか・・・。


「むむむ・・・」

しかしこの手がかりを逃す他無い。

何か他には、なかっただろうか。

あと手がかりになりそうなのは最初に入っていた墓、これくらいか。

何もしないよりはマシか、そう思い私は来た道を戻る。

砂が被って薄くなってしまった柔らかそうな足跡を辿って。

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