第1話から第12話まで読んでの感想です。
陸が奪われたという設定だが、それはそれほどの問題だろうか。
重層都市を作る技術がある。ならば、陸に固執する理由はなんだろうか。
重層都市について書くなら、その中の描写や説明が十分ではないと感じる。
発電所はあると書かれているが、どのような発電所なのか。順当に考えれば、太陽電池かとも思うが、わざわざ発電所と書くということは別のものなのだろうか。
また、重層都市の中の環境、あるいは生態系はどうなっているのか。
なお、一辺が10kmということなので、東京駅から10km圏内をちょっと見てみると、西寄りの端は中野のようだ。
重層都市の中での居住区画の面積は、発電所や各種工場の割合が示されていないためはっきりとはしないが、仮に下から三層としてみよう。
すると、一辺が仮に東京駅から中野ていどまでの層が三つとなる。
そこに、「数千万人分の居住地」というのはどうだろうか。
厳しい居住環境であるように思える。
実際には第一層を居住区とするかどうかは疑問であるため、なお狭いものと想像できる。
つまり一辺が10kmというのは、小さすぎるだろう。
「黄の海」について書くなら、第4話で「〜型」という分類が見られる。
このように、よくわからないものを「〜型」と分類するのは、おそらくは比較的最近の流れかもしれない。
わかりやすくはなるだろうが、では今後他の型が現われたときに話はどうなるのか。
実際に第9話に、それら以外の型(と呼べるとして)が現われる。
だが、そのように型としての名前で呼ばれるがゆえに、なんらかの意味での「異形」が持つ恐しさのようなものが確実に減ってしまうのではないか。
あるいは、「黄の海」とはなんなのか?
結局は名前と見た目を変えてはいるものの、他のなんらかの侵略者とどう違うのか?
その区別が、正直に言えばつかない。
「黄の海」に対峙するブラックメイルの全貌もよくわからない。単純に小さいのか大きいのかも判然としない。第11話で、すこしの補足的な情報により、おぼろげにわかる程度だ。
ブラックメイルについて付け加えるなら、外から戻った際の洗浄などはどうなっているのだろう?
どうやって、重層都市の汚染を防いでいるのだろうか?
また、主人公の一人(?)に関する謎は必要だろうか?
このように引っぱる例を見ると、どうしてもそう思わずにはいられない。
おそらくは、ここがSFとその他−−とくに挙げるならミステリ−−との違いだろう。
SFにおいては、それがエンタメSFであっても、ミステリのように引っぱる必要はないように思う。
なにもかも明らかにした上での物語という形がSFとしてもエンタメSFとしても望ましいと、個人的には思っている。
隠す、引っぱる、そういうものは、作品をSF−−エンタメSFも含む−−から、距離を取らせてしまうのではないか。
このように見てみると、「黄の海」に重点を置きたいのか、アクションに重点を置きたいのか、主人公の一人(?)に重点を置きたいのかが、第12まででは見えてこない。
これはSF−−エンタメSFを含む−−においては、大きな問題ではないかと思う。
その他に気になったところを書き出してみよう。
第3話、第5話など−−もちろん他にも−−、視点などの移動が明確ではない箇所や、時間の移動あるいは想起との区別が明確でない箇所が散見される。
また、読点の打ち方がおかしい箇所も散見される。
たとえば第4話において、「そう考えながらユウはヘルメット内蔵のマイクで前進を指示、しようとして息を呑んだ。」という箇所がある。
「指示しようとした」ことに、一旦の躊躇なり間があったことを現わしたいとしても、ここに読点を打つ必要はない。
パラグラフや段落についても、それらを意識しているのか、あるいは意図的に崩しているのかがわからない。
意識しているように思える箇所も少なからずあり、そこから考えると崩れている箇所は意図的に行なっているのだろうか。
意図的に崩しているにせよ、そうでないにせよ、その点はネット小説らしいとは言えるのかもしれない。
この「その他の気になったところ」において、すこし深刻だろうと思うのだが、第6話は、正直、どこかで見たセリフの応酬のように感じる。
定型文のようにサマにはなるのかもしれないが、そういう会話は食傷気味とも感じる。
世界の99.9%が『黄の海』にのみ込まれた未来、人々は重層都市と呼ばれる場所に身を潜めるかのごとく暮らしていた。浸食を続ける『黄の海』からは、インドの神話から名づけられた『アプサラス』と呼ばれる生物が人類に襲い掛かる。人類の残された希望はパワードスーツ『ブラックメイル』だけであり、その黒き鎧を纏う――ユウとアスカのコンビが本作の主人公だ!!
設定が非常に分りやすく秀逸で『黄の海』、『ブラックメイル』、『重層都市』、どれも単語を聞くだけでビジュアルをイメージしやすい。戦闘シーンも勢いがあり、多種多様な姿形、性能を持つ『アプサラス』たちとの激戦は迫力満点だ。
物語はまだ序盤、ここからどんどん広がっていくといくと思うので、ぜひとも本作を多くの人に読んでもらいたいと思う! パワードスーツ好きやロボット好きにはハマること間違いなしだっ!!