始まりのうた

@mitsuru0503

序章

・・・・・・真っ直ぐな青色の空を眺めていると、ふと、背中に暖かい温もりが増えた。青年――大地は、背中の温もりの人物の右手をしっかりと握る。


「・・・見つけてきたの」


背中の向こうの彼女はそう言った。

なにを、とは彼は問わなかった。それが何なのかわかっていた。

彼女は、左腕の中にある首を一撫ですると、静かに目を閉じた。・・・・・・あなたは、これで本当によかったの?

少し皮肉を込めてつぶやくと、後ろで大地がふぅと息を吐くのが聞こえる。

「・・・悠、いきなさい。どこにでも。」

行きなさい。生きなさい。


あなたは、間違ってはいけないの。

私のようにはなってはだめよ。


思い出す日々は腕の中の首の――和樹と、後ろにいる大地と、私との楽しかった日々。

――泣きたくなるほど幸せだったあの日々。

いつ、亀裂が入った?いつから、この日々は終わわりに向かっていた?

もう、私たちにはわからないけど。


悠、あなたは。あなただけは。


私たちと同じ末路は辿らないで。


・・・・・・悠。

二人してそう呟いて、繋いでいた手をしっかりと握りしめる。


二人の瞼は、閉じられたきりあかなくなった。その瞳が開かれることは二度となかった。――もう二度と。

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