中国道士伝

羽黒山有月

第1章 旅の道士編

暗い山道

チーンチーンと鈴の音が聞こえる

虫の鳴き声すらない静まり返っている

山道に鈴の音だけが響きわったていた。

『キョンシーが通る道を開けろ』

一人の黒い道服着た男が鈴を鳴らしながら歩いている後ろからは黒い布を羽織っている者達が跳び跳ねながらゆっくりと着いてくる。

城下町…。

灯籠の光が町を照らし買い物客や食事をする客で賑わっている。鈴の音が城下町に近づいてくると先程まで賑わっていた城下町は静まり返り人々は近くの建物に入って出て来ない

昔からキョンシー達の旅を邪魔したり影を踏まれと不幸になると言われている為に建物に

隠れて出て来ないのだった。

『キョンシーが通る道を開けろ!』

男はチーンチーンと鈴鳴らし護符をまきながら城下町を歩いて行くのだった。

キョンシー達が去ると地面に落ちている護符を拾い集めて建物の戸や門に張り付けたり自分自身の魔除けとして身につける人もいる。

男が民家の前で脚を止めてドンドンと戸を叩きご家族様のお帰りにございます』と言うと

民家の中から中年女が出てき『道士様!長旅ご苦労様です。こちらへ』と言って家の中に入れる。中には数人の男女が集まり祭壇と木の台が置かれているのである。

男はチーンと鈴鳴らして『ジン様ご家族様がお帰りになりました』と言って一番後ろのキョンシーを祭壇の方に誘導し木の台に寝かせるのだ

被せてあった黒い布をとると色白で痩せている女性の遺体が姿を現したのだった。

『お~よく戻って来たな!スーラン』

集まっていた中の一人が遺体に近づこうとすると『お待ちください!封印の儀が済んでおりませんゆえ近づくのその後に』と男が言う

『封印の儀?』

『そうですね…今は普通の遺体ではなくキョンシーなのでね』

男は額に貼ってある護符を剥がし赤い墨汁を筆につけて額に赤い点をつけて口を黒真珠を

中に入れて伸びていた爪を切り終え『ご親族様方、体を綺麗に拭いてあげてください』と

言って黄色布を渡すのだった。親族が体を拭き終えると『納棺いたしますがよろしいでしょうか?』と言う

『お願いします道士様』

『それでは納棺をいたします』

男は女性の遺体を抱き上げて棺に入れるのだ

棺の蓋を閉めて護符を貼って納棺は終わった『お墓の方に埋葬します』

『はいお願いします墓は裏庭ごさいます』

『そうですか』

屋敷の主ジンは『おいお前達棺を裏庭運ぶのだ』と言うと手伝いで来ていた2人の男が棺を担いで裏庭へと向かうのだった。裏庭には大きな蔵があったジンは扉を開けて中に入った

