竹中半兵衛の忠臣

白河マキト

第1話覚醒

覚えているのは血の海と沢山の死体の山。だが、俺は死んだはずだ。裏切られて、誰にも信じられず誰にも信頼されず俺を社会的にも肉体的にも抹殺した。

だが、死んだはずの俺が何故こんなことを覚えている。死んだはずの俺が何で殺されたことなんて覚えている。「ません、起きてください」不思議と声まで聞こえてきた。幻聴か。「あなたは死んだと思いますが起きてください」次ははっきりと聞こえた。女の声だ、優しく俺を起こそうとするその声に答えるため俺は目を開いた。「ここは、どこなんだ。俺は死んだはずなんだけど」「あなたは覚えていないんですか。あの声に答えてここに来たのではないのですか?」そう言っている女の顔を俺は見てみた。綺麗だ、素直にそう思った。こんなに綺麗な女の人を見るのはいつぶりかなとのんきなことを考えていると女はまた話す。「少し記憶障害が起こっているようですね。あなたはここがどこかと聞きましたが、正確には私もわかりません。ですが、この部屋にいるということはあなたは恐らく有名な偉人ではないですか?」

部屋?偉人?何を言っているんだ。俺は歴史に名など残していないだろうし、生きていた時も有名ではなかった。そういえばここが部屋と女が言ったことを思いだし周りを見渡すと、この部屋はまるで時代劇に出てくる城の一室のようだった。「悪いんだけど、ここのことを知っている限りでいいから教えてくれないかな。俺は何も分からないんだよ」そう言った俺に対し女は笑顔で言った。「はい、勿論です」と。

「では、説明しますね。もうすでに理解しているとは思いますがここは死後の世界です。ですが、ただの死後の世界ではないです。この世界にはいくつかの国があります。あ、異国ではないですよ。戦国時代のように日本という一つの国がいくつかの国に別れている、と言ったほうが分かりやすいですね。そしてその国には国主たる王が存在します。私達が今いるここにも王がいますよ」不思議だった。この女が話すことは普通では信じられなかったが何故だろうか、一度どこかで聞いたような気がして信じられる。「現在、国は13ヶ国あります。この国は恐らくあと何十年か経てばもう一つ増えるでしょう」「何故そんなことが分かるんだ?」全くもって分からない。「それはこの世界の国は時代ごとに別れているからです。弥生、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、平成。現在はこの13の時代の国があります。ですが、その時代に生きていたり、その時代で死んだりとかは関係なく私達は適当な国に呼び出されています。あなたがいつの時代の方かは存じませんが、ここは明治の国です。恐らくあなたは明治時代の方ではないでしょう」確かにそうだ。俺は明治時代とは関係がない。「ああ、君の言う通りだよ。俺は平成生まれでそして、平成に死んだ」そう、俺はもうすでに死んでいるのに何故肉体がありこうして普通に話しているんだ。「そして、ここがあなたにとっては重要です」俺にとってはってどういうことだ?死んで皆で適当に暮らすんじゃないのかこの世界では。「この部屋にあなたが呼び出されたということはあなたはこの国に7人しか存在することが許されない明治の国の幹部に任命されたのです。まあ幹部と言うよりも......国主の7人の護衛の一人?みたいなものですね」......えっ、幹部?誰が。えっ、俺が?「ちょっ、ちょっと待ってくれ。幹部って言われても意味が分からないんだけど。いや、そもそも何でこんな世界が存在するんだ。ここに俺達を呼び出したやつって誰なんだ?」女は俺のその問いに無言で首をふった。この世界についてはこの女も知らないということだろう。それにもして幹部とはなんなんだ。「じゃあ、幹部って具体的に何をするんだ。俺は何もするつもりないんだけど」俺がそう言うと女は溜め息をついて答えた。「幹部とは先程言ったように国主の護衛が主な役割だと思いますが、それ以外にも戦になった場合は戦わなくてはなりません。もしも国主が死んだ場合はその国の人々は皆死んでしまうからです。いえ、もうすでに死んでいるので正確に言えば消えると言ったほうが正しいですね、ここでは殺されても特殊な場合でない限り死なないらしいので」

死んでもなお戦うのかと思うと俺は嫌になる。生前も戦いの日々だったのにこれからも戦わなくてはならないとはつくづく俺はついていない。そんな俺の心中を察したのか女が言った。「ここに来た人々は何らかの想いがあってここにいます。この世界にあなたがいる理由は分かりませんが、とにかく今はこの世界に順応した方がいいと思います」俺は思うところは色々とあったが今はこの女の言う通りにしようと思った。まずはここに来る前の記憶を取り戻したいからだ。「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は......特にないが、生前は死神とか雷光と呼ばれていた。そうだな、雷光と呼んでくれ」女は俺の名前がないことに少し驚いていたが少ししたら女も自己紹介を始めたが、女の名を聞いて俺は驚きを隠せなかった。「では、私も自己紹介をしましょう。生まれは戦国時代、死没は安土桃山の名を竹中半兵衛と申します」

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竹中半兵衛の忠臣 白河マキト @makito0415

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