第6話 歩く前日、悩む今日
変な夢を見た。白い部屋の隅で一人体育座りをしている夢。
なんだったんだろう、少し寂しい夢だったなぁ。
今の寂しさが見せた夢だったのかもしれない。
というか夢見るのか、人造人間。
目の前の大量の砂さえなければもう少し感傷に浸れたのに。
ガバッと上体を起こす。砂が体に積もっていたらしくザーッと音を立てて水のように地面に落ちていく。
やけに重いと思ったら、これのせいか。
自然は怖いな、でも立ったまま寝る訳にはいかないしなぁ。
やっぱり朝や夜はないのだろうか。
寝る前と風景がまるで変わってない。
丸坊主の妙な色の砂の地面がガワガワと空中に舞っては地面に降り、いわゆる"洗濯機"がまわるように風で動いているだけだ。
寂しい世界だ、ここは。何時間寝たのかすら分からない。
寂しいのは私のほうなのか、気分が寝起きのせいか落ちてくる。
一日という単位がもはや朝・夜のローテーションでは回せない。
1度起きたらそれが一日の始まり、寝たら一日の終わりということにしよう。
そうしよう。
そう思い立ち上がる。憂鬱で寂しい一日の始まりだ。はぁ。
今日はなにをしようか。まぁ歩くこと以外は自問自答することしか出来ないけど。
この灰色の天気がいつ変わるかもわからない。
とりあえず、歩こう。
私には足も脳も付いている、人造人間は考える人工葦である。
ザッ。
ザッ。
・・・。
ザッ。
「何もない。まぁそりゃそうかぁ・・・」
昨日より歩く速度が遅くなっている。まだ2日目なのに。
そしてまだ3歩目なのに。
集中力が続かないタイプなのかな。
集中することなんて今の私にはないけれど。
もうやる気が尽きてきたので少し休もう。
サササ、と足元の砂を足で払い、座る。
今日は口数が自分でも分かるくらい少ない。
昨日の博士のノートのせいだろうか。手がかりがなさすぎる。
もうやけだ、今日は自分自身の整理に時間を設けることにしよう。
さて、そもそもなぜ博士は私を作ったのか。
私は人造人間として生まれてきた。
そこに博士が作った意思、おそらくはそういうプログラムか何かの類いなのかもしれない。『人そのもの』は流石に博士と言えども、作れないはずだ。
しかし"意思"がある以上、この体は自分自身の魂で動いていると言ってもいい。
私はニンゲンの体で人間の石を持っている、これだけは確かな事実だ。
はぁ。どうせなら他者がいる世界、平和だった時代に生まれたかった。
これじゃあ死んだ世界で生きるただ一人のかわいそうな悲劇的ヒロインだ。
・・・?
なぜこんな事が浮かぶのだろう、私は生まれたばかりだし、記憶も博士と会った日が最初だ。
基本的な情報を組み込んだプログラムなのは分かるが、腑に落ちない。
"悲劇的ヒロイン"像をなぜ私は知っているのだろう。
経験をしたこともないし、したこともない。
かといって教わったわけでもない。
基本的な情報を博士が私にインプットさせたときに覚えさせたのだろうか。
だとしたら相当変な趣味をお持ちだったのだろう。
今はそういうことにしておこう。
「博士は変な趣味してるなー」
はははと乾いた笑いとともに、そう自分に言い聞かせるのであった。
そうだ。目標を建てよう。
私の旅は目標がないからダレるんだ。未来のビジョンさえあればなんとか気持ちを保ったまま前に進めるはずだ。
そう思い私は思考を目標づくりに移行させたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます