博士の青い花束

浮草 流

第1話

これから幾度巡る季節の折に

あなたを愛していると

何度でも伝え続けたいから

その花束が枯れないように

必ず春に咲く花を植えよう


春の度に花束にしてくれたなら

思い出して欲しい、僕のことを

初めて愛したあなたを愛したくて

こんな贈り物を隠して逝くよ

永遠を誓うために


あなたが春を迎える度に

僕の代わりに咲く花を遺そう

あなたが思い出すなら必ず

あなたを愛したものがいたことを

覚えていてもらうために


僕が次の春を感じることはない

あなたは春を迎え続けるでしょう

そして苦しむのでしょう

僕の代わりに生きていることを

僕と迎える筈の巡る季節の移ろいを


僕のことは忘れていい

忘れていいんだよ

でも春の度に思い出すあなたへ

泣く場所を作っておくから

僕の瞳によく似た青い花々で


いつか迎える穏やかな春のために

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

博士の青い花束 浮草 流 @UkikusaNagaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