うんやん

じゃあの。

よぉいよまぁ難産じゃったのぅ。出る方も疲れたでホンマに。こんな朝はように、ようやるわ。まぁほいでも、一応産みの親じゃけぇ、感謝の言葉もいわにゃいけんね。ありがとう、おっちゃん。見てみぃや、早朝じゃけぇ、ワシの身体からはホカホカと湯気が立っとるじゃろうが。活きがええ証拠じゃろ？あぁ？なんやあんた、まーだ切れんのか。はよしんさいや、ホンマに。しかしのぅ、大したおっちゃんだわ。ワシも久々じゃけん、こんな見事な身体に産まれたんわ。少しの歪みもない、見事な一本筋じゃけん。自分で惚れ惚れするわ。おうおうおっちゃん、切れたへその緒がまだついとるで、はよ拭きんさいや。なんや、優しゅう包むみたいにふき取りおってからに。ワシからは全部見えとるで、痔が出来とるじゃろう？そんなに痛いんか？ハハッ、これぞまさに産みの苦しみってかぁ？おいおっちゃん、ご丁寧にケツ拭いたおくるみ、残していかんといてや！親心か？いらんわこんなもん。水分が吸われるんじゃ。それにしても、ここは何処や？なんや・・・いつもと違う思うたら、公園かいな。おっちゃん、なしてこがぁな所で難産に及んだんかいな。昨今の中年の考える事は分からんのぅ。トイレくらい行きんさいや！ほれみぃ、もう気付かれたわいや。久しぶりじゃのう、金さん。そんなに拝まんでええんよ。ワシの身体ならいくらでもつついてくれてええんで。なんなら持っていきんさいや。ほいで、元気な子を沢山産みんさい。ワシは六道輪廻を流れるもんじゃけぇ、金さんに食われるのもまた仕事なんよ。何や金さん、ちょっと食べにくそうにしよるね、なんかあったん？ありゃ？なんやこりゃ。ちょっとおっちゃん、昨日の晩何食うたんや？ピーナッツやんけこれ。唐揚げとバタピーで、ワンカップ呑んだんかぁ？まったく、親とはいえ情けないねぇ。不摂生もええとこじゃろうが。見てみぃやこの身体。見事な一本糞なのに、あっちこっちにピーナッツが紛れ込んどるわ。みっともない柄じゃねぇ、勘弁してぇや。それにしてもおっちゃん、肝臓が弱っとるねぇ。黄色い胆汁酸が脂と混じり合うて、これじゃまるで朝食のパンに塗る糞美味いピーナッツバターやんけ。金さんが美味そうに食うわけよそりゃ。まぁーしかし、外で醸すのは久々じゃけど、たまにはええね。いっつも便器の中じゃけん、産まれたらすぐに水でジャーしてアッー！よ。昔はゆっくり、のんびり、土に還るのを待ちよったんじゃけどね。最近は何処で致すにも水洗じゃけん。風情が無いわ、風情が！まぁでもの、今日のワシは水洗程度じゃ流れんで？おっちゃんがの、ワンカップ片手にバタピーなんか食うけぇよ。不摂生の糞野郎から産まれた糞野郎たるもの、陶器製の便器如き、一度しがみ付いたら、最後の最後までこびりついて離さんけぇの？お、そうこうしよる内に人通りが出てきたようじゃのぅ。姉ちゃん、朝のジョギングか？御大層なことよ。健康志向か？ええねぇ、ええ身体を作って、ええウンコを産みんさい。ホレホレ、金さん、そこの姉ちゃんにちょっと教えたってや！ワシはここにおるで！丁度ええ所に風も吹いてきたけぇ、届けたるわ、ワシのフレグランス！朝の爽やかな風じゃあ！ええ匂いがするじゃろう？おっちゃんの生命の証やで？お？なんやその顔は。人の事を見て嫌そうな顔しおってからに。おーし決めたで、姉ちゃん。ワシは次、姉ちゃんの腹の中に産まれ変わるとするわ。なーに、ちょっと待っとればええんや。金さんも頑張ってくれとるし、ワシは六道輪廻を流れとるんじゃ。１年以内には多分、何とかなるで？大丈夫、ワシに任せときんちゃい！痛くせんけぇ！ワシはどちらかというと、柔らかい方がすきじゃけぇの。ほいでものぅ、こう見えてもワシ、結構シャイなんよ。女の身体の中だと、ワシも緊張するけぇ、糞固くなる事が多いんよ。ワシを産む前の日は、白湯の一つでも飲んどいてくれぇや。お、なんや、姉ちゃんの次はガキんちょかいな。でもすまんの、ワシ子供は苦手なんよ。あぁほら、もう棒っきれ持ってきよったわいや。何でお前ら、ワシをつつきたがるんや？ちょっと！坊っちゃん！やめぇや、やめぇや！持ち上げんといて！そんなに揺らしたら―――あぁ！見てみぃや、ワシの身体、砂だらけになってもうたやんけ。これじゃ金さんも食べにくいじゃろうが！しかもお前、踏んづけといてなんやその態度は。はぁ？なに泣いとんや、泣きたいのはこっちじゃろうが。まさに糞だり蹴ったり・・・って、ホラそこぉ！見て笑うとるガキぃ！何がバッチィじゃコラ！お前の腹ん中にも、ワシの弟分のサブがおるんじゃけぇの！おうサブ、お前今度こいつの体育の授業中にいっちょ暴れたれや！ワシら糞兄弟を舐めとったら、恐ろしい目に遭わせたるけぇの！ワシは優しゅうないんじゃけぇの、お前の父さんの所にも出張して、通勤電車止めるくらいの事は平気でやるで？糞じゃけぇ思うて舐めんなよガキが！はーもう、この世はとかくイライラする事ばっかりじゃわ。見てみぃやこの砂だらけの身体。身体は千切れて、もう一本糞の原形もないわ。あー今度は犬か。こいつらはのぅ、ガキよりアホじゃろ？ほーら寄ってきた。なんでお前ら、ワシを食おうとするん？そんなにうまそうに見えるか？そりゃあワシだって、昨日まではバタピーと唐揚げじゃったで？でものう、昨日は昨日、今日は今日！昨日は食材でも、今日は糞！あぁ＾～ほら、ひとかけら食われてしもうたわいや。あ、吐き出した。吐く位なら初めから食うなや！じゃけぇお前らは猫カスに人気持っていかれるんよ。

あぁ＾～もう、身体はバラバラ、メチャクチャになってしもうたわ。

久々に外で産まれて、静かに土に還ろうと思うとったんじゃがの。

まぁええか、ほれ、ええタイミングで恵みの雨じゃ。

あぁ＾～溶けるぅ＾～。

これで安心して、土に還れるの。

まぁここは公園じゃけぇ、ちょっと染みが悪いけどのぅ。

ほいでも、ワシの身体はバラバラになって、そこの排水口から、下水に流れて行くんじゃろうて。

ほんでの、川を通って、海に辿り着いて、また色んなところを旅をして、帰ってくるんよ。

ほれ、そこで画面越しに見とるおんどれぃ！

おんどれの番は、次かもしれんし、その次かもしれんの。

ほいでもの、ワシは必ず帰ってくるで？

お前の腹ん中にの。

せいぜい、電車の中では気を付けとけや。

じゃあの。