そこには先代の遺体なのだろう棺が並べられている。2人の男はジンの指示で棺を置いて儀式は終わったのだった。

『すべての儀式は終わりました』

『ありがとうございました!少ないですがこれをどうぞ!』とジンは男に金を渡すのだ。

『ありがとうございます!』

金を受けとり男は頭を下げてジンの家を後にし次の目的地である落陽に向かうのであった

チーンチーンと鈴鳴らし町の外れに差し掛かると一人の道服を着た男が話かけて来た

『コウ 道士でありませんか?』

『そうだけどお主は?』

『ラウと申します!こちらに来ていると聞いてお会いしたと思いましてね』

ラウ道士初めて会う人物だが彼はコウの事を知っているらしいのである。

『そうですかラウ殿』

『よろしければ私の家で話しませんか?』

『わかりましたお邪魔ますよ』

コウはラウに案内されて義荘に向かうのだ。

義荘に着いて中に入るとすぐに本堂があり

机と椅子が置いてある。そこに座るとラウは『コウ道士も座れよ!』と言う

『ああ』

『コウ道士に頼みたい事があったってな?』

『頼みたい事?』

『妖怪退治なんだが頼めるか?』

『妖怪?』

『ああ…。町外れにある廃墟なんだがなキョンシーが住み着いているらしくてな』

『おいおい…。あんたも道士だろう?何故俺に頼むんだ?』

『恥ずかしい事だかな俺も退治しに行ったんだが勝ち目がなくて』

『それなら俺も同じだなラウ道士よりも経験が浅いうえに妖怪など退治した事がないからな俺は遺体輸送が専門だからな!』

『遺体輸送専門か?でもな妖怪退治する術も身につけ措かねばならぬだろうに…。コウ道士の術力も見せもらいたものだな!』

『まぁいいがな!』

『キョンシーなんだがマスターキョンシーって言ってなかなり強いキョンシーだからな気を付けろよコウ道士!』

『マスターキョンシー!聞いてただけで強そうな名前のキョンシーだな?』

『町外れだからな頼むぜコウ道士!』

ラウ道士はコウがキョンシーを退治できるとは思ってないのである。遺体輸送の道士が来ると聞いていてからかってみたくなったのである。ラウ道士は他の道士から嫌われていて

評判が良くなかったのだった。

『旅人を襲って生き血と精気と人肉も食うから気を付けろよな!』

『ああ』

コウは町外れあると言う廃墟に向かうのだった。風水盤を持ってキョンシーの位置を確認しながら廃墟に向かうラウ道士から旅人を襲うと聞いていたからであった。本当にキョンシーなど居るのだろうか?コウは『妖怪が出る時は風水盤は方向を示さなくなり生臭い匂いと暖かい風が吹くから気を付けろよ!』と

雇い主ホン道士が言ってた事を思い出した。

ラウ道士の言った通りだ廃墟がある。

昔使われていた義荘なのだろうか?祭壇があり棺が並べられているのが見えるのだった。

中に入り棺を確認して行くのだが遺体は入ってなかった。からかわれたのか?コウは廃墟から出ようとした時だった。風水盤が方向を示さなくなる。廃墟の奥に何か居る様だ!

奥の部屋に入って見ると棺が置かれている。

『これがマスターキョンシーの棺か?』

棺を開けるのだが空っぽだった。

風水盤は方向を示さずにぐるぐると廻っている背後から何か気配がする。

振り向くとそこには漢服を着た肌がどす黒く顔の爛れ男が立っていた、これがマスターキョンシーなのだろか?

『これがキョンシー?』

コウは遺体輸送の仕事は始めて生身のキョンシーを見たのが初めてだった。

マスターキョンシーはコウの胸元を掴み棺ある方に投げ付ける。コウは立ち上がろとする

が激痛に耐えられず怯んでしまったのだった

『痛てぇ~な』

マスターキョンシーはコウに近づい来て首を絞めながら口を開けて精気を吸おうとする。

(まずいな!精気を吸う気かか?)

コウは苦しいのに耐えて肩から掛けてあった袋から護符を取りだしマスターキョンシーの

額に張ると動きが止まった。

『危なかったな!』

コウはマスターキョンシーから離れるとマスターキョンシーの額から火花が散り再び動き始めるのだった。

『やっぱり効かないよな』

袋から墨壷を出して向かってくるマスターキョンシーに糸を投げてぐるぐる巻きにして動きを止めると身体中から火花が散りマスターキョンシーは暴れ始めたコウは護符を出して火を灯し投げつけるとマスターキョンシーの

身体は火に包まれのだがコウの方に向かってくるのである。コウは棺の蓋を持ち上げて投げるマスターキョンシーは動かなくなり倒れ

火に包まれたのだった。様子を見ると動かなくなっていた。コウはマスターキョンシーを

退治する事が出来たのだった。

『お~い大丈夫か?』

廃墟の外から男の声が聞こえる。

『生きてるか?』

男の声はコウの方に近づいてくる男の正体はラウ道士だった。

『退治したのか?マスターキョンシー』

『このキョンシーが?』

『そうだな!本当に倒せるとは思わなかったがな!良く退治してくれたな』

『俺も倒せるとは思わなかった』

コウはラウと町にもどり残りキョンシーの輸送の旅を再開するのだった。










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